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2023.10.22

M&A・企業の売買・合併・事業承継が失敗やうまくいかない3つの要因とその注意点&解決策を分かりやすく解説!

著者情報 森 逸行 FP歴15年 経験した事を伝え解決に導く『金融パーソナルトレーナー』

M&A・企業の売買・合併・事業承継が失敗やうまくいかない
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中小企業白書(2020年版)によると、経営者の高齢化や後継者不足を背景に、休廃業や解散企業件数は4万件台の水準で推移しています。 

国もこのような状況を改善するために、M&A(企業の売買・合併)などの補助金も作り、事業承継を促進させる体制を整えようとしていますが、M&A・事業承継の問題は簡単に解決できるものではありません。 

事業承継は相続問題にも密接に関わる話のため、相続・税制に関してよく話し合いをして最善策を模索していく必要があるのですが、実際には、なかなか話し合いが前進しないまま、経営者が亡くなってしまい、やむなく事業を廃業することになってしまう、というようなことはよくあります。 

今回は、そのようなM&A・企業の売買・合併・事業承継がうまくいかない要因(阻害要因)を3つとその解決策を簡単にまとめましたので、解説していきます。 

M&A・企業の売買・合併・事業承継を阻害する要因とその解決策 

M&A・企業の売買・合併・事業承継を阻害する要因とその解決策 

阻害要因①:後継者がいない

阻害要因①:後継者がいない

中小企業白書(2020年版)によると、大卒予定者や転職者の大企業志向の高まりにより、規模の小さな中小企業ほど新たな雇用の確保が難しい状況にあり、後継者だけでなく従業員を確保が課題となっています。

経営を維持していくのも大変なことですが、良い人材を確保することができないことで、経営者・幹部への業務負担が重くなっているというケースも多く、今後の経営の不透明さを感じやすくなっており、現経営者が自分の家族への承継を推奨できないこともあります。加えて、経営者の家族がその会社を継ぎたいと思っていないことも多いです。

社内の幹部や従業員から社長を創出するは、業務はできるが経営者として責任を負いたくはないというケースも多く、適切な人材がみつかならいという声もあります。

事業承継では、後継者を見つけることが1番の課題ですが、このように、そもそも経営者になりたい人材を見つけることが困難になっています。

解決策:会社を第三者へ売却してしまう(M&A)

会社の売却とひとことで言っても、株式譲渡・事業譲渡・新設分割・吸収分割・合併など様々な形態があります。

経営者の意向と会社の状況と税金がどの程度かかるかなどに応じて、どの形態でのM&Aがもっとも有効な手段かどうかが変わります。

売り手は①高く会社を売りたい②従業員を大切にしてほしい③会社名をずっと残してほしいなどの要望をもっており、買い手は①安く買いたい②シナジー効果がほしい③リスクを負いたくないという要望をもっています。

売り手の要望
①高く会社を売りたい
②従業員を大切にしてほしい
③会社名をずっと残してほしい等々・・

買い手の要望
①安く買いたい
②シナジー効果がほしい
③リスクを負いたくない

売り手と買い手の要望を満たせるように、M&A仲介会社などはぴったりな相手方を探し、交渉をしていきます。

しかし、実際にはなかなかこの要望が一致することは難しく、M&Aしないまま廃業となってしまうこともあります。

買い手側の姿勢を変えることは難しいため、事業承継を検討する経営者は、買いたいという人の要望である②シナジー効果がほしい③リスクを負いたくないという2点に留意して売却をしていくことをおすすめします。

まず、シナジー効果に関しては、自分の会社を買収することでメリットのある業種を想定しておき、どのような状態にしておけば、その効果がわかりやすく現れるかを整理しておくことです。許認可関係やスキルのある従業員の情報、会社の取引先の規模や特徴など、買い手を想定して、シナジーの生まれそうな分野をしっかり育てていきましょう。

③のリスクを負いたくないをカバーするのは、契約関係です。労務関係では、未払い残業代や不当解雇はないかが問われますので、そのような労務関係を第三者へしっかりと問題ないと示せるように体制を整える必要があります。

また、取引先との契約書でも、想定できないような賠償リスクなどを背負うようになっていないか、取引先の債務不履行があった場合に資金繰りが困難にならないかなど、現在の取引にリスクヘッジがなされるように整備していく必要があります。どうしても、そのようなケアが難しいようであれば、M&Aの契約の中で引継ぎ後の賠償リスクなどを一定の範囲で現経営者が背負うようにしてもいいかもしれません。

当然ですが、会社を売却することで、従業員の多くが辞職してしまったり、取引先が取引を突然停止するようなことがないように、社長や特定の役員だけの顔やスキルや人間性だけで会社を回すような経営ではなく、誰が経営者になっても運営が継続できるような仕組み作りをしていくことも大切です。

このように、M&Aで売り手側ができる工夫はたくさんありますので、後継者がいないという悩みのある会社は、早い段階から準備をしていくことをおすすめします。

阻害要因②自社株の価格が高額なため、相続税・贈与税の支払い(納税資金の準備)で苦労する 

阻害要因②自社株の価格が高額なため、相続税・贈与税の支払い(納税資金の準備)で苦労する 

財務内容の良い会社の自社株は、非常に高額な財産とみなされます。しかし、未上場企業の自社株は、上場企業の株式とは異なり、取引相場がないため、現金化が非常に困難であることが、相続問題につながります。 

例えば、株式以外に資産がない状況でも、上場企業の株式であれば、すぐに株式を売却して現金化をして、その売却資金で相続税を納税することもできます。また、金融機関も上場企業の株式であれば、その株式を担保にして資金調達をすることができる可能性もあります。 

一方で、未上場企業の株式(自社株)は、簡単に売却ができませんし、その株式価値がいくらなのかも、詳細に計算をしないと求めることはできません。 

したがって、後継者が家族であっても、従業員であっても、未上場企業の自社株を承継することで多額の資金が必要となったり、相続では多額の相続税、贈与では多額の贈与税を後継者が支払えなくなってしまうという事態もありえますので、事業を承継したくても資金的にできないということはよくあることです。

贈与や相続の特例もありますが、一定の条件を満たさないと活用が難しく、実際に使えている会社はほんの僅かという実態もあります。

解決策1:相続時に株式を買い取ることができるように、終身保険などを活用して大きな保険金を確保できるように準備しておく。 

一番株式を所有している役員に、大きな保障をかけておき、相続が起きても、自社株を買い取れるだけの資金あるいは納税をするための資金を準備するのは有効な手段です。 

役員の死亡時には、死亡退職金をしっかりと支払うことで、会社の資金を減らし、家族の資金を増やすことができますので、自社株の承継対策としては有効です。

また、保険金が会社に入っていれば、金庫株として一時的に会社で株を買い取り、少しずつ役員報酬の中から次期経営者に株を買い取ってもらうことで移転させていくことも可能です。

現金がないことには、買い取りを行ったり、承継後の会社の運営資金を賄ったりすることも困難となりますので、余裕を持って保険を掛けておくことはとても大切な事業承継対策となりえます。

解決策2:株価を下げるOR株価を抑える 

株価が上がりすぎているので、株価を下げる・抑えるという手法は、なかなかコントロールが難しい点もありますが、検討することで一定の効果を出すことは可能です。

類似業種比準方式による株価計算は、利益・簿価純資産・配当金の3項目で株価計算を行いますので、株価を下げるには利益を下げるために「法人保険」「オペレーティングリース」「海外不動産」や本業に係る「設備投資」を行うことが有効だといわれています。

売株価を下げる&利益を下げるために有効な方法
●法人保険
●オペレーティングリース
●海外不動産
●本業に係る設備投資

当然、意図的に、一過性の効果を求めるためだけに一気にこのようなもので対策を行うと、税務否認を受けてしまうこともあり得ます。

したがって、計画的に、本質的に今後の事業展開の中でも本当に必要なものかを検討して、導入していくことをおすすめします。

法人保険であれば、長期保障の確保や万が一の時の事業資金の確保のため、オペレーティングリースや海外不動産は中長期の米ドルベースでの資産形成確保のため、設備投資に関しては今後の売上増加・生産性向上のため、などしっかりと目的をもって取り組むことをおすすめします。

一方で、純資産価額方式では、純資産をベースに株価計算を行いますので、純資産を圧縮できるような「法人保険」や「不動産」を活用することで株価を引き下げることができます。 

法人保険では、一定期間は解約返戻金が低く抑えられ、その分将来に保険を解約するときはたくさんのお金が戻ってくるという長期間で運用を考えるとお得な保険があります。

株価を下げる段階ではあえて損をしている状態にして、将来にたくさん資金を受け取れるようにするような資産形成商品がぴったりです。

また、不動産に関しては、なんでも言い訳ではなく、札幌・東京・横浜・大阪・名古屋・神戸・福岡のような国内の主要都市の中心部の駅近物件がおすすめです。

土地割合の高い物件であれば、経年劣化による資産の目減りも少ないですし、一等地は価格も安定しやすく、長期的な家賃収入も見込めます。

何よりも、路線価と実勢価格の差が大きいため、購入して会社の決算書に載る土地建物の金額と相続税評価は大きく乖離しますので、その差額を株価計算で圧縮することが可能です。

不動産は法人で購入してから3年後からの株価計算でしか圧縮はできませんので、その点は注意が必要です。

また、不動産と株価計算に関する税制は複雑ですし、今後も改定されていく可能性があるため、一定の専門知識のある業者へ相談をしていくことをおすすめします。

ちなみに、この不動産の相続税評価で資産を圧縮して株価を抑える方法は、純資産価額方式でしか利用できず、類似業種比準方式では簿価純資産で計算を行いますので効果が出ない点は要注意です。

株価の計算方法や会社の資産状況に応じて、ベストな対策は変わりますが、株価を抑制することも大切な対策の1つとなります。 

阻害要因③:自社株の持ち分比率が、バラバラになってしまい、収集がつかなくなってしまう。 

株式を1人で100%保有していれば、株が分散されないため、承継もスムーズに進めることができます。しかし、複数の人が株をバラバラに所有している場合は、株主全員の意向に配慮しながら承継を行う必要が出てくるため、話し合いがスムーズに進行できない事態が想定されます。 

解決策:株式を1名に集中させられるように整備していく。 

・持ち分の小さな株も含めて、現経営者あるいは後継者が自社株を買い取りしていく。 

・事業後継者とは関係のない先へ嫁いだ経営者の娘には、自社株の代わりに財産分与を行い、納得してもらう。 

・共同経営者がいる場合は、共同経営者に配慮しつつ、後継者への承継がスムーズになされるように注意する必要がある。 

・会社で自社株を買い取り、法人から後継者個人へ自社株を計画的に移転していく。

このように、株を1人に集中させるための手法はいくつかありますが、労力がかかります。

初めから株をバラバラにしないということが一番有効な方法なのですが、既にバラバラになっており、事業承継を今後検討していくということでしたら、なるべく早い段階から手を打っていきましょう。

特に業績の良い会社では、どんどん株価が上がっていき、買い取るのにも相当な資金がかかるようになってしまうため、注意が必要です。

まとめ

今回はM&Aと事業承継がうまくいかない要因(阻害要因)を3つとその解決策を簡単にまとめました。

後継者がいない場合はM&Aが候補にあがりますが、会社を売却するのも買い手と売り手のニーズを満たそうとすると簡単ではありませんので、様々な準備が必要となります。

後継者がいて事業承継を行う場合でも、未上場の場合は、この未上場の株をどうやって承継していくかという問題があり、金額が大きくなればなるほど、買い取るための資金の問題や相続贈与に係る納税の問題などが発生します。

国や自治体でもこのような中小企業のM&A・事業承継の問題解決にむけて様々な制度や機関を整備してくれてはいますが、まだまだ課題は多く残っています。特に税制に関してはとても複雑ですので、事業承継に特化した専門の税理士などに相談しなければ大きな失敗につながることになりかねません。

いずれにせよ、M&A事業承継の問題は、経営者であればいつかは必ず発生することですので、情報収集を行いながら、常に出口戦略を考えながら準備をして経営してほしいと感じています。

特に会社の売却を選択肢にいれる経営者の場合は、早期に考えておくことによって、会社の経営にもプラスになりますし、大きなチャンスを逃さずにすむこともありますので、是非意識していただければと思います。

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