悪性新生物と上皮内がんの違いをベテラン医師がわかりやすく解説
がん保険や医療保険を選ぶ時にちゃんと保険金は出るのか、それとも出ないのか?など心配になる方も多いかと思います。また保険会社で使われる言葉の『悪性新生物と上皮内がん』の違いについて疑問を持つ方も多いかと思います。
言葉では『がん』っと付くので同じように保険金や給付金の対象になるのかと思い込んでしまいます。
『悪性新生物と上皮内がん』は大きく異なる病名になり、保険金や給付金の支払い対象も大きくかわってきます。
そんな悪性新生物と上皮内がんの違いについてベテランの医師が解りやすく解説いたします。
悪性新生物と上皮内がんの違い
悪性新生物と上皮内がんの違いは病理学診断の違いになります。
細胞異型と構造異型は、病理医が担当し診断いたします。
上皮細胞とは
上皮細胞とは身体の表面をおおう「表皮」のこといい、内臓の粘膜をつくっている「上皮」などを総称した細胞の名称です。
正常な細胞だと染色体が詰まっている核は一つしかありません。また核の大きさも一様です。
細胞の中の核の位置も一定になります。
悪性新生物とは
がんになると核の大きさが大小さまざまになり、核の中の濃淡も変わってきます。
細胞異型とは
がんになると濃縮してくることが多くなります。
また細胞の中の核の位置も変化しはじめ、通常細胞の中に核は一個しかありませんが、
がん細胞になってくると増殖スピードが速くなるので2個核を持った細胞が増えてきます。
このことを“細胞異型”と言います。
構造異型とは
次に集団性もおかしくなってきます。
粘膜の場合、腺管の丈が長くなり、二股に枝分かれしたり錯綜(さくそう)したりします。
これを“構造異型”と言います。
浸潤(しんじゅん)=がんと確定診断
上皮組織の下には脂肪の層があり、ここに毛細血管やリンパ管などが入り込んでいます。
上皮細胞と脂肪細胞の間に、薄い筋肉の層や基底膜と言われる境界線があります。
上皮細胞がこの境界線を越境してくると“浸潤(しんじゅん) ”と言います。
この状態は、西洋および東洋を問わず『がんと確定診断』とされております。
また、静脈や、リンパ管の中にがんの細胞集団が入り込んでいれば、同様に『がん確定診断』に間違いありません。
世界のヨーロッパやアメリカの病理学会では粘膜下層や上皮の下まで入り込んで初めて“がん”と診断する歴史があります。
日本では、粘膜、上皮内新生物でも細胞異型、構造異型があればがんと診断します。
上皮内がんは世界にはない!?生命保険の歴史
生命保険はイギリスで始まり、世界に広がりました。
実は、ヨーロッパ、アメリカの病理学診断では粘膜がんの上皮内がんが存在しませんでした。
そのこともあり、日本では上皮内がんで手術したと書類に記載しても受け付けてもらえません。
そのことからも生命保険の契約では上皮内がんはなく、“上皮内新生物”と呼ばれております。この悪性新生物と上皮内がんの違いを理解いただけたでしょうか。
胃がん、大腸がん、食道がん、子宮頚がんで上皮にとどまるがんは生命保険会社では粘膜内がんではなく、上皮内新生物になり、“がん”=悪性新生物とは認めないことになります。