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2025.01.19

E&O保険とPL保険の違い?保険金支払い事例やメリットとデメリットを質問に回答します。

カテゴリー名
著者情報 森 逸行 FP歴15年 経験した事を伝え解決に導く『金融パーソナルトレーナー』

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E&O保険とPL保険の違いは?保険金支払い事例やメリットとデメリットを質問に対する回答を通じて解説

E&O保険という保険について耳にしたことのある人はいるでしょうか。

おそらく損害保険の現場に日ごろから身を置いている人でもない限り、あまり馴染みのないワードでしょう。

しかしE&O保険は、製造業者や建設業者にとってはニーズの高い補償内容を提供する保険なのです。

今回の記事では、E&O保険の補償内容や具体的な損害事例、加入することのメリット・デメリットについて、解説していきます。

記事の最期に、E&O保険に対する質問とそれに対する回答もいくつか紹介します。E&O保険の加入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

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E&O保険とPL保険の違いは?保険金支払い事例やメリットとデメリットを質問に対する回答を通じて解説2

目次

E&O保険とは?

E&O保険とは、専門事業等、企業が事業を行う中で、過失や手違い、説明不足などにより第三者(顧客など)に損害を与えた場合、その損害賠償責任を補償する保険です。

日本語では「業務過誤保険」または「専門職賠償責任保険」とも訳されています。

E&O」は、英語のErrors(誤り)とOmissions(脱漏)の略で、意図しないミスや説明漏れといった過失を対象にしています。

ここでポイントとなるのは、E&O保険では、PL保険に代表されるような従来の賠償責任保険で補償される、「第三者に対する身体障害」「第三者に対する財物損害」を伴わない経済的損失を補償するという点です。

E&O保険は、医師や弁護士などの専門職が加入する「専門職責任保険」や、IT企業、広告代理店、コンサルタントなどが対象となる「企業向けE&O保険」など、職種に応じた種類があります。 

なぜE&O保険が必要なのか?

E&O保険が必要とされる理由について、3つのポイントで解説します。

人的ミスは避けられない

どれだけ注意して業務に取り組んでいても、ヒューマンエラーを完全に防ぐことはできません。

特に専門性の高いサービスやアドバイスを提供する職種では、ちょっとした手違いやミスが大きな損害賠償に発展するリスクがあります。

損害賠償の請求は突然にやってくる

実際には、こちらのミスの有無にかかわらず、「損害が発生した」として顧客が突然損害賠償請求をしてくることがあります。

たとえ顧客側の過失が認められなかったとしても、企業として防衛のために発生する弁護士費用や対応コストは、こちらで負担しなければなりません。

契約条件として求められることも

特にアメリカなどでは、クライアントとの契約の中に「E&O保険に加入していること」が、取引をする上での必須条件として明記されるケースも多いです。

日本においても営業活動上、加入が事実上必須となっていると考えた方が良いでしょう。 

E&O保険の補償内容について

E&O保険の具体的な補償内容は、保険会社や契約内容によって異なります。

ここではE&O保険の一般的な補償内容や適用される事例について解説します。

第三者に対する損害賠償金

被保険者(加入者)が、業務中の過失・誤解を招く説明・不適切な助言等により、クライアントや第三者に損害を与えた場合の賠償金を補償します。

訴訟・調停などに関わる弁護士費用・訴訟費用

損害賠償請求を受けた場合に発生する、弁護士費用、訴訟費用、調査費用、和解交渉費用などを補償します。

過失による書類提出ミスや納期遅延等による損害

業務遂行上の「ヒューマンエラー」や「業務の抜け・漏れ」に起因する経済的損失に対応します。

業務遂行に伴う名誉毀損・信用毀損(特約)

一部の保険会社では、誤報や不適切な説明による風評・信用失墜といった、名誉毀損的損害も対象に含まれる場合があります(主に特約扱いが多い)。

補償対象となる事例

IT企業がプログラムの不具合で顧客の業務が停止し、損害賠償請求を受けた
・弁護士が法律の適用ミスにより、顧客が損害を被った
・コンサルタントのアドバイスに基づき顧客が投資判断を行った結果、損失が出た
・広告代理店が誤った広告表現でクライアントの評判を損ねた

補償されない代表例(免責事項)

・故意による違法行為や詐欺行為
・身体的な損害(これは一般的にに「PL保険」や「施設賠償責任保険」が補償対象となる事案です)
・物理的な損害(例:設備の破損など)
・社内紛争(例:従業員とのトラブル) 

E&O保険と他の保険との違い

E&O保険は、身体障害や財物損害を伴わない損害を補償する点等、その他多くの損害保険に比べてわかりにくい保険です。

一方で、他の賠償責任保険とよく似ている点もあるため、わかりにくさに拍車をかけています。

下記にその他の賠償責任保険との違いがわかるよう、比較表にまとめました。

保険種類主な補償内容対象となる職種例
E&O保険専門的業務における過失弁護士、コンサルタント、IT企業など
PL保険製品や仕事の結果に対する事故や損害建設業、製造業など
施設賠償責任保険店舗・事業所内の管理不備に起因する第三者に対する賠償責任小売業、飲食店など
雇用慣行賠償保険従業員との雇用問題全業種

加入のメリットとその他注意点

E&O保険に加入することのメリットや、加入にあたっての注意点、E&O保険を付保すべき業種をまとめると下記のようになります。

加入メリット

・高額な賠償リスクから会社・個人を守る
・クライアントとの信頼関係を強化できる
・弁護士費用や対応コストをカバーできる
・企業の信用力向上(入札要件などで有利)

注意点

・補償内容や免責範囲をよく確認する必要がある
・「請求ベース」型が多いため、契約終了後も補償が必要な場合は「延長補償」を付けるべき
・業種によって保険料は大きく異なる(例:医師や弁護士は高め)

E&O保険に向いている業種

・製造業
・弁護士、会計士、税理士などの専門職
・コンサルティング業
IT・システム開発会社
・デザイン・広告・マーケティング企業
・保険代理店・不動産仲介業者

 E&O保険の活用事例(ケーススタディ)

E&O保険の補償関係を具体的にイメージするために、E&O保険の実際の活用事例を紹介します。

事業活動において、どのような局面で補償対象となるのかについて、極力具体的に紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

活用事例①:システム開発会社の納期遅延と不具合に対する損害賠償とE&O保険の活用

【背景とプロジェクト概要】

ある中堅のシステム開発会社F社(従業員数約50名)は、小売業のクライアントであるD社から、新たな在庫・受発注管理システムの開発を受託した。D社はこれまで紙ベースで在庫管理をしており、業務の効率化とオンライン販売との連携を目指して、基幹業務システムの刷新を図っていた。

その際に締結した業務委託契約では、以下のような条件が明記されていた。

 

・納品期限:契約から6か月後
・納品物:Webベースの業務システム一式(在庫管理、発注管理、レポート出力機能など)
・契約金額:約1,500万円
・保守契約:年額200万円の別契約オプション付き(導入後の継続契約を想定) 

F社にとっては、大手企業との長期的な関係構築のチャンスでもあり、技術的な難易度は中程度と判断されていた。

 

【問題の発生】

  • 開発スケジュールの遅延

プロジェクト開始後、要件の追加や設計変更が相次いだこともあり、F社の開発スケジュールは徐々に後ろ倒しに。さらに、社内のリードエンジニアが急病により長期離脱したことで、人員の穴埋めが追いつかず、納期1か月前時点で完成度はまだ70%程度という状況であった。

F社はD社に対して「最大1か月の納品遅れ」を正式に通告し、謝罪とともに代替案を提案した。

 

  • 納品後のバグ・システム障害

なんとか完成したシステムは、1か月遅れで納品されたものの、運用初日に以下のような複数の重大な不具合が発生した。

 

・複数店舗の在庫情報がリアルタイムに同期されず、誤出荷が発生

・自動発注機能の設定バグにより、本来不要な商品が大量発注される

・特定のブラウザ環境下でレポート画面が表示されない

 

D社では、ECサイトと連動した注文処理が混乱し、一時的にオンライン販売を停止。また、一部取引先との納品遅延も発生し、取引信用の低下につながると判断するまでになった。

 

D社からの損害賠償請求】

D社は事態を重く見て、F社に対して正式に文書で以下の請求を行った。

 

・営業損失補償(EC停止・誤出荷による)…550万円
・社内混乱対応の臨時人件費・業務委託費…250万円
・信用回復のための広告・キャンペーン費用…150万円

 

合計請求額:950万円

 

さらに、「本件の再発防止策を講じない場合、保守契約も解除し他社に乗り換える」との通告を受ける。F社としては重大な信頼毀損と受け止めざるを得なかった。

 

E&O保険による対応】

F社はあらかじめ、年間保険料約50万円のE&O保険に加入しており、今回のような「システム開発におけるミス」に備えていた。当該E&O保険の補償範囲には、以下の補償内容が含まれていた。

 

・納品物の不具合により発生した第三者(クライアント)への損害
・納期遅延に伴う業務混乱への間接的損失
・和解交渉にかかる弁護士費用や専門家の調査費用

 

本件はE&O保険の補償対象となりうると判断し、保険対応することに。

 

  • 保険会社と連携して迅速対応

事案発生から数日内に、F社は保険会社に報告し、E&O保険の事故報告を実施した。報告後、間もなくして、保険会社の法務担当が介入し、D社との示談交渉のサポートを開始。技術専門家による第三者検証も並行して行い、バグと納期遅延の原因が「管理上の過失」であると認定。

 

  • 示談内容と保険金の支払い

保険会社の補償上限は1,000万円/1事故。実際に本件で発生した費用は以下であった。

 

F社が支払った示談金額:650万円
・法的対応・技術調査に要した弁護士・外注費:約80万円
E&O保険からの支払総額:730万円

 

F社は上記の保険金によって、直接的な金銭的負担を最小限に抑えることができた。

 

【教訓と再発防止策】

F社はこの件を教訓として、次のような改善を実施。

 

・納期遅延や変更要件に関する契約書の記載強化(責任分界線の明確化)

・プロジェクト進行中のリスクレビュー会議の定期化
・リリース前のテスト体制の第三者監査導入
・社内のE&O保険の重要性に関する社内研修実施

 

また、今回の事案については、E&O保険の付保や付帯サービスの利用があったことで、初動対応が迅速に進めることができ、D社からの信頼を部分的にでああるが回復させることができた。保守契約についてもD社との条件付き継続に成功することとなった。

 

【総括】

この事例は、IT業界でありがちな「善意による遅延・不具合」が、結果として法的責任や顧客損害に発展する典型的なケースです。

E&O保険は、今回の事例では以下のような役割を果たしました。

 

・損害請求への法的支援と賠償金支払いの補償
F社の経営資源(資金・人材)を守る防波堤
・顧客との信頼維持、企業ブランド保全の手段

 

特に中小のシステム会社にとっては、1件の事故が資金繰りに直結するリスクを持つため、E&O保険の備えは経営防衛の要と言えます。 

活用事例②:会計士の申告ミスによる税務トラブルとE&O保険での損害対応

【背景と業務の依頼内容】

中堅規模の会計事務所「M会計事務所」は、設立3年目のベンチャー企業「Z社」から、法人税の確定申告業務を受託していた。Z社はIT関連のコンサルティング業を営んでおり、前年は大きな利益を計上。スタートアップ支援の税制優遇措置を活用することで、節税効果を最大化することを目指していた。

M会計事務所は、Z社の会計帳簿の精査、各種経費処理、税務調整、税額計算までを一括して担当し、電子申告により申告を完了した。提出された申告書には、「中小企業投資促進税制(特別償却制度)」が適用され、法人税額は当初の試算よりも大幅に圧縮された形になっていた。

 

【問題の発生:税制改正を見落とした申告ミス】

しかし、M会計事務所の担当者は、最新の税制改正を正確に把握しておらず、すでに「令和〇年度」で廃止された制度を適用して申告していたことが後に発覚する。

申告から半年後、Z社に対して税務署より税務調査の通知があり、その際にこの誤った税額控除の適用が指摘されることとなった。

その際の税務署からの指摘によると、特別償却の適用要件を満たしておらず、過少申告加算税+延滞税を含めて追加納税が必要とのことであった。

 

・追加納税額合計:約 280万円

(本税:210万円)

(過少申告加算税:42万円(20%))

(延滞税:約28万円(法定利率による))

 

【クライアント(Z社)の反応と損害請求】

Z社の経営陣は強く反発し、M会計事務所に対して正式に文書で次のような内容の損害賠償請求を行った。

 

・過少申告加算税および延滞税分の損失補填(70万円)
・顧問税理士による誤申告により、社内業務が混乱し、経理部門に多大な負荷がかかった
・投資家向け説明資料の再作成などの費用的・信頼的損害も発生している

 

Z社は「税務の専門家であるM会計事務所が、法改正を見落とすことは重大な過失にあたる」と主張し、最終的には損害総額300万円の請求に至った。

 

M会計事務所の対応とE&O保険の利用】

M会計事務所では、こうした申告ミスや税務トラブルによる損害請求に備え、年間保険料約40万円のE&O保険に加入していた。この保険には、次のような補償範囲が含まれていた。

 

・業務ミスによるクライアントへの損害賠償責任
・法的手続き・和解交渉に要する費用
・裁判所または示談により確定した賠償金の支払い

※税務署への追徴分は補償対象外だが、「付帯損害(加算税・延滞税に起因する第三者賠償請求)」は一部カバーされていた。

 

上記をふまえ、M会計事務所ではEO保険を活用すべく、以下の流れで保険対応を勧めた。

 

M会計事務所は、保険会社に速やかに事故通知を提出
・保険会社のリーガルチームが事実関係を調査
・保険会社とZ社との間に入り、和解交渉が進行

 

結果的に、以下の形で和解が成立することとなった。

 

・損害賠償金:270万円(Z社の要求の一部を認めた形)
・弁護士費用・交渉対応費:約30万円
E&O保険の補償額合計:300万円

 

なお、税務署への直接的な納税分(本税210万円)については補償対象外とされた。この部分はZ社が自ら納付したものの、M会計事務所が間接的に損害賠償として一部負担する形となった。

 

【教訓と対応策】

M会計事務所では、本件を重く受け止め、以下の再発防止策を実施。

 

・税制改正情報の社内共有ルールを明文化(毎月のアップデート会議を設置)
・申告書作成前の「二重レビュー体制」の導入(代表税理士による最終チェック)
・新人担当者には複雑な特例制度の申告を一任しない方針を採用
・クライアントにも「リスク共有のガイドライン」を提供し、制度変更の確認を依頼

 

【総括:専門職にとってのE&O保険の意義】

この事例は、「うっかり」では済まない申告ミスが、税務トラブルや顧客信頼の損失につながるという点で、税理士・会計士にとってのリスクの大きさを如実に示しています。

この事例では、E&O保険によって下記の点が守られました。

 

・実際の賠償金や法的費用による資金流出のリスク
・トラブルにかかる人的リソースの浪費
・顧客との関係性の断絶(和解支援による維持)
・ひいては事務所の評判・存続リスクの低減

 

税理士・会計士の業務は「正確であって当然」とされがちですが、税法は毎年改正され、特例や特別控除には細かい条件が多く、実際には人為的ミスのリスクが常に存在します。

そのため、E&O保険は「信頼を預かる専門家が、信頼を回復するための最後の砦」とも言える重要な備えです。

 活用事例③:デザイン事務所が起こした著作権侵害とその法的・保険的対応

【背景:プロジェクトの概要】

ある中堅のデザイン事務所「Mデザインスタジオ」は、飲食業を展開する企業「Nフーズ株式会社」から、新ブランド立ち上げに伴うロゴデザインおよびパッケージデザインを受託した。依頼内容の概要は下記の通り。

 

・ブランド名:「誠‐MAKOTO‐」という高級和風弁当シリーズの立ち上げ
・デザイン内容:ブランドロゴ、商品ラベル、パッケージボックスのデザイン一式
・契約金額:300万円(納品ベース)
・使用用途:全国の百貨店で販売される商品の全面に使用予定

 

Mデザインスタジオでは、このプロジェクトために経験豊富なアートディレクターと若手デザイナーを招へいし、納期は1か月で進行されることとなった。

 

【問題の発生:ロゴに含まれていた既存書体の無断使用】

納品されたロゴは、筆文字を使ったシンプルながら力強いデザインで、クライアントのN社も非常に満足し、直ちに全国展開の準備に入った。ところが、商品発売から約2か月後、ある書体制作会社(Wフォント社)から、内容証明郵便が届いた。そこでは下記のような内容が主張されていた。

 

・納品されたロゴに使用されている筆文字フォントは、Wフォント社が商用ライセンス付きで販売している著作物である。
Mデザインスタジオがそのフォントを個人利用版から無断転用した可能性がある
・商用利用かつ大規模流通に使用されたことにより、著作権侵害に該当する
・即時使用停止と損害賠償を求める(請求額:500万円)

 

【原因:若手デザイナーのライセンス知識不足】

社内調査の結果、ロゴ作成に使用された筆文字フォントは、若手デザイナーが個人用に購入していた非商用ライセンス版を流用したものであり、「商用利用可能なライセンス」へ切り替えずに使用したことが判明した。

当該若手デザイナーは、ライセンス契約書を十分に確認せず、「フォントだからデザインの一部にしても問題ない」という軽い認識で作業してしまっていた。チーム内でのチェック体制も不十分で、アートディレクターが最終納品時にこの問題に気づかなかったことが最大の原因とされた。

 

【クライアント(N社)からの信頼低下と再印刷費用請求】

Nフーズ側ではすでに数万点のパッケージを製造・出荷しており、著作権問題を受けて急遽販売を停止し、商品パッケージの全面再印刷を決断した。流通業者との調整や棚卸作業にも莫大なコストがかかった。

結果として、Mデザインスタジオに対して次のような損害請求がなされた。

 

・デザイン費返還:300万円
・再印刷・再制作費用:380万円
・撤去・回収作業に伴う物流損失:230万円

合計損害請求額:910万円

 

さらに、Nフーズは「今後のプロジェクトについては全面的に見直す」として、継続的な関係に影を落とす事態となった。

 

E&O保険の活用による損害吸収】

Mデザインスタジオでは、リスクマネジメントの一環として、E&O保険に加入していた。この保険には以下の内容が含まれていた。

 

・デザイン納品物に含まれる著作権・商標権・意匠権侵害に関する第三者請求への対応
・弁護士費用や和解交渉費用
・損害賠償金(示談や判決により決定されたもの)

 

【保険申請と交渉の流れ】

・保険会社への事故通知と経緯報告を行った
・法律顧問を通じてWフォント社とのライセンス交渉を実施
・商用ライセンス違反について正式に非を認めた上で、早期和解を希望

 

対応の結果、示談が成立。

 

【和解内容と保険金の支払い】

Wフォント社への損害賠償金:300万円

Nフーズへの損害補填:350万円(一部減額交渉成功)

・弁護士費用・法的アドバイザリー:約80万円

 

E&O保険による支払総額:730万円

 

Mデザインスタジオの実質的な負担額は、免責金額の10万円で済み(その他、雑費は除く)、資金繰りや事業継続に深刻な影響を与える事態は回避されることとなった。

 

【教訓と社内改善策】

この事件を受け、Mデザインスタジオでは以下の改善措置を導入した。

 

・使用フォントの全ライセンス管理台帳の整備
・新人デザイナーへの「著作権とフォントライセンス」に関する研修義務化
・外部素材を使用する際のチェックリスト制度の導入(納品前レビューに組み込み)
・クライアントへの納品前に「素材利用確認書」を添付する体制に変更

 

【総括:クリエイティブ業務に潜む著作権リスクとE&O保険の価値】

この事例から得られるポイントは以下の通りです。

 

・著作権は、意図せず侵害するケースが多く、特にフォントや写真など「見えにくい素材の権利」が盲点になりがち
・賠償リスクは数百万円~千万円規模に達することもあり、デザイン業務は法的責任と隣り合わせ
E&O保険は、事故発生後の経営継続と信用維持において決定的なセーフティネット

 

特に中小・個人事務所ほど、チェック体制や法務に割けるリソースが手薄になりがちです。

たった一つのミスが原因で、これまで築いた信頼や経営基盤が一気に崩れてしまうリスクがあるのが著作権関連トラブルの怖さです。

E&O保険は、単なる「損害補償」にとどまらず、信頼回復と専門家としての責任を果たすための防衛策として、ますます重要性を増しています。 

活用事例④:コンサルタントのアドバイスミスが企業経営に与えた損害とその対応

【背景:事業再構築を支援する経営コンサルティング契約】

Sコンサルティング株式会社(以下「S社」)は、地方の中堅製造業「H製作所」から、経営再構築と事業多角化に関する戦略コンサルティング業務を受託していた。H製作所は自動車部品の下請け製造を主とする企業で、業界全体の需要減退により業績が悪化。新規事業の模索が急務となっていた。

S社は以下の支援を行う契約を締結していた。

 

・新規市場の分析と事業選定(医療機器部品への参入を提案)
・投資シミュレーションと事業計画の立案
・設備投資に対する助成金・補助金の申請支援
・社内オペレーション改革のアドバイス

 

契約期間は6か月、報酬は月額100万円+成功報酬30%という成果連動型であった。

 

【問題の発生:根拠が不十分な市場予測に基づく投資判断】

S社は医療機器業界への参入を強く推奨し、「今後5年間で年率15%の成長が見込まれるニッチ市場」というデータを提示。H社はその提案を基に、約6,000万円の設備投資を決断した。

ところが、実際の市場はS社の予測とは異なり、参入から1年後も十分な受注が得られず、稼働率は30%未満にとどまった。原因を追及したところ、S社の市場予測には次のような重大な問題があったことが判明した。

 

【ミスの内容:誤った調査手法と出所不明のデータ】

・使用された市場レポートは3年前の二次資料であり、最新の需要動向を反映していなかった
・海外の特定メーカーの国内進出による市場圧迫が無視されていた
・クライアント特性(精密加工経験がないこと)を考慮せず、実現可能性の低い事業計画となっていた
・助成金申請支援も形式的で、実際には補助対象外とされ公的支援も受けられなかった

 

このことを受け、H製作所の経営者は「信頼して意思決定したのに、根拠が極めて不適切だった」として、S社に対する損害賠償請求を決断した。

 

【クライアントからの損害請求と主張内容】

H社が請求した損害の内訳は次の通り。

 

・過大な設備投資による減価償却費・金利負担:約1,500万円
・医療機器事業部門の人件費・赤字:約1,000万円
・経営判断ミスによる他事業機会の逸失損失:約700万円
※取締役会での不信任決議のきっかけにもなり、組織的混乱も招いた。

 

上記の事情を踏まえ、合計請求金額は約2,800万円に達することとなった。

 

【コンサルティング会社(S社)の対応とE&O保険の利用】

S社では、専門職業務のリスクに備えてE&O保険に加入しており、次のような補償内容が含まれていた。

 

・提供した助言・提案に過失があった場合の損害賠償責任補償
・訴訟対応に関する弁護士費用
・和解金・裁判費用の補填
・一般的な契約違反や故意・違法行為は補償対象外

 

S社は、社内調査ののち自社の説明責任の一部を認め、保険会社のアドバイスを受けつつ示談交渉に入った。

 

【和解内容と補償の詳細】

保険会社とクライアント(H社)の代理人弁護士との間で協議が進められ、以下の形で和解が成立した。

 

・和解金支払額:2,200万円(当初請求額の約80%)
・弁護士費用・交渉コスト:約300万円
B社のE&O保険による支払総額:2,400万円
B社の自己負担(免責金額):100万円

 

E&O保険の補償内容に基づく損害対応や、付帯サービスを利用し迅速な対応を行ったことにより、争訟を回避しクライアントとの関係も完全断絶には至らず、結果的に一部事業における関与は継続されることとなった。

 

【教訓と再発防止策】

この事例を通じて、S社は以下の点を教訓とし、組織改革を行った。

 

・調査データの出所管理とエビデンス保存の義務化
・提案書には「想定リスクと限界」セクションを必須化
・社外レビュー(第三者専門家によるアドバイザリー)制度の導入
・社内研修に「リスク開示と責任回避条項の明記」を加える

 

さらに契約時には、「助言による意思決定はあくまでクライアント責任である」ことを明文化し、同意を得る手続きを厳格化した。

 

【総括:コンサルティング業務の目に見えないリスクとE&O保険の意義】

経営コンサルタントの業務は、「アドバイス」という非物理的成果をもとに行動を起こさせるため、その責任範囲が曖昧になりやすく、トラブル時に大きな法的・金銭的リスクを伴います。

E&O保険は、こうした無形の知的サービスに対する損害請求に唯一対応できる保険であり、以下のような意義を持ちます。

 

・信頼性の裏付け:万が一の補償体制があることで、顧客への安心感を提供
・事業継続性の確保:突発的な大口賠償による資金流出を防止
・信頼回復の一助:訴訟や争議を回避し、関係修復を助ける

プロフェッショナル・サービスにおいては、たとえ最善を尽くしても、「結果」が思わしくなければ責任を問われる可能性が常に存在します。

そのリスクにどう備えるかが、長期的な信頼と持続可能な事業基盤を築くカギとなります。

Q&A:E&O保険に関する質問と、それに対する回答

最期に、E&O保険に関する質問と、それに対する回答をいくつか紹介します。

多くの方から質問を受ける項目をピックアップして紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

質問:EO保険の補償内容について教えてください。

建設事業を営む者です。先日、懇意にしている保険代理店の営業担当者より、EO保険について情報提供を受けました。

すごく熱心に説明してくれたのですが、イマイチ内容がわかりません。

EO保険はどのような補償内容なのか教えてください。 

回答:顧客・取引先といった第三者に経済的な損害を与えた場合に補償する保険

EOは「Errors」と「Omissions」のそれぞれの頭文字をとっています。

Errors:エラー」は過失を、「Omissions:オミッション」は怠慢を意味します。

つまりE&O保険とは、業務遂行上の過失や怠慢に起因して、顧客・取引先といった第三者に経済的な損害を与えた場合に補償する保険ということになります。

簡単に言うとミスに起因した損害を補償する保険です。

従来の賠償責任保険は、第三者の身体を傷つけたり、第三者の物を壊した場合といったように、対人・対物の損害が発生した場合に補償するものです。

一方でE&O保険においては、第三者の身体や財物に対する損害を伴わない経済的な損害を補償対象としているのです。

ここで、E&O保険で実際に支払われる保険金について下記に紹介します。

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 賠償損害

業務上の過誤によって生じる第三者の経済的損失(逸失利益、代替費用等)に起因する損害賠償金や争訟費用。

 費用損害

損害賠償金の発生・拡大防止に必要かつ有益な措置に要する損害防止費用。 

基本とする補償内容は概ね上記となります。その他、特約を付帯することで、補償内容を手厚くすることもできます。

なお保険会社によって基本補償や特約の取り扱いは異なりますので、詳細は必ず保険会社に確認するようにしましょう。 

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質問:EO保険とPL保険の違いを教えてください。

部品メーカーの製造部門の責任者です。弊社はPL保険に加入しております。

満期が近くなったので、契約更改に関する打ち合わせをしている際、EO保険の検討を打診されました。

詳しく話を聞いたのですが、いま加入しているPL保険と何が違うのか理解できませんでした。

PL保険とEO保険両方入ることで、リスクにしっかり備えられると言うのですが、同じものを二重にかける意味があるのでしょうか?

弊社も余裕があるわけではないので、意味のないものにお金をかけてられません。

PL保険との違いを教えてください。 

回答:E&O保険とPL保険とでは、補償するリスクの範囲に違いがあります。

E&O保険とPL保険とでは、補償するリスクの範囲に違いがあります。

ここでPL保険とE&O保険のそれぞれの補償範囲について整理します。

 PL保険の補償範囲

PL保険では、製造・販売した商品・製品(生産物)、および仕事の終了後、仕事の行った結果が原因となり、第三者にケガをさせたり(対人事故)、第三者のモノを壊したり(対物事故)したことにより、法律上の損害賠償責任を負担した場合に被る損害を補償します。

E&O保険の補償範囲

E&O保険では、製造した製品やサービスの欠陥・不備によって、第三者に「対人・対物事故をともなわない経済的損失」が発生した場合に、法律上の損害賠償責任を負担した場合に被る損害を補償します。

 このようにPL保険とE&O保険の大きな違いは、対人・対物事故をともなうか否かになります。

損害保険の現場に身を置いている筆者の体感としては、製造業や建設業等の企業の多くが、PL保険で補償する「対人・対物事故のリスク」にはしっかり備えています。

しかしPL保険ではカバーできない「対人・対物事故をともなわない経済的損失のリスク」については備えが追い付いていません。

PL保険に比較するとE&O保険は認知度の面ではそれほど一般的になっていないのが現状です。

PL保険との補償範囲の違いを含めた補償内容をしっかり理解して、ぜひ加入を検討することをおすすめします。 

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質問:EO保険における保険金支払い事例を教えてください。

先日EO保険の提案を受けました。補償内容もしっかり理解でき、魅力的な補償内容と感じたので、ぜひ加入をと、前向きに検討しているところです。

具体的にどのような保険金の支払い事例があるのでしょうか。

そのような事故が発生しないに越したことはないのですが、自分が実際に保険金請求をする際の参考に聞いておきたいです。 

回答:人為的なミス等に起因した製品やサービスの不備によって第三者に損害を与えたもの

E&O保険で保険金の支払い対象となるのは、人為的なミス等に起因した製品やサービスの不備によって第三者に損害を与えたもので、対人・対物事故をともなわないものとなります。

具体的な損害事例をいくつか紹介したいと思います。

事例:規格に合致していないことが発覚し、大幅な製造スケジュールの遅延が発生。

自動車部品の製造業者が、モーター部分の部品を製造し、二次製造業者に納品したところ、仕様書で定めた規格に合致していないことが発覚し、大幅な製造スケジュールの遅延が発生。各業者より製造スケジュール遅延に伴う逸失利益を請求された。

事例:機器に欠陥があり、納品予定の部品の製造が大幅に遅延した。

製造工場の機器に欠陥があり、納品予定の部品の製造が大幅に遅延した。

製造工場側は別の機器を動かしたり、別部門の人員に応援要請をする等の対応を講じたが、納品先への納品に大幅な遅延が発生した。

製造工場に機器の設置を担当した業者は、製造工場より逸失利益や人件費を請求された。

事例:納品したところ、精密機器の設計ミスが発覚。

製造した精密機器をメーカーに納品したところ、精密機器の設計ミスが発覚。

当初想定していた性能の発揮ができなかったことでパフォーマンスが下がったとして、逸失利益を請求された。

事例:納入された電子基板の検査を実施したところ、欠陥が判明した。

液晶画面の製造過程において、納入された電子基板の検査を実施したところ、欠陥が判明した。電子基板のメーカーに再度製造を指示。

再度納品されるまでラインを停止せざるを得ず、大幅なスケジュールの遅延が発生。

結果的に発生した人件費や逸失利益について請求された。

事例:缶詰に貼る表示ラベルに、誤った情報を印刷してしまった。

食品に貼るラベルの印刷業務を請け負っている業者が、缶詰に貼る表示ラベルに、誤った情報を印刷してしまった。

これにより、缶詰の出荷ができなくなってしまった。

缶詰の業者から逸失利益を請求された。 

このように、第三者がケガをした、もしくは第三者のモノを壊してしまった、といったような目に見える形での損害がともなわなくても、第三者に対しては損害が発生しうるのです。

特に製造業事業者は、PL保険とセットでE&O保険についてもしっかり検討することをおすすめします。 

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質問:EO保険のメリット・デメリットは何でしょうか?

E&O保険の提案を受けましたが、加入をどうしようか悩んでいるところです。

加入することで発生するメリットやデメリットで総合的に判断したいと思うのですが、思いつきません。

EO保険に加入することのメリットやデメリット、注意すべき点なんかについても教えてください。 

回答:業種によってはE&O保険に加入することで様々なメリットやデメリットがあります。

業種によってはE&O保険に加入することで様々なメリットがあります。

特にPL保険のニーズの高い業種である製造業者や建設業者にとっては、E&O保険の面でも大きなメリットがあります。

メリットとデメリット、注意すべき点について解説します。 

回答:E&O保険に加入するメリット

PL保険ではカバーできない補償範囲をカバーできること

これが、E&O保険における最大のメリットであるといえます。

PL保険では人為的なミス等によって、納期の遅延に伴う逸失利益等、取引先に発生させてしまった損害については補償対象外となります。

なぜならそこに対人損害も対物損害も発生していないからです。一方でE&O保険では、そのようなPL保険の守備範囲外のケースも補償対象としています。

この点がなによりも大きなメリットですが、理想はPL保険とE&O保険とで企業が抱えるリスクを網羅的にカバーすることです。

 時代背景に対応したリスクを補償できること

これはあくまで現場で体感した筆者の感想です。様々な企業様(特に製造業)とお話をしていると、一様に技術者の高齢化に悩みを持たれています。

結果として技術の引継ぎがうまくいかず、経験不足であったり未熟であったりする技術者がやらざるを得ず、ミスや納期遅延が発生してしまっています。

結果的に取引先に迷惑をかけ、信頼の失墜をまねいてしまうのです。

E&O保険は企業、特に製造業が抱えるこのような現状、時代背景に対応した保険であるといえます。

回答:E&O保険のデメリットや注意すべき点

補償対象外となるケース

これはある意味、補償対象となるケースを理解すること以上に重要な点です。補償対象外となる事例はしっかりおさえておきましょう。

E&O保険では、物理的な損害が発生しない限り保険金の支払い対象とならないという点は最重要事項です。

勘違いされやすい点でもあります。

その他にも、納期の遅れ等、外形的には支払い対象となる事案だとしても、納期の遅延を生じさせたのが故意によるものであった場合は支払い対象となりません。

商品パンフレットや約款等には保険金をお支払いできない主な場合の記載がありますので、誤解のないようしっかり確認するようにしましょう。 

自己負担はゼロにはならない

EO保険の性質上、免責金額は必ず設定する必要があります。免責金額とはいわゆる自己負担額を指し、保険金支払いの際に適用されるものです。

下記の事例を参考にしてください。 

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E&O保険の参考事例】

E&O保険の設定保険金額:1億円(免責金額:50万円)の場合

保険会社による損害認定額:500万円

保険金の支払額:500万円(損害認定額)50万円(免責金額)=450万円

 

上記のように、免責金額は保険金の支払いの際に、損害認定額から差し引かれる金額を指します。

なお免責金額を高く設定すれば、その分保険料は安くなりますが、逆に免責金額を低く設定すると保険料は高くなります。 

ここまで解説してきたように、PL保険とE&O保険は補償する範囲が異なります。

どちらを優先するかは企業様の補償に対する考え方によりますが、EO保険とPL保険はセットで考えることを基本とし、それぞれ補償する範囲をしっかり理解した上で取捨選択しましょう。

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