業務災害保険は経営者&役員にも必要!?労災上乗せ補償でリスクに備える方法を解説。
労災保険ということばを耳にしたことのある人は多いことでしょう。
ニュースであったりテレビドラマであったり新聞であったりと、様々な場面が想定されます。
一方でその補償内容や加入条件を正しく理解している人はきっと少ないことでしょう。
たとえば社長は労災保険の補償対象外だということを知っている人は多くないのではないでしょうか。
今回の記事では、労災保険の補償内容について、経営者・役員に対する補償という点に焦点を当てて深堀りしていきたいと思います。
業務災害保険をどこよりも安く加入できる方法あり!
目次
経営者・役員をとりまく労災の環境
労災保険の正式名称は労働者災害補償保険といいます。
その名の通り「労働者」の災害を補償する保険制度です。
ここでいう「労働者」とは職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいい、正社員、パート、アルバイト等の雇用形態は関係ありません。
労災保険では、業務中の事故に起因する傷病だけでなく通勤途上の傷病についても補償されます。
【参考サイト:厚生労働省 労災補償】
一方で、経営者・役員は労働者ではありません。使用者となります。
そのため労災保険の補償対象外となってしまいます。
業務に起因して負ったあらゆる傷病に対して、労災保険から補償を受けることができないのです。
中小企業等では、社長も従業員同様に現場に立って仕事をしているケースが多いでしょう。
それにも関わらず何も補償がないのでは納得できませんよね。
では経営者・役員が仕事中のケガに備えるにはどうしたら良いのでしょうか。
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役員に対する公的な補償制度を紹介
ここでは、原則として補償対象外とされている労災保険に代わりとなる公的な補償制度について紹介します。
労災保険の特別加入制度
冒頭に説明しましたが、労災保険は原則として経営者・役員は加入できません。
ところが、一定の要件を満たせば加入することのできる制度があります。
それが特別加入制度です。なお、経営者・役員が誰でも特別加入制度を利用できるわけではありません。
下記の条件を満たしたうえで、所轄の労働基準監督署長へ特別加入申請書を提出し、都道府県労働局長の承認を受けると特別加入が認められるのです。
業種:労働者数
金融業・保険業・不動産業・小売業
50人以下
卸売業・サービス業
100人以下
上記以外の業種
300人以下
参考までに特別加入にあたっての保険料例を下記にご案内いたします。
【業種別保険料例】
(例1)
・業種:その他の建設事業
・給付基礎日額(注):10,000円
・保険料算定基礎額(給付基礎日額×365日):3,650,000円
・年間保険料(保険料算定基礎額×保険料率):54,750円
※保険料率:15/1,000
(例2)
・業種:交通運輸事業
・給付基礎日額(注):15,000円
・保険料算定基礎額(給付基礎日額×365日):5,475,000円
・年間保険料(保険料算定基礎額×保険料率):21,900円
※保険料率:4/1,000
(注)給付基礎日額とは、保険料や、休業(補償)等給付などの給付額を算定する基礎となるもので、申請に基づいて、労働局長が決定します。給付基礎日額が低い場合は、保険料が安くなりますが、その分、休業(補償)等給付などの給付額も少なくなります。
【参考資料:労災保険 特別加入制度のしおり〈中小事業主用〉】
健康保険の傷病手当金
健康保険には、病気やケガで仕事ができないときの収入を補償する仕組みとして、傷病手当金という制度があります。
経営者や役員も健康保険の被保険者であれば、支給条件を満たすことで傷病手当金を受給することができます。
【参考サイト:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)】
ただ、問題は支給条件を満たすことができるか、という点にあります。
ここで傷病手当金の支給条件をみてみましょう。
下記の4点になります。
②仕事に就くことができないこと・仕事をすることができない日から起算して3日を経過したこと
③休業した期間について給与の支払いがないこと。
④給与の一部を受けることができる場合、その額が傷病手当金の額より少ないこと
※①の業務外は社長の場合、労災適用外と読み替えることができる。
経営者や役員の場合、あらかじめ役員報酬が定められているので、仮に私傷病で欠勤した場合で①~③の条件を満たしても、通常は役員報酬が支払われることになるので、④の条件は満たされず、傷病手当金は支給されません。
役員報酬の額をゼロにすれば支給申請をすることも可能ですが、その場合、株主総会で役員報酬を不支給にする旨の決議し、申請の際に議事録を別途添付する必要があります。
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公的補償ではカバーできない上乗せ補償の方法
労災にしても健康保険の傷病手当金にしても、通常時の給与が全額補償されるわけではありません。
こういった公的な補償制度では不足する部分をカバーする方法を紹介します。
傷害保険
公的な補償制度での不足分をカバーする方法のひとつとして、損害保険会社各社で販売している傷害保険に加入する方法があります。
傷害保険は業務中・業務外問わずケガのリスクを補償するものです。
特に経営者や役員の場合、業務中なのか業務外なのか判断が難しい場面が多くあります。
例えば、取引先の方とゴルフをしたり、お酒を飲んだりすることは、傍から見ればプライベートに見えるでしょう。
しかし取引先との関係を密にするための経営者・役員にとっては大事な仕事なのです。
そういった業務中・業務外での争いを回避する意味でも、24時間補償の傷害保険への加入は非常に有効です。
また、傷害保険に加入することで、保険会社独自の付帯サービスを利用できる場合があるのも魅力です。
サービス内容は保険会社毎に異なりますが、生活サポートサービス等の電話相談サービスが無料で受けられます。
一例として、傷害保険のサポートサービスを下記の参考サイトで紹介します。
【参考サイト:三井住友海上 GKケガの保険 サポートサービス】
さらに、様々な特約を付帯することで補償の幅を広くすることができるのも傷害保険の大きな魅力です。
たとえば損保ジャパン社の傷害保険では役員プランというものが用意されています。
ケガの補償だけでなく所得の補償もあり、保険金額も通常よりも高く設定することができ、役員の就業不能状態にも対応しています。
労災の特別加入に加えて傷害保険で上乗せすることもぜひ検討してみましょう。
労災上乗せ(業務災害総合保険)
一般従業員に適用される労災について、補償の不足する部分をカバーする目的で労災上乗せ保険を採用している企業は多くあります。
その補償対象者に経営者・役員を含めることで、補償を得ることができます。
労災では不足する部分をカバーするという性質上、従業員にとっては福利厚生の側面があります。
一方で経営者・役員は従業員ではないので、基本的に労災保険の対象外となります。
経営者・役員にとっては、業務上のケガ・病気になった場合の労災の代わりとして利用することができます。
なお、この場合、経営者・役員の補償内容は、労災の特別加入制度を利用しない場合は、一般従業員よりも手厚くする必要があります。
労災上乗せ保険には、経営者・役員にとっては労災の代わりとなる機能以外にも様々な特色があります。
そのポイントを下記に解説していきたいと思います。
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使用者賠償責任保険で賠償リスクをカバーできる
使用者賠償責任補償保険は、従業員が業務上の災害等で心身に障害を負った場合で、企業側に責任があるとして損害賠償責任が発生した場合の、法律上の損害賠償金、訴訟費用等を補償するものです。
労災上乗せ保険では、特約を付帯することで使用者賠償責任保険を付保することができるのです。
このような業務災害事故の場合、まず企業側の安全配慮義務違反が問われます。
安全配慮義務とは、使用者の義務として労働契約法第5条に下記のように定められています。
労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
近年は企業側の責任が厳しく問われており、安全配慮義務違反を認定し、数千万円~1億円超の高額賠償となった事例も多数出ています。
こういった賠償金の支払いは企業にとって経営を揺るがすほどの大きな損失になりかねません。
このようなリスクに備えることができるのは労災上乗せ保険の大きな特色です。
精神疾患に対応した特約を付帯できる
近年、非常に多くなっているのが精神疾患や心疾患、脳血管疾患が原因で労災認定された事例です。
2015年に発生した電通社員の過労死自殺はまだ記憶に新しいことでしょう。
このような事例は、経営者や管理側に従業員を精神的に追い込む意図はなくても、従業員本人が追い詰められてしまうというケースはよくあるのです。
このような場合に備えて精神疾患に対応した特約を付帯できるのも、労災上乗せ補償の魅力です。
なお、保険会社によっては付帯サービスで24時間対応のメンタルヘルスの電話相談サービスもあります。
付帯サービスは保険会社によって取り扱いが大きく異なるので、詳細は保険会社の営業担当に確認してみましょう。
セクハラ・パワハラ等を理由とする訴訟リスクにも対応できる
不当解雇や雇用差別、ハラスメントを現認として賠償責任を問われた場合に対応できる特約として「雇用慣行賠償責任補償特約」があります。
上記の精神疾患にも共通する部分ですが、経営者や管理側にハラスメントの意図がなくても、従業員側の受け取り方によっては大きな問題に発展する問題です。
特に昨今では従業員の権利意識が高まっており、それに比例して訴訟リスクも高まってきます。
雇用慣行賠償責任補償特約を付帯することで、このようなリスクに対応できる点も、労災上乗せ補償の魅力のひとつです。
まとめ
企業の経営者・役員は基本的に労災の適用の対象外です。
それは労災とはそもそも労働者災害補償保険という名の通り、労働者のための保険であり、経営者・役員は労働者とはみなされないからです。
しかし多くの中小企業において、経営者も現場に立って労働者同様に業務災害のリスクを負いながら仕事をしています。
労災の特別加入制度を利用したり、傷害保険に加入する等して、経営者も最低限の備えをしておきましょう。
さらに経営者は自身の業務中のケガや病気のリスクと同様、従業員が安全に仕事できるよう配慮する義務もあります。
従業員が業務中にケガをすると安全配慮義務違反を問われ、高額の賠償責任を負ってしまうリスクもあります。
こういったリスクに備えるためにも労災上乗せ補償を活用することが大事です。
経営者は自分自身のケガ、従業員のケガ両方に目を向ける必要があります。
その点、労災上乗せ補償で両方のリスクに備えるのは最も効果的といえるでしょう。
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