シニア世代に生命保険って必要?現役時代と異なる保障について解説します
シニア世代は現役世代と生活状況が大きく異なります。
子どもが自立し、経済的負担が小さくなるものの、年金が収入の柱となり現役時代よりも収入が小さくなったり、健康状態も変調をきたしやすくなったりします。
そのため、生命保険の価値も現役時代と大きく異なります。
現役時代であれば、自分に万が一があったときに備え、死亡保障の重要性が大きくなりますが、シニア世代では自分自身の介護や葬式費用、老後の生活費や病気・ケガに対しての備えがより重要性を増してきます。
つまり現役時代と必要な保障が異なりますので、必然的に保障内容に過不足が生じます。
しかし健康状態によっては新たに保険に加入するのが難しかったり、商品への理解が不十分なまま契約し、相続場面などでトラブルになることもあります。
そこで本記事では、シニア世代における生命保険の必要性と、保障の選択について解説します。
この記事を読むことで以下のことがわかります。
・シニア世代に必要な保障について
・トラブル対策として相続における生命保険
・シニア世代が生命保険に加入する際の注意点
シニア世代の方や、今後シニアを迎える方にとって参考になると思いますので、最後までお読みください。
目次
シニア世代に必要な保障は?
シニア世代に必要な保障として主に挙げられるのは、介護・医療・死亡(配偶者へ)・老後生活に対しての保障があります。
しかし、それらを検討するにあたって重要になるのが保障の見直しです。
例えば、家族がいれば死亡に対する保障をすでに備えているかもしれません。
しかし保障期間はいつまでか?をしっかり確認しましょう。もしかしたら、60歳で保障が終わり、配偶者へ残すことができないかもしれませんし、終身だとしたら保険金が大きいために保険料が負担になるかもしれません。
また、老後の生活に対して個人年金保険に加入しようにも、条件によっては損をしてしまうこともあります。
このようにシニア世代に必要な保障は、少々複雑な要素がついてまわります。
そこで、先ほど挙げた保障に対し、必要な理由と見直しのポイントなどを紹介していきます。
介護への備え
日本は超高齢社会に突入し介護への備えは少なからず必要になってきます。
現行の公的介護保険により、介護サービスは1割〜3割の負担で済みますが、要支援・要介護のような介護認定を受けると、継続してその費用を払っていく事になります。
そのため、民間の介護保険で備えておくことが有効です。
バリバリの現役時代から介護に対する備えを準備している方は少ないでしょうから、シニアに近づくころから検討しておきたい保障です。
民間の介護保険は公的介護保険と連動している商品と、独自基準を設けている商品があるので加入にあたっては十分、比較・検討しましょう。
医療への備え
年を取るにつれ、病気がちになったり、ちょっとしたことでケガをしやすくなるのは避けられない部分があり、医療への備えは重点を置きたいところです。
現役時代からすでに加入している方もいるでしょうが、入院日額を手厚くする、特約を付与する、がんに対するリスクも検討するなどの見直しをしましょう。
遺伝する病気を持った家族がいればなおさらです。
新たに医療保険に加入する場合、保障を手厚くする場合は、告知義務違反には十分注意しましょう。
後に詳細を紹介しますが、告知義務違反のデメリットは非常に大きいものになります。
残された配偶者への死亡保障
シニア世代において役割が現役時代と大きく異なる保障の一つでしょう。
そのため、見直しがとても重要です。シニアにおける主な死亡保障の役割は、自分自身の葬儀代や身辺整理のお金を保険にて残すことになるでしょう。
そのため、基本的には多額の保険金が必要というわけではありません。
配偶者との年齢差・就労状況などで保障を見直しすことがメインになってくるでしょう。新規に加入するにあたっても、大きな保障を検討する必要性は低いといえます。
ただし、財産が非常に多い場合や、生命保険の受取人を指定したい場合などは、この限りではありません。それについては、後程紹介します。
老後の生活費への対策
貯蓄性の高い保険に加入し、老後の生活に充てるのが目的になり、個人年金保険や外貨保険、変額保険などが商品として挙げられます。
シニアに突入してから加入すると、元本割れするリスクがありますので、比較的若いうちから備える必要があります。しかし、商品によっては死亡保障に解約返戻金や年金特約などがあるケースもあるので、見直すことが重要になってくる保障です。
商品内容もやや複雑なものも多く、先ほど紹介した元本割れリスクなどがあり、トラブルの多い保険になりますので、自分一人で加入を決定するのではなく、家族とよく相談することに加え、適時専門家のアドバイスを求めるとよいでしょう。
相続対策にも
シニア世代において財産管理・相続に関する取り決めは、非常に重要な事柄です。
残された家族にトラブルが発生しないよう、しっかり対策する必要があります。そのような場面でも生命保険は重要な役割を果たします。
具体的には税金面、相続放棄、家族同士が相続に関して争う「争続」対策です。
すでに加入している生命保険の保障内容を確認するとともに、必要であれば、相続の事まで考慮した生命保険に加入する必要が出てくるかもしれません。
ただし、制度が複雑で自分一人で全てに対策を行うのは難しい部分もあり、家族の意向を全く反映しないのはリスクが大きいので適時、専門家に相談しながら対策するようにするとよいでしょう。
税金面
生命保険には「みなし相続財産」として相続税の対象になる場合があります。しかし生命保険には非課税枠があり、具体的には以下の式で計算されます。
500万円×法定相続人の数
このように法定相続人の数によっては非課税枠の恩恵を受けられます。
また、子を契約者として贈与もできます。生命保険加入時に、契約者・保険金受取人を子、被保険者を親とし、親が贈与した財産を全額保険料の支払いに充てれば、親が死亡した際に子が死亡保険金を受け取れます。
相続税と所得税・住民税どちらが安くなるか、計算する必要がありますが税金面での対策になります。
相続放棄の対象外
相続放棄は被相続人の負債であるマイナスの財産だけでなく、プラスの財産も手放すことになります。
そのため、財産を正確に把握しないと大きく損をしてしまいます。
しかし、他の財産を放棄しても生命保険は受取人固有の財産とされているため、保険金を受け取れます。
ただし、相続放棄した場合、放棄した人は先ほど紹介した生命保険の非課税枠は利用できない点は注意してください。
生命保険は給付漏れが少なくないので、遺言書やエンディングノートなどにしっかり加入先の保険会社を記載して残し、残された家族がしっかり保険金を請求できるよう対策してください。
争続対策にも
「相続」が「争続」になるという、話が最近では良く聞かれます。
本来、相続財産は法定相続分が定められており、それと異なる相続をする場合は、相続人同士が遺産分割について話しあう遺産分割協議が必要ですが、生命保険ではこの場面でも有効に働いてくれます。
先ほど紹介したように、生命保険は受取人固有の財産とされ、受取人を指定できます。
そのため、生命保険の保険金を他の相続人と争うことはできませんし、相続財産の分割をめぐる遺留分減殺請求も受け付けません。
被相続人が自分の財産を渡したい人に、他の人とトラブルを避けながら残すことができます。
このように生命保険は、相続場面でのメリットは非常に大きいものがあります。
シニア世代の生命保険加入における注意点
先ほど紹介したように、現在加入している保険を見直した場合、保障に過不足が生じます。死亡保障の期間が短い場合、医療保障の必要性、介護への備えと老後生活の準備が必要と感じ、新たに保険に加入する事を検討する人がいるかもしれません。
しかし シニア世代が生命保険に加入するにあたっては、若年者よりも注意点が多いです。
若い時に比べても大きな病気にかかりやすく、健康状態から加入が難しかったり、認知機能の衰えから、複雑な設計の商品理解が追い付かず、自分の意向と異なる商品に加入してしまうケースがあるからです。
実際、保険商品は設計がシンプルな商品や複雑なものなど多岐にわたります。
それらの注意点を見ていきましょう。
健康状態と告知
先ほどから少し触れていますが、年を重ねると病気になりやすくなります。
だからこそ保険が必要になると感じるのですが、いくら保障が欲しいからと言って、告知の際に偽りの告知をすると告知義務違反になり、告知義務違反をした場合は、給付金が支払われなくなったり、契約そのものが解除になったりと、非常に大きなデメリットが生じるからです。
もし健康状態に不安があり、それでも保険に加入したい場合は、保障内容はやや手薄で保険料も割高になりますが、限定告知型保険(引き受け基準緩和型)や無告知保険(無選択型)を検討するとよいでしょう。
商品理解と認知能力
高齢になると身体機能だけではなく、認知機能や判断機能も低下してきます。
保険商品は商品内容が複雑ですから、シニア世代は注意が必要です。とくに支払に独自の基準を設けている民間の介護保険や、老後生活への備えとして有効と言われる外貨保険や変額保険は特に注意が必要です。
解約控除や為替リスクなど身近ではない 用語が多数用いられることや、預貯金の類と勘違いしたまま加入させられるケースが多いからです。
このような商品に加入を検討する場合は、多くの商品を比較・検討し、家族や専門家と十分相談し、自分自身が納得できるようにしてください。
まとめ
生命保険においてシニア世代と現役時代との必要な保障の違いと、相続場面での対策、生命保険加入における注意点を解説してきました。
日本は超高齢社会に突入し、人の人生は100年と言われています。
生命保険は各世代において非常に重要な役割を果たすもので、その役割がライフステージごとに異なるのがお分かりいただけたと思います。
今後、人の寿命・健康寿命が延びてくるにつれ、常に見直しが必要な世の中になってくるかもしれません。
税金のことや相続のことは制度が複雑ですから専門家に相談しながら必要保障を検討し、保障を見直ししていくとよいでしょう。