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投稿日2026.11.03/更新日2026.11.03

「世帯年収1,200万円なら大丈夫」9,000万円の家をペアローンで購入した30代夫婦…3年後に起きた想定外の出来事【FPが解説】

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著者情報 ファイナンシャルプランナー 森 逸行 AFP(日本FP協会認定)/2級FP技能士/証券外務員二種/住宅ローンアドバイザー
住宅購入・資産運用・保険・相続まで幅広く対応。実務経験に基づいた、現実的で分かりやすいアドバイスを提供している。

「世帯年収1,200万円なら大丈夫」9,000万円の家をペアローンで購入した30代夫婦…3年後に起きた想定外の出来事【FPが解説】  「夫婦2人で働けば、9,000万円の住宅ローンでも返済できるはず」
「夫婦2人で働けば、9,000万円の住宅ローンでも返済できるはず」

そう考えてマイホームを購入した30代の共働き夫婦。しかし、購入から3年後、病気による休職で収入が減少し、夫婦関係にも変化が生じました。

最終的に離婚を選択した2人を待っていたのは、簡単には解決できない住宅ローンの問題でした。

近年、住宅価格の上昇を背景に、夫婦それぞれが住宅ローンを組む「ペアローン」を検討する家庭もあります。

今回は、9,000万円の住宅を購入した夫婦の事例を通じて、ペアローンのメリット・デメリット、離婚時のリスク、住宅購入前に確認しておきたいポイントをファイナンシャルプランナー(FP)が解説します。

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「2人なら返済できる」9,000万円のマイホームを購入

「住宅価格はこれからも上がるかもしれない。買うなら今しかないと思いました」

そう話すのは、長井さん(仮名・30代)。

夫は会社員で年収700万円、妻は看護師として年収500万円。世帯年収は約1,200万円の共働き夫婦でした。

都内近郊で理想のマイホームを探し続け、ようやく見つけた新築一戸建ての価格は9,000万円。

単独では希望する住宅ローンを組むことが難しかったため、夫婦それぞれが住宅ローンを契約する「ペアローン」を選択しました。

「2人とも働き続ければ返済できる」

そう考え、念願のマイホームで新生活をスタートさせました。

しかし、このとき夫婦が十分に想定できていなかったのが、将来の収入や働き方が変わる可能性でした。

住宅ローン9,000万円の返済額はいくら?

仮に9,000万円を全額借り入れ、35年間で返済する場合、毎月の住宅ローン返済額はどのくらいになるのでしょうか。

金利を年1.0%と仮定すると、毎月の返済額は約25万4,000円。年間では約305万円になります。

世帯年収1,200万円に対する年間返済額の割合は約25%です。

ただし、住宅購入後には固定資産税や火災保険料、建物の修繕費なども必要になります。

また、金利が上昇した場合や、夫婦のどちらかの収入が減少した場合には、家計の負担が大きくなる可能性があります。

住宅ローンの審査に通ることと、将来にわたって無理なく返済できることは、必ずしも同じではありません。

「住宅ローンを返さなければ…」仕事中心の毎日へ

住宅購入後、長井さんの生活は少しずつ変化していきました。

9,000万円という大きな住宅ローン。

「返済が遅れるわけにはいかない」

その責任感から、残業や休日出勤、夜勤など、仕事の負担が増えていきました。

夫婦で働いているとはいえ、住宅ローンの返済に加え、生活費や将来の教育費、老後資金なども考えなければなりません。

「住宅を買って幸せになるはずだったのに、いつの間にか住宅ローンのために働いていました」

長井さんは、当時の生活をそう振り返ります。

購入から3年後、うつ病による休職で家計が一変

住宅購入から3年後、長井さんの生活に大きな変化が訪れました。

夜眠れない、朝起きられない、仕事への意欲が出ないといった症状が続き、病院を受診したところ、うつ病と診断されたのです。

仕事の負担や生活環境の変化など、さまざまな要因が重なるなかで体調を崩し、休職することになりました。

休職によって収入が減少しても、住宅ローンの返済は原則として続きます。

これまで夫婦2人の収入を前提としていた家計は、次第に厳しい状況になっていきました。

住宅ローンの返済だけでなく、日々の生活費や将来への備えについても不安が大きくなっていったのです。

収入減少から夫婦のすれ違いへ…最終的に離婚を選択

収入が減少すると、住宅ローンの返済だけでなく、夫婦の生活にも影響が及びます。

「これから住宅ローンを返していけるのか」

「今の生活をいつまで続けられるのか」

「将来の生活はどうなるのか」

お互いを思いやる気持ちはありましたが、家計や将来への不安が重なるなかで、少しずつ夫婦の価値観にすれ違いが生まれていきました。

そして、最終的に2人が選択したのは離婚でした。

しかし、離婚によって夫婦関係を整理できても、住宅ローンの問題が解決するわけではありませんでした。

離婚後に直面した「ペアローン」の大きな落とし穴

「離婚そのものより、住宅ローンの整理の方が何倍も大変でした」

長井さんは、そう話していました。

ペアローンは、夫婦それぞれが別々に住宅ローンを契約する仕組みです。

一般的には、お互いが相手の住宅ローンの連帯保証人になるケースも多く、離婚したからといって返済義務がなくなるわけではありません。

例えば、離婚後に夫だけが住宅に住み続ける場合でも、妻名義の住宅ローンが残っていれば、その返済義務は原則として続きます。

また、共有名義の住宅全体を売却するには、原則として共有者双方の同意が必要です。

さらに注意したいのが、住宅の売却価格よりも住宅ローン残高が多い「オーバーローン」の状態です。

この場合、住宅を売却しても住宅ローンを完済できないため、不足する資金をどのように準備するかが問題になります。

離婚後に一方が住宅ローンを引き継ぐ場合も、金融機関の承諾や審査が必要になることがあります。

ペアローンは住宅購入時には便利な仕組みですが、離婚時には住宅の所有権と返済義務の整理が複雑になりやすい点に注意が必要です。

ペアローンは危険?メリットとデメリットをFPが解説

ペアローンそのものが悪い仕組みというわけではありません。

夫婦それぞれが住宅ローンを契約することで、単独では購入が難しい住宅を検討できるメリットがあります。

また、一定の要件を満たせば、夫婦それぞれが住宅ローン控除を利用できる場合があります。

一方で、次のようなリスクもあります。

・収入減少のリスク:病気、休職、転職、出産、育児などで世帯収入が減る可能性
・離婚時のリスク:離婚後も双方の住宅ローン返済義務が残る可能性
・売却時のリスク:売却代金だけでは住宅ローンを完済できない可能性
・団信の保障リスク:一般的なペアローンでは、一方に万一のことがあっても、もう一方の住宅ローンは残ることがある

ペアローンを利用する場合には、メリットだけでなく、将来の生活環境が変化した場合のリスクも理解しておくことが重要です。

FPが考える「ペアローンで後悔しないための6つの確認ポイント」

住宅購入前には、次の6つのポイントを確認しておきましょう。

1.夫婦のどちらかが休職しても返済できるか

現在の世帯年収だけでなく、一方の収入が減少した場合の家計をシミュレーションしましょう。

2.出産・育児による働き方の変化を考えているか

育児休業や時短勤務によって収入が減少する可能性も考慮する必要があります。

3.離婚した場合の住宅の扱いを理解しているか

住宅を売却するのか、どちらかが住み続けるのか。住宅ローンの返済義務や名義についても確認しておきましょう。

4.住宅を売却してローンを完済できるか

将来、住宅を売却する場合に備え、住宅ローン残高と売却価格の関係を把握しておくことが大切です。

5.団体信用生命保険(団信)の保障内容を理解しているか

死亡や高度障害だけでなく、疾病保障などの内容も確認しましょう。なお、精神疾患による休職などが保障対象になるとは限りません。

6.ライフプランで将来の家計を確認しているか

教育費、老後資金、住宅の維持費、金利上昇などを含め、長期的な家計の収支を確認することが重要です。

FP視点|住宅ローンは「借りられる金額」で決めない

私が住宅購入相談で必ずお伝えしているのは、住宅ローンは「借りられる金額」ではなく、「返し続けられる金額」で考えることが重要だということです。

金融機関の住宅ローン審査では、年収や勤務先、借入状況などをもとに借入可能額が判断されます。

しかし、審査に通ったからといって、その借入額が家計にとって無理のない金額とは限りません。

特にペアローンでは、夫婦2人の収入が長期間続くことを前提に借入額を決めてしまうケースもあります。

住宅購入時には、現在の収入だけでなく、病気や休職、出産、育児、転職などによって家計が変化した場合も考える必要があります。

そのため、住宅ローンを契約する前にライフプランを作成し、将来の収入・支出・貯蓄残高を確認しておくことをおすすめします。

まとめ|ペアローンで後悔しないために大切なこと

ペアローンは、夫婦で協力して住宅購入を実現するための有効な方法です。

しかし、夫婦2人の収入を前提に借入額を増やしすぎると、病気や休職、離婚などによって生活環境が変化した際に、大きな負担になる可能性があります。

今回の事例から考えたいのは、住宅ローンの返済を優先するあまり、家族の生活そのものが苦しくなってしまうリスクです。

**マイホームは、住宅ローンを返済するためではなく、家族が安心して暮らすために購入するものです。**

住宅購入を検討する際には、借入可能額だけで判断せず、将来の家計やライフプランも含めて慎重に検討しましょう。

 

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