保険の米ドル建ての場合に円安が進行した時のメリットとデメリットの質問にベテランFPが解説
生命保険に加入するにあたり、保険料を日本円で払う日本円建て保険が元々は主流でした。
ですが、マイナス金利の影響もあり、生命保険で加入する保険は円に限らず、昨今では、米ドル建てやその他の通貨で加入する生命保険が増えました。
そんな時代背景もあり多くの方が米ドル建て生命保険に加入している事と思います。しかし、為替レートの変動で円安や円高によるデメリットも多く生じているニュースが話題になってます。
この記事では『ドル建て保険が円安になったときのメリットとデメリット』を頂いた質問に沿ってわかりやすく回答いたします。
目次
質問:保険にドル建てがあると聞いたのですがドルだと何の得が…
詳しくは知りませんが、保険にドル建てがあると聞いたのですがドルだと何の得があるのでしょうか?
海外の保険会社さんの場合にドル建て保険があり、国内の保険会社の場合はドル建て保険ってそもそもあるのでしょうか?ドル建ての保険に入るメリットやデメリットがあれば教えてください。
回答|海外の保険会社いわゆる外資系生命保険会社で…
海外の保険会社いわゆる外資系生命保険会社では、外貨建て保険の取り扱いがあります。
外貨建て保険の種類は、米ドル建て、豪ドル建て、ユーロ建てなどの種類の通貨の保険商品があります。
現在(2022年12月)では米ドル建て保険が多く取り扱いをされておりますが、ユーロ建て生命保険は多くの保険会社で販売停止や取り扱いを停止しております。
回答|ドル建て保険のメリットは円建て保険に比べて…
ドル建て保険のメリットは、円建て保険に比べてより大きい保険金を持てることと解約金(貯蓄)の増加スピードが円建てより速いのがメリットになります。
ドル建て保険は保障機能と貯蓄機能を備え、保障期間が長期にわたり将来お金が貯まり、その解約金を受け取る仕組みです。
回答|ドル建て保険のデメリットは…
ドル建て保険のデメリットは、保険料をドル建てで払うことにより、支払う保険料が毎回変動する事です。
また、解約する時には支払った時の為替レートより下がった場合には累計の保険料総額よりも受け取る解約金が下回る可能性があります。
為替により払う保険料が変動する事、受け取る際の解約金や保険金が為替レートにより変動する事になります。この変動するリスクを為替リスクと呼ばれております。
回答|生命保険の予定利率とは何か説明する…
生命保険会社は、生命保険の契約者から集めた生命保険料を積立ておき、将来保険金を支払うために備えています。
このお金を『責任準備金』といいます。ですが、ただ積立ているわけではなく、責任準備金を資産運用することで契約者に有利になるように増やしています。
この「予定利率」とは生命保険の契約者にある一定の運用利回りを約束する利回りの事です。
運用は国債、株式、債券、不動産などさまざまな方法で運用されています。
回答|マイナス金利の影響により、円建ての生命保険の…
マイナス金利の影響により、円建ての生命保険の積立利率は、超低金利もあり日本国債の利率に近い利率で推移しております。
その点、アメリカはアメリカ国債の利率が日本と比べて大幅に高くなっているので、当然、積立利率の差ができます。
また、この積立利率を簡単にイメージすると『保険を買う』表現になり、少しでも保険を安く買うには利率の高い保険を選ぶ事により『より安く・より大きい保険金額』が得られる事になります。
この利率のことを積立利率といい『積立利率=割引率』と言われております。
回答|米ドル建て保険のメリットの予定利率が高い…
米ドル建て保険のメリットは日本円建ての保険に比べて予定利率が高い事です。
例えば、円建ての予定利率は0.2%~1%程度になります。
その点、米ドル建ての予定利率は2%~3%程度になり予定利率だけで考えても大きな差があるのがわかります。
※2022年12月末現在
質問:円安が進行していますがドル建ての保険の場合…
円安が進行していますがドル建ての保険の場合って支払金額が変動するのでしょうか?
円安の場合や円高の場合など、どの様に保険料に違いが出るのかを詳しく知りたいです。
ドル建てが出来る保険の種類なども合わせて教えてください。基本的には外資系の保険会社が提供しているサービスなのでしょうか?
回答| ドル建ての保険の商品は2種類あり為替により支払保険料
ドル建ての保険の商品は2種類あり為替により支払保険料は変動するタイプと変動しないタイプがあります。
一般的に多いのは為替による変動するタイプが多いと思います。
まずここで保険加入時の為替レート1米ドル単位で計算して行きたいと思います。
まず、保険加入時の為替レートでみていきます。
為替リスクの例:保険料を円で払い込む場合
(例)年払い保険料が1万米ドルの場合
このように為替レートによって支払う保険料が大きく変わってきます。
契約時には、
1米ドルが100円で保険料が100万円、
2年目は、1米ドルが120円で保険料が120万円、
3年目は、1米ドルが80円で保険料が80万円、
4年目は、1米ドルが100円で保険料が100万円になります。
為替リスクの例:円で受け取る保険金額や解約金額の場合
(例)保険金額が10万米ドルの場合
このように為替レートによって保険金額や解約金額が大きく変わってきます。
解約時や保険金受取時には、
1米ドルが100円で保険金が1,000万円、
1米ドルが120円で保険金が1,200万円、
1米ドルが80円で保険金が800万円になります。
回答|ドル建てができる保険の種類は 米ドル建て終…
ドル建てができる保険の種類は 米ドル建て終身保険、米ドル建て養老保険、米ドル建て個人年金保険が主流な保険種類になります。
毎月支払う保険種類以外には、米ドル建て一時払い終身保険もあります。
回答|提供する保険会社は外資系企業が多い…
提供する保険会社は外資系企業が多く、米ドル建て終身保険や米ドル建て養老保険・米ドル建て個人年金保険を販売しております。
その理由は 外資系企業は主にアメリカ米ドルやアメリカ国債を多く保有していることによって、保有する米ドルを活用し日本向けに商品化して販売しております。
質問:ドル建ての保険料を払い済みの場合の円安・円高での…
ドル建てでの保険料を払い済みの場合の円安・円高でのリスクや得する場合などに関して教えて欲しいです。
ドル円が140円の時に年額を1年分支払った場合には130円になった場合と150円になった場合の違いを教えて欲しいです。
常に為替は変動していますが、月毎とか年間で為替の平均値を取るのでしょうか?
回答|ドル円が140円の時に年額を1年分支払った場合…
ドル円が140円の時に年額を1年分支払った場合には130円の場合は、1米ドルあたり、10円下がっている事になるので、1米ドルあたりマイナス10円になります。
回答|ドル円が130円の時に年額を1年分支払った場合…
ドル円が130円の時に年額を1年分支払った場合に150円になった場合は、1米ドルあたり、20円上がっている事になるので、1米ドルあたりプラス20円になります。
以下表を参考にしてください。
為替リスクの例:円で受け取る保険金額や解約金額の場合
(例)保険金額が10万米ドルの場合
このように為替レートによって保険金額や解約金額が大きく変わってきます。
回答|換算基準日は、加入している保険会社によって異なります。
円で支払う保険料の為替レートの換算基準日は、加入している保険会社によって異なります。
保険会社ごとに毎月1日の為替レートから 換算する保険会社や月の最終日での為替レートで 換算する会社とあり様々です。
ドル建て保険を加入検討する際は、月払いや年払いの支払い方法を決定する前に為替レート 換算基準日を保険会社や担当者に確認の上検討するとよいでしょう。
質問:ドル建ての保険を解約する場合の最適なタイミングとは…
ドル建ての保険を解約する場合の最適なタイミングとはあるのでしょうか?
支払方法などにより違いもあると思いますが、円安が進行している場合は一旦解約して再加入などを行った方が良いなどアドバイスがあれば教えて欲しいです。
円安が進行している場合は国内の円建ての保険が得な場合などあるのでしょうか?
回答|ドル建て保険を解約するタイミングは 加入した時…
ドル建て保険を解約するタイミングは、加入した時の設計書などを確認の上で解約を検討していただくことをお勧めします。
加入時の設計書の中に解約返戻率というページ欄があるかと思います。
また、払い込み保険料から解約金が目減りするかどうかの判断基準で回答します。
それは『解約返礼率100%以上』の時になります。
累計の支払い保険料から解約金を割った金額が解約返戻率になり払込保険料が全額戻って来る時に表記されるのは『解約返礼率100%』になります。
回答|ドル建て保険を解約する一番いいタイミングは…
ドル建ての保険を解約するタイミングに関しては解約返戻率が100%以上になるかが目安になります。
とはいえ、その後、解約返礼率が増加するような商品を持っている場合には、解約金を適切に使えるライフイベントの時に解約するのが良いかと思います。
回答|ドル建て保険を解約する一番いいタイミングは…
一番いいタイミングは加入した時より、円安になっている時になります。
ただ、加入直後などはそもそも解約返戻金が貯まっていないので、円安だから解約のタイミングとしてよいかというと一概には言えません。
●設計書の解約返礼率の確認
●支払い保険料の平均為替レートの確認
が必要になります。詳細情報を確認したいときは、保険会社や加入時の担当者に確認する事をお勧めいたします。
回答|ドル建て保険を解約は為替レートをしっかり…
ドル建て保険を解約するには、為替レートもあるので解約返戻金率が100%と同時に為替レートをしっかり確認した上で、その時の為替レートで解約返戻金を計算して解約金を求めることが必要になるかと思います。
正確に解約返戻金の率や解約金を求める際は 加入した生命保険会社に問い合わせをして詳細の解約返戻金を教えてもらった上で解約することをお勧めします。
回答|円安が進行した場合に一旦解約して再加入などの…
円安が進行した場合に一旦解約して再加入などの質問に関しては、一旦解約してしまうと全て契約が解約になります。
一旦解約する事を検討されたい方は、払い済み保険への変更を検討すると良いです。
払い済み保険とは、一旦保険料の支払いを停止する事です。
また、貯まっている解約返戻金はすべて残り、その後一生涯の終身保険に変わる仕組みになります。
回答|払い済みによる保険料の払い止めをするメリットは…
払い済みによる保険料の払い止めをするメリットは、以後の保険料の払込みをしないということです。
尚且つ貯まっていた解約返戻金をその後一生涯の保障が残り保障も解約金も残しながら継続し持つこともできます。
回答|払い済み保険のメリットは…
一旦停止やいったん解約を検討している方は、まずは払い済み保険を検討してはいかがでしょうか。
払い済み保険のメリットは、
●保険料の払い込みを停止できることと、
●溜まっている解約金をそのまま一生涯の保障を継続できる
また予定利率が良い商品によっては、払い済み保険変更後の解約返戻金の増加率が大幅に向上する保険商品もあるので、払い済み保険に変更する場合は保険会社に問い合わせをした上で手続きをしてください。
回答|再加入については、 お客様のデメリットになるこ…
再加入については、お客様のデメリットになることが多いため払い済み保険や一部減額をまず検討することをお勧めいたします。
また再加入の際には、告知書や健康診断結果が必要となり、再度0から手続きをする必要があります。
このことから体況が悪い場合には保険の加入ができない可能性もあるので、解約からの再加入については注意が必要になります。
回答|円安が進行している場合の 国内の生命保険会社で…
円安が進行している場合の国内の生命保険会社で検討する必要性については、ドル建て保険と円建て保険を比較していただける保険会社や保険代理店を選ぶことが必要になります。
予定利率が高いドル建て保険を選ぶことは、保険金を多く持てるメリットと解約返戻金が高いことにより返礼率の増加スピードが速く100%を超える期待もできるので、ドル建て保険はお勧めです。
ですが保険料の支払いが為替レートによって上がったり下がったりすることがデメリットになります。
この為替レートの変動リスクを了承できる方向けになるので、変動する事に不安に感じる方や為替リスクは負いたくない方は円建て保険を選ぶことも良いでしょう。
回答|円建て保険が得するということはなく…
円建て保険が得するということはなく、円建て保険は保険料支払いと保険金・解約金などの変動がない保険になります。
ドル建て保険は為替の上げ・下げがリスクとなり受け取れる死亡保険金や解約返戻金が円ベースでは確定してないことがデメリットになるので、加入される方の資産状況や払込できる能力または為替レートや変動リスクに理解をもてるか?持てないか?をもとに加入検討することをお勧めします。
質問:ドル建てに加入するのにお勧めの場合やお勧め出来ない…
ドル建てに加入するのにお勧めの場合やお勧め出来ない業種や家族構成はありますか?
円安でドル建ての保険に加入しようか正直迷っています。
ドル建てで保険に加入するのをお勧めする場合の独身なら、既婚ならなどあれば教えて欲しいです。
業種などにより違いがある場合も教えてください。
回答|ドル建て保険のお勧めやお勧めでない業種…
ドル建て保険のお勧めやお勧めでない業種を回答いたします。
お勧めの方は基本的に保険料が高くなる傾向にあるので保険料を継続的に支払える収入や将来の資産を持っている方にお勧めになります。
またお勧めでない業種の方は 収入が不安定な方や 保険料の支払いをなかなかできない方は不向きになり、逆に掛け捨ての保障を持っていただくことをお勧め致します。
回答| ドル建て保険のお勧めでない家族構成…
お勧めでない家族構成ということはありませんが、ドル建て保険は保障と貯蓄機能を兼ね備えた保険になるので、保険料をより安くしたい家族は不向きです。
また、ご家族の保障の優先順位によります。保険選びの優先順位とはライフプランや万が一時の必要保障額、老後の資金など優先順位をどの位置に持ってくるかによって変わります。
例えば、必要保障額が1億円になり、この1億円をドル建て終身保険で準備するようなことになると、支払い保険料が高額になるので現実的ではありません。
質問:ドル建て保険の年末調整や控除などはどうなるのでしょう…
普通に加入する保険とドル建て保険の年末調整や控除などはどうなるのでしょうか?
特別な年末調整や控除などがあるのでしょうか?ドル建ての場合に控除金額が多くなるとか、年末調整の手続きが面倒になる場合などがあるのでしょうか?
年末調整などが手間なら普通の保険に加入しようかと考えています。
回答|ドル建て保険の控除は生命保険料控除枠での控除範囲になります。
ドル建て保険の控除は生命保険料控除枠での控除範囲になります。
生命保険料控除の一般生命保険料控除の対象になります。またドル建て保険で生命保険料控除額が多くなることはなく、一般の生命保険料控除の申請と同様の手続きが必要になります。
このことからもドル建て保険も一般の生命保険と同様に年末調整の必要があるので、手間が変わらないドル建て保険の加入を検討しても良いかと思います。