新築一戸建ての火災保険を比較|保険料を安くする方法や地震保険は地域によって違う?の質問にプロが回答します。

新築であろうと中古であろうと、戸建て住宅を購入する際、ほとんどの人が火災保険に加入します。
大切な住宅を、自然災害によって被った損害を経済的に補償するのがその目的です。
そんな火災保険ですが、保険会社ごとに特徴があり、補償内容・保険料は一律ではありません。
今回の記事では、損害保険に現役で携わっている筆者の視点から見た、火災保険の保険料の仕組みについて解説します。
保険料の相場も、実際の提案に使用した例を駆使して説明したいと思います。
目次
火災保険とは
まずは火災保険とは何なのか、その概要について説明します。
火災保険とは、大切なお住まいが自然災害等の外的な原因によって被ってしまった損害に対して、経済的に補償するものです。
現場でお客様とお話をしていると、「火災」保険という名称から、火事の場合にしか補償されないと思っていた、という話をよく耳にします。
火災保険の補償内容は筆者が思っている以上に浸透していないと感じました。実際には火災だけでなく、台風等といった風災、河川の氾濫やゲリラ豪雨による水害、空き巣被害等、非常に多くの損害に対して補償対象としてくれるのです。
ただし、注意すべき点があります。地震を原因とする損害は火災保険では補償対象外という点です。
この部分は地震保険の守備範囲になるのです。
たとえば、火災によって自宅建物が焼失してしまった場合でも、火災のそもそもの原因が地震によるものである場合は、火災保険では補償されないのです。
火災保険の保険料は何で決まる?
そもそも火災保険の保険料はどういった要素で決まるのでしょう。
広い家だとなんとなく保険料も高そうだなと想像できますが、必ずしもそれだけではありません。
戸建て住宅を例にして、保険料が決まる上での必須の要素5点について解説します。
建物の構造
まずは建物の構造です。先にマンションの場合の構造級別について説明します。
下記の分類をご確認ください。
・M構造・・・コンクリート造り
・T構造・・・鉄骨造り
・H構造・・・木造等、非耐火構造
保険料はコンクリート造りが安く、鉄骨造り、非耐火構造となるにしたがって段々と高くなっていきます。
一方で戸建て住宅の場合、主に木造建築物が一般的ですが、火災が発生した際に、同じ木造でも燃えにくいかどうかで下記のような分類がされています。
・耐火建築物(※1)
・準耐火建築物(※2)
・省令準耐火建築物(※3)
(※1)建築物の特定主要構造部(柱・梁・床・屋根・階段)に耐火被覆がほどこされた建築物。
(※2)建築物の特定主要構造部に準耐火性能のある被覆がほどこされた建築物。
(※3)住宅金融支援機構が定める仕様に合致する建築物。具体的には外壁及び軒裏が防火構造である等、一定の要件を満たす必要がある。
木造でも上記のように耐火等の建築物に該当することが建築確認資料等で確認できれば、T構造の保険料率を適用することができます。
耐火等の建築物に該当しない、根拠資料の提出がない場合はH構造となり、火災保険料率は建物の構造において一番高いものが適用されるのです。
建物の面積
この項の冒頭でも触れましたが、建物の広さ(面積)も当然保険料決定の必須の要素のひとつです。
なぜなら建物の広さによって建物の評価額が決まるからです。広い建物ほど評価額は高く見積もられます。
なお、建物の広さは登記簿謄本や建築確認書類によって算出することになります。
現地で実測するといったことはほぼありません。
保険金額
火災保険の保険料は、設定する保険金額に対して保険料率を乗じることで算出します。
保険料を決める直接の要素は保険金額になります。
建物の構造、面積といった要素が、適正な保険金額設定のために必要となる、という仕組みです。
なお、保険金額を設定する際、建物の構造、面積に応じて算出された参考の評価額の、上下30%以内に設定するという取り扱いが一般的です。
保険会社によっては、参考評価額の上限30%を超える設定はそもそもできなかったり、下限30%を下回ると保険料が割高になったりと、取り扱いが異なります。
30%の範囲を超えての設定を検討する場合は必ず保険会社に確認しておきましょう。
補償範囲
補償範囲の設定も保険料を決めるうえで当然かかわってきます。
火災保険は保険契約者のニーズによって、ある程度自由に補償範囲を設定することができます。
火災保険の補償範囲は主に下記となります。
②風災・雹災・雪災
③盗難
④建物外部からの物体の落下、飛来、衝突等
⑤給排水設備の事故による水濡れ
⑥騒擾、労働争議に伴う暴力・破壊行為
⑦水災
上記はA損害補保険会社の火災保険の補償内容を例示しました。
保険会社によって細かい差異はあるものの、概ね上記のような補償内容となります。
①~⑦すべてを補償範囲とすれば保険料は高くなりますが、最低限の補償(①②の補償を最低限の補償としている保険会社が一般的です)にすれば、その分保険料は安くなります。
余談ですが、筆者が以前火災保険の提案をしたお客様の中で、補償範囲は最低限に抑えて保険料を少しでも安くしたいというニーズの方がいらっしゃいました。
②の風災すら不要だということで、保険会社を探したところ、某損害保険会社の火災保険で、①のみの補償内容の設定が可能であることがわかりました。
その旨をお客様に伝えたうえで、最低限①②だけでも補償しておいた方が良いとの説得をしたものの、結局当初の意向通り①のみで契約されました。
数年後、そのお客様は建物に台風による損害を受けられました。損害対応に関し、相談があったもののどうにもできず、当然保険金を支払うことはできませんでした。
お客様の意向を満たす提案ももちろん大切ですが、補償の重要さを理解してもらうことも同様に大切だと感じました。
保険期間
保険期間を長期にすればするほど保険料は高くなることは感覚的にわかるかと思います。
ただし無制限に長く設定することはできません。保険期間は1~5年で設定する必要があります。
以前、火災保険は最長で36年間の設定ができました。
住宅ローンを35年で組んで、その期間に合わせて火災保険も長期で付保することが比較的一般的でした。
しかし近年では、台風に代表される自然災害が激増し、保険会社の保険金支払額も比例して激増したことで、保険会社もリスクを予測することが難しくなってきました。
そのような状況から、2015年10月以降は最長でも10年、2022年10月以降は最長で5年と改定されました。
今後もこのような傾向が続くことが予想され、火災保険の引き受けの制限がかかる日がくるかもしれません。
地震保険料は何で決まる?
火災保険を解説する上で地震保険に触れないわけにはいきません。
ここでは地震保険の保険料が決まる要素について解説します。
都道府県・構造
地震保険の保険料率は都道府県ごとに定められています。
総じて地震の発生頻度の高い地域は料率が高く、発生頻度の低い地域は低い傾向にあります。
なお、地震保険においても建築物の構造に応じて料率が設定されていますが、火災保険における構造の分類とは異なります。具体的には下記の分類となります。
・イ構造・・・耐火性能を有する建物および準耐火性能を有する建物
・ロ構造・・・イ構造以外の建物
保険金額
地震保険においても、火災保険同様、保険金額に地震保険料率を乗じることで地震保険料を算出します。
なお、地震保険金額の設定額は火災保険金額の50%が上限となります(地震保険は火災保険とセットでないと加入できません)。
割引の有無
地震保険は建物の建築年月や耐震構造に応じた割引があります。
代表的な割引を下記に紹介します。
なお、割引を適用するには建築確認資料等、根拠資料の提出が必須です。
・免震建築物割引・・・免震建築物と評価されると50%の割引が適用される。
・耐震等級割引・・・耐震等級が1~3に該当すると最大50%の割引が適用される。
・耐震診断割引・・・耐震診断または耐震改修により、建築基準法に定める現行耐震基準に合致していることが証明されると、10%の割引が適用される。
・建築年割引・・・1981年6月1日以後に新築された建物に10%の割引が適用される。
参考:地震保険料はどこも同じ
地震保険料は火災保険とセットでないと加入できないことは先ほど触れたとおりです。
火災保険料は保険会社によって差があるものの、地震保険料は付保条件が同じであれば、どこの保険会社で加入しても保険料は変わりません。
保険会社の負う地震保険の責任の一部を、政府が再保険により引き受ける、いわゆる保険会社と国との共同運営の形式で成り立っているからです。
保険料を抑えるための工夫
火災保険料の仕組みがわかったところで、保険料を抑えるための工夫について解説していきたいと思います。
長期契約にする
現在、火災保険は最長で5年間の設定が可能となっています。
長期契約にすると長期による割引が適用されます。
ここ数年は頻繁に火災保険の料率改定(実質値上げ)が実施されているので、長期契約にすることで値上げの影響を多少は先延ばしにすることができます。
補償範囲をしっかり選別する
お住まいの地域のハザードマップを確認することは、補償内容を検討する上で非常に重要です。
お住まいの地域の特性を調べたうえで、不要と思う補償は思い切って外すことも保険料合理化のひとつの方法です。
その他、付帯する特約についても検討してみましょう。
たとえば「個人賠償責任補償特約」は、自動車保険や傷害保険等、ご自身の他の保険契約で付保されていれば、わざわざ火災保険で付保する必要はありません。
補償内容が重複してしまうからです。特約保険料自体、それほど高いものではありませんが、こういった小さな積み重ねが保険料を少しでも安くする上で重要になります。
複数社で見積もりをとる
火災保険に限らず、保険の加入を検討する上で一番重要なのが、必ず複数社で見積もりをとることです。
下記に筆者が実際に提案に使用した見積もりを参考資料として紹介します。
保険期間:5年間
建物の構造:H構造
建物保険金額:1,060万円
地震保険金額:530万円
火災:〇
落雷:〇
破裂・爆発:〇
風災・ひょう災・雪災:〇
水災:〇
盗難:〇
外部からの物体の衝突:〇
水濡れ:〇
破損・汚損等:〇
長期一括払保険料
長期一括払保険料
A保険会社:156,220円
B保険会社:173,540円
C保険会社:185,030円
1年あたり保険料
1年あたり保険料
A保険会社:31,244円
B保険会社:34,708円
C保険会社:37,006円
保険料比較結果:156,220円/5年(31,244円/1年あたり)
→長期一括払保険料:A保険会社:156,220円
→1年あたり保険料:A保険会社:31,244円
上記のように同じ補償内容で比較しても保険料に差が出るのです。
最低でも3社程度で見積もりをとって比較検討するようにしましょう。
Q&A:火災保険に関連した質問と、それに対する回答
最期に、火災保険に関連した質問と、それに対する回答をいくつか紹介したいと思います。火災保険のお手続きの際にお客様から多くの質問をいただきますが、保険料に関する質問は非常に多いです。今回はその一部ではありますが、紹介させていただきます。
質問①:保険料を安く抑えるにはどうしたらいいですか?
初めまして、火災保険のことで質問させてください。先日、分譲マンションの一室を購入しました。
5階建てマンションの5階です。一応万が一のときのために、火災保険に火災保険には入っておこうと思うのですが、思っていたよりも高くてびっくりしました。
火災保険を少しでも安くする方法があれば教えてほしいです。
回答|保険料を安くするにあたっては、「適切な補償を確保しながら、無駄を省く」が大切です。
火災保険の保険料を抑えるためには、いくつかの工夫や選択肢を意識することが重要です。ただ単に保険料を安くするというのであれば、いくらでも方法はあります。
ただ、何の考えもなしに安くしてしまっては、それこそ「安かろう悪かろう」となってしまう恐れがあります。
そうなると、保険の本来の価値である補償が制限される可能性もあり、はっきり言って意味がありません。
自分の住まいや生活スタイルに合った補償内容を適切に選ぶということが、無駄な出費を防ぎながらも必要なリスクに備えるための重要なポイントとなります。
以下に6つのポイントに分けて、具体的な方法を詳しく説明します。
補償内容を必要最小限に絞る
火災保険は、火災だけでなく、「落雷」「爆発」「風災」「水災」「盗難」「破損」など、さまざまな自然災害や事故による経済的損失に備えることができる仕組みとなっています。
しかし、すべての補償をカバーしようと思うと、それだけ保険料も高額になります。
そこで、自分の住まいの特性や地域特有のリスク等を考慮して、思い切って必要のない補償を外すことで保険料を大幅に抑えることが可能です。
たとえば、下記のような観点で考えてみましょう。
・高台にある住宅なら「水災」のリスクが低いため、水災補償を外しても良いのでは?
・オートロック等、セキュリティがしっかりしているマンションでは、「盗難」リスクが低くなる。
・持ち家ではなく賃貸住宅の場合、建物補償は不要で家財補償のみでよい。
質問者様に関して言うと、5階建てマンションの5階にお住まいということなので、「水災」補償は不要と考えて良いでしょう。
このように、お住まいの特性に合わせて補償を取捨選択することで、保険料削減を実現することができます。
※ただし、補償を外すとそのリスクに対して無保険になるため、慎重に判断しましょう。
建物構造に応じた割引を活用する
火災保険では建物の構造によって保険料が大きく変わります。耐火性能の高い建物は火災リスクが低いため、保険料が安く設定されています。
火災保険料の料率は下記の3つの区分で設定されています。
・M構造(マンション構造):鉄筋コンクリート造等、耐火性のある素材で作られている建物。保険料が最も安い。
・T構造(耐火・省令準耐火構造):鉄骨造の就業住宅等に適用。なお、木造でも一定の基準を満たしていればT構造が適用されます。保険料はH構造より安く、M構造より高い。
・H構造(M、T構造以外のもの):耐火性に関する基準を満たさないもの。火災リスクが高く、保険料は高い。
特に注意したいのが「省令準耐火構造」です。本来はH構造が適用される一戸建て住宅でも、一定の基準を満たすことで「省令準耐火構造」と認定され、火災保険料の算出面でもT構造として扱われます。
H構造と比較すると保険料が半額近くになることもあります。住宅メーカーや施工会社に「省令準耐火に該当するかどうか」を確認しておきましょう。
なお、M構造やT構造を適用して、安い保険料での算出を得るためには、火災保険の申し込みの際に根拠資料が必要となります。
建物の登記簿謄本や施工会社が発行する証明書類ふ等が根拠資料の代表例です。安い保険料率の適用を受けるためには、事前に施工会社に確認する等、しっかり準備しておきましょう。
契約期間を長期にする(長期一括払い)
保険を1年ごとに更新するよりも、保険期間を5年などの長期契約にして、保険料も一括で支払う方が、トータルの支払保険料は割安になります。
特に一括払いにすることで数%~10%近くの割引が適用される保険会社もあります。
実は火災保険は2015年10月まで、保険期間を最長で35年で設計することができていました。多くの方が住宅ローンの期間に合わせて火災保険も設計していたのです。
しかし2015年10月の改定で最長10年に、2022年10月の改定で最長5年の取り扱いとなりました。
このような改定となった主な要因は、自然災害の増加による保険金支払金額の増加が挙げられます。
今後もこのような傾向は続くことが見込まれますので、長期契約できるときにやっておくことがおすすめです。
自己負担額(免責金額)を高めに設定する
火災保険では「免責金額(自己負担額)」を設定することができます。これは、万が一保険を使う事態になった際に、契約者が自分で負担する金額です。
たとえば免責金額を「0円」に設定すると、認定された損額額をそのまま保険金として受け取ることができますが、その分保険料は高くなります。
一方で、免責金額を「5万円」や「10万円」に設定すると、設定した免責金額以下の軽微な損害については自己負担となりますが、その分保険料は抑えることができます。
小損害については自己資金で賄おうという考えの方は、免責金額の設定がおすすめです。
保険会社を比較して選ぶ
火災保険は同じ補償内容でも、保険会社によって保険料が大きく異なる場合があります。
その根拠は、保険会社各社がリスク評価や保険料の料率設定を独自に行っているためです。
したがって、複数の保険会社から見積もりを取り比較検討することが非常に重要です。
最近では、インターネット上で一括見積もりができるサービスも充実しており、簡単に複数社のプランを比較することができます。
また、「Web申込割引」や「無事故割引」など、保険会社各社で独自の割引制度が取り扱われていることもあります。
そのような割引制度を活用することでさらに安くなります。
家財の保険金額を適切に設定する
火災保険では建物だけでなく、家財(家具、家電、衣類など)も補償対象に含めることができます。建物と同様、家財についても保険金額を必要以上に高く設定しすぎると、無駄に保険料が上がってしまいます。
たとえば、1人暮らしであれば500万円も補償は必要ないかもしれません。逆に大家族で高額な家財を多数所有している場合は、逆に不足するかもしれません。
適正な補償額を把握し、無駄のない保険金額設定を心がけましょう。
以上、6つのポイントで解説しましたが、保険料を安くするということだけが目的となってしまうと、本来は必要な補償を外すことにもなってしまい、いざというときに困ることもあります。基本的な考え方として、「適切な補償を確保しながら、無駄を省く」ということが最も重要です。
火災保険は大切な住まいと家族を守るためのものなので、自分に最適な内容を見極めて選ぶようにしましょう。
質問②:なぜ同じ建物なのに保険料が違うということがあるのですか?
先日、新築一戸建ての物件を購入しました。引き渡しはまだですが、引き渡しまでには火災保険を契約しようと思い、現在いくつかの保険会社で見積もりをとっています。
そこで質問なのですが、建物は同じなのにどうして保険料が保険会社で違うのでしょうか?
安い方が良いので安い保険会社を選ぶと、予想していなかった落とし穴に落ちてしまいそうで怖かったので、質問させていただきました。
回答|一見して同じでも、細かい部分で差があります。
質問者様が疑問に思われる通り、一見すると「同じ建物、同じ構造、同じ補償内容」であれば、火災保険の保険料も同じになるはずだと思われますよね。
筆者もお客様に火災保険の提案や説明をする際に、そのようなご質問をいただくことは非常に多いです。
しかし実際には、一見すると「同じ建物・同じ構造・同じ補償内容」であっても、保険料が異なることは珍しくありません。
これは、保険料の算定が非常に多くの要素に基づいており、その組み合わせ次第で金額に差が出るためです。以下では、その要因を詳しく解説していきます。
保険会社ごとの料率(リスク評価)が異なるため
保険料は、保険会社各社が独自に設定している「料率」に基づいて計算されます。
この料率とは、災害や事故が起きるリスクを統計的に分析し、そのリスクに応じて設定される数値のことです。
たとえば、火災や風災によって保険金の支払件数が多かった保険会社は、料率の設定を高くしたり、耐火性能の高い建物の料率は低くしたりと調整します。
このように、保険会社によって、同じ地域・同じ構造でもリスク評価の基準が異なるため、保険料に差が生じます。つまり、「同じ建物」でも、A社では15万円、B社では18万円といった違いが出ることは十分にあり得るのです。
補償内容の細かい部分が異なるため
契約者自身は同じ補償内容だと思っていても、実際には細かい違いがあるケースがあります。
以下の例をみてください。
・水災補償が「全額補償」か「一部制限あり」か
・風災補償が免責の設定になっているか、20万円フランチャイズの設定になっているか(※)
・破損・汚損補償が付いているかどうか
・地震火災費用特約や臨時費用特約の有無と補償限度額
これらはパッと見ただけでは気づきにくいのですが、実は保険料に大きな差をもたらす要因となっています。
【※免責金額と20万円フランチャイズ方式の違い】
免責金額の場合、損害額から免責金額を差し引いた額が保険金として支払われるのに対し、20万円フランチャイズの場合、損害額が20万円を超えたら全額が保険金として支払われます。
ただし、20万円を超えない場合は支払保険金は0円です。
契約条件(期間や支払い方法)が異なるため
火災保険は、契約の期間や保険料の支払い方法によって保険料が変動します。具体的には下記の通りです。
【契約期間】
1年ごとの契約よりも、5年などの長期契約にした方が割引が適用され、年間あたりの保険料は安くなります。
【支払い方法】
月払いよりも年払い、年払いよりも長期一括払いの方が保険料支払額が安くなります。
そのため、建物の条件がまったく同じでも、「5年一括払いで契約した人」と「1年ごとの更新で契約している人」とでは、支払保険料の総額に大きく差が出ます。
特約の有無と内容の差
火災保険では基本補償に加えて、特約(オプション)を自由に追加できる場合があります。
以下のような特約が付いているかどうか、またその内容によっても保険料は変わります。
・地震保険(建物・家財)
・臨時費用補償特約
・類焼損害補償特約
・個人賠償責任補償特約
・借家人賠償責任補償特約(賃貸物件の場合)
これらの特約は一見目立たない存在ですが、付帯していれば保険料に上乗せされるため、同じように見えてもトータルの金額に差が生じます。
家財の保険金額と評価の違い
建物は同じでも、家財の内容は契約者によって異なります。
たとえば、同じ間取り・築年数の住宅に住んでいても、家族人数が異なれば家財の量や価値も異なるため、家財保険の保険金額にも差が出ます。
以下の事例を考えてみてください。
Aさん:家財保険800万円(4人家族で家電・家具が比較的多い)
Bさん:家財保険300万円(1人暮らしで最低限の生活用品)
これだけでも保険料に数千円〜数万円の差が出ることがあります。
割引制度の適用有無
火災保険では、保険会社が独自に設定している割引制度が適用される場合があります。以下に、いくつかユニークな割引例を紹介します。
・インターネット申込割引
・オール電化住宅割引
・ホームセキュリティ設備割引(SECOMやALSOK導入済など)
・ノークレーム割引(無事故継続契約)
・ノンスモーカー割引
このような割引が適用されるかどうかで、保険料に最大10~20%ほどの差が出るケースもあります。
割引制度は保険会社ごとに異なり、同じ建物であっても条件が揃わなければ適用されません。
以上に解説したように、一見すると「同じ建物、同じ構造、同じ補償内容」に思えるものでも、細かい部分で差があるのです。
火災保険の保険料は一見複雑に見えるかもしれませんが、こうした違いを理解することで「なぜ差が出るのか」「どうすれば納得できる保険を選べるのか」が明確になります。実際に契約する際は、複数の見積もりを取り、補償内容と保険料のバランスをよく比較することが重要です。
質問③:火災保険の見直しはどのタイミングですればいい?
火災保険の見直しのタイミングについて質問させてください。よく保険は定期的な見直しが必要と聞くのですが、見直しすべきタイミングがよくわかりません。
ある一定の年数が経ったら見直すのか、何か大きな出来事があったら見直すのか、そのあたりのアドバイスをいただきたいです。
回答|見直しのタイミングは、ライフスタイルや住環境に変化が生じたときです
火災保険は一度加入すると、多くの方がそのまま契約を続けてしまいがちです。
ご質問に対する回答として、結論を先に言うと、ライフスタイルや住環境の変化に合わせて、定期的に見直すことが非常に大切です。
火災保険の補償内容や保険料は、契約当初の状況をもとに設計されていますが、数年経つとライフスタイルや住環境の変化が生じることがあり、それに応じて補償に対する考え方も変化します。
そうなると補償が「不足している」「過剰になっている」「無駄がある」といった問題が発生している可能性があります。
以下に、火災保険の見直しをおすすめする代表的なタイミングを詳しく解説します。
保険の契約更新時(満期が近づいたとき)
火災保険には契約期間があり、通常は1年~5年の範囲で設定されています。
特に長期契約の場合、満期を迎える頃には住宅の状態や生活状況が大きく変わっているということもあります。
【見直しのポイント】
・建物の評価額や再建費用は変わっていないか?
・家財の増減があったか?
・付帯している補償や特約が現状に合っているか?
・保険料が他社と比べて割高になっていないか?
満期更新時は、新しい保険に切り替える絶好のタイミングです。複数の見積もりを取り、補償内容と保険料を比較検討しましょう。
引っ越しや住宅の購入・建て替えをしたとき
住環境が変わるということは、住まいを取り巻くリスクや、そのリスクに対応した保険の必要性も変わるということです。
たとえば、マンションから戸建てに引っ越したり、木造住宅から鉄筋コンクリート造の家に建て替えたりした場合、それに応じた補償内容に切り替える必要があります。
【注意点】
・建物構造(H構造/T構造/M構造)によって保険料が大きく異なる。
・地域によって水災や風災のリスクが違うため、補償の取捨選択が重要。
・新築一戸建ての場合、「省令準耐火構造」なら割引の対象になることが多い。
新居の状況に最適化した火災保険に加入し直すことは、保険料の合理化にもつながります。
家財が大きく変わったとき(増えた・減った)
家具や家電、パソコン、趣味の道具などの家財は、生活の中で増減があります。特に結婚・出産・転職・子どもの独立などライフステージの変化があった場合、家財の総額が大きく変動することがあります。
【見直しの例】
・高額な家電(例:65インチテレビ、ゲーミングPC)を購入した
・骨董品や美術品の収集を始めた
・子どもの独立で家財が減った
・セカンドハウスの家財補償が必要になった
家財の補償が少なすぎると、損害時に十分な補償を受けることができません。逆に多すぎると無駄な保険料を払っていることになります。
適切な補償額に設定する必要があります。
自然災害の増加や地震・水災リスクの意識が高まったとき
近年、台風や集中豪雨、地震といった自然災害の頻度は増加傾向にあります。それに伴い、自分が住む地域のリスクを再認識し、これまで必要ないと思っていた補償についても改めて見直すケースが増えています。
【具体例】
・過去には水災補償を外していたが、近所で浸水被害があった。
・地震保険に加入していなかったが、大地震の頻発で不安になった。
こうしたリスク認識の変化をきっかけに、補償内容を再確認することは非常に重要です。
保険制度や商品内容が改定されたとき
保険業界は、国の制度改正や災害発生の傾向などに応じて保険商品の内容や仕組みを見直すことがあります。
特に2022年の制度改正では、長期契約の最長期間が10年から5年に短縮されるなど、大きな変更がありました。
【変更例】
・一部の特約が新設された
・保険料率が改定され、値上がりした
・補償内容の選択肢が増えた(より柔軟な設計が可能に)
こうしたタイミングで、自分の契約が今の制度・商品と比べてどうなのかを確認し、より合理的な保険への乗り換えを検討する価値があります。
保険料が家計の負担に感じるようになったとき
住環境や家族構成の変化に伴って生活費や支出が増えると、保険料が負担に感じられることもあるでしょう。
そんなときは、必要最低限度の補償を維持しつつも、無駄な部分を削る工夫が必要です。
【見直しの方法】
・不要な特約を外す
・補償範囲を絞る(例:水災補償なしにする)
・契約期間を長期化して、長期割引を活用する
・免責金額を設定する
・他社に乗り換えて保険料を比較
保険を見直すことで、家計にゆとりを生み出すことも可能です。
以上に解説したようなタイミングで保険を見直すことで、その時々に合わせた補償内容に設計することが重要です。
最後に、火災保険は「万が一の備え」であると同時に、長期的に見ると数十万円単位の支出にもなる、重要な支出項目です。
そのため、ライフステージの変化や社会情勢の変化に合わせて、定期的に見直しを行うことが望ましいです。
少なくとも3~5年に1度は、契約内容を見直す機会を設けるようにしましょう。
質問④:地震保険の保険料は地域によって違うのはなぜ?
地震保険についての質問です。これまで地震保険には加入していなかったのですが、ここ数年で全国各地で大きな地震が発生しているので、加入を検討しています。
もちろん火災保険には入っています。そこで地震保険の保険料について疑問なのですが、地域によって保険料が違うのはなぜでしょうか?
地震保険の補償内容は理解できるのですが、保険料の地域差だけイマイチその理由がわかりません。ぜひ教えてください。
回答|地震保険料率は、地域ごとの地震発生リスクの科学的評価に基づいて算出します。
地震保険の保険料が地域によって異なる最大の理由は、地域ごとの「地震リスクの違い」に基づいて保険料率が設定されているからです。
これは、将来その地域で地震が起きる可能性や、起きた場合の被害の大きさなどを科学的に分析し、それに応じた「公平な負担」を求めるための制度設計です。
以下では、その背景やしくみを詳しく解説していきます。
地震保険は「政府と民間」の共同制度
まず理解しておきたいのは、地震保険は火災保険と違い、民間の保険会社だけで運営されている保険ではないということです。
地震保険は大規模災害への対応を目的とした「公共性の高い制度」ということもあり、政府と損害保険会社が共同で運営しています。
この制度のもとでは、保険料や補償内容の大部分が国によって規定されており、全国の保険会社が共通の保険料率表を使っています。
そのため、どの保険会社で契約しても、補償条件が同じであれば保険料に差は生じません。
地域ごとの保険料の違い=地震発生リスクの差
では、なぜ保険料面で地域差が出てしまうのでしょうか?それは、地域ごとに地震の発生可能性や震度の強さが異なるためです。
日本は世界でも有数の地震多発国であり、その中でも特に以下のような地域では過去にも繰り返し大地震が起きており、将来の地震発生も高い確率で予想されています。
【具体例】
・静岡県・愛知県・和歌山県・高知県など:南海トラフ地震のリスクが高い
・宮城県・福島県・茨城県など:東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響地域
・東京都・神奈川県など:首都直下地震が懸念されるエリア
これらの地域では、将来の地震発生確率が他の地域よりも高いため、保険会社が将来支払うことになる保険金のリスクも高いと見なされます。結果として、こうした高リスク地域では地震保険料率が高く設定されており、保険料も高くなるのです。
保険料率の根拠:専門機関の科学的データに基づく
保険料率は「地震保険に関する基本指針」に基づいて、損害保険料率算出機構が作成したデータを使用して算出されます。
具体的には、以下のような公的データ・研究が使われます。
・地震調査研究推進本部(文部科学省)
・気象庁の地震発生統計
・活断層分布の調査
・地盤のゆれやすさ(地盤増幅率)
・建物倒壊の可能性
このように、非常に緻密で科学的なリスク分析をもとに、全国を「保険料率区分」に分類しています。
保険料率区分の仕組み
現在、地震保険の保険料率は都道府県単位で分けられており、さらに建物の構造ごとに下記の2区分に分かれています。
・イ構造・・・主として鉄骨・コンクリート造建物等
・ロ構造・・・主として木造建物等
都道府県、構造ごとの具体的な保険料は下記のようになります。
保険金額1,000万円あたりの年間保険料(単位:円)
都道府県 | イ構造 | ロ構造 |
---|---|---|
北海道 | 7,300 | 11,200 |
宮城県 | 11,600 | 19,500 |
東京都 | 27,500 | 41,100 |
神奈川県 | 27,500 | 41,100 |
千葉県 | 27,500 | 41,100 |
埼玉県 | 26,500 | 41,100 |
愛知県 | 11,600 | 19,500 |
静岡県 | 27,500 | 41,100 |
京都府 | 7,300 | 11,200 |
大阪府 | 11,600 | 19,500 |
広島県 | 7,300 | 11,200 |
愛媛県 | 11,600 | 19,500 |
福岡県 | 7,300 | 11,200 |
沖縄県 | 11,600 | 19,500 |
※財務省HP 地震保険の基本料率(令和4年10月1日以降保険始期の地震保険契約)より抜粋
※実際の保険料は割引適用の有無や保険期間によって異なります。
このように、同じ建物構造でも地域によって保険料が2倍以上違うこともあります。
「公平な負担」としての地域差
このような地域ごとの保険料差は、「地震が来るかどうかは運次第」と考えると不公平に感じるかもしれません。
しかし、地震保険は多数の契約者が公平にリスクに応じた保険料を負担することによって制度が成り立っているため、地震リスクの高い地域に住む人ほど、より高い保険料を負担する設計となっています。
これは、交通事故リスクが高い人が自動車保険料が高くなるのと同様の考え方です。
将来的に保険料が変わる可能性もある
地域の地震リスク評価は定期的に見直されています。そのため、将来の調査や制度改定によって、料率が引き上げられる地域・引き下げられる地域が出てくる可能性もあるという点は押さえておきましょう。
たとえば、近年では南海トラフ地震や首都直下地震の可能性が改めて強調されたことにより、東海・東南海地域や首都圏の料率が見直された事例もあります。
ここまで地震保険の制度の仕組みや背景を解説してきましたが、地震保険の保険料が地域によって違うのは、地震発生リスクの科学的評価に基づいて、地域ごとの「保険料率」が設定されていることが大きな要因です。
これは、地震保険制度が、万が一の災害時に多くの人が公平に補償を受けられるようにするための、持続可能かつ合理的な制度設計である必要があるからです。
地震が起きる頻度や被害の大きさは地域によって異なるため、保険料もそれに見合った形で差があるのは、制度の健全性を保つうえで欠かせない仕組みだということになります。
まとめ
今回の記事では、火災保険の保険料が決まる仕組みを、戸建て住宅を例にして解説しました。
保険料の仕組みを理解することは、補償内容を見直し、保険料を安くする上で非常に役に立ちます。
そして、実際に加入を検討する際には必ず複数社で見積もりをとることが重要です。
詳しい補償内容については保険会社に確認した上で検討するようにしましょう。
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