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2024.11.27

業務災害事故!建築業での損害賠償保険金支払い30例を一挙公開

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著者情報 森 逸行 FP歴15年 経験した事を伝え解決に導く『金融パーソナルトレーナー』

業務災害事故!建築業で実際にあった損害賠償保険金支払い30例を一挙公

  建設業は他の業種と比べ業務中にケガを負ってしまうリスクが非常に高い業種です。

労災保険率で比較すると、金融業、保険業又は不動産業の2.5/1,000に対し、建設業(水力発電施設、ずい道等新設事業)は34/1,000と実に15倍もの開きがあります。(厚生労働省HP 令和6年度の労災保険率について より抜粋)

まさに建設業における労働災害のリスクの高さを物語っています。

今回の記事では、業務災害を被ったときに、会社や労働者にとって経済的に大きな助けとなる業務災害保険について解説し、実際の業務災害事故の事例を紹介したいと思います。 

目次

業務災害とは

そもそも業務災害とは何を指すのでしょう。 

業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。

業務が原因となった災害ということであり、業務と傷病等との間に一定の因果関係があることをいいます。(※厚生労働省 東京労働局 業務災害について より抜粋) 

業務災害の認定について

業務災害として認定されるには、「業務遂行性」、「業務起因性」の2つの要件を満たす必要があります。 

 ・「業務遂行性」・・・労働者が会社(事業主)の管理下にある状態の傷病であること

 ・「業務起因性」・・・会社(事業主)が労働者にさせていた業務が原因の傷病であること

 たとえば建設作業現場において、足場を組んでいる際に高層の足場から転落し、足を骨折してしまった、という事例があったとします。

このような事例であれば、業務と傷病との因果関係は明確で、上記2つの要件を満たし、業務災害の認定は得られるでしょう。 

業務災害の認定が難しいケース

作業中の事故であれば業務災害の認定に問題は発生しませんが、仮に休憩中における傷病の発生となると話が変わってきます。

なぜなら休憩中は労働者は基本的に会社の管理下から離れて自由に過ごすことが、労働基準法で定められているからです。 

使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

(※e-GOV法令検索 労働基準法第三十四条(休憩)第三項 より抜粋)

 この場合、業務災害に該当するか否かは休憩時間中の事故という外形ではなく、実体で判断されることになります。

たとえば休憩時間中に昼食を食べている状況であっても、それが建設作業現場の管理監督者と、工事の進行についての打ち合わせを兼ねたものであれば、業務災害とされます。

一方で、休憩時間中に作業現場を離れて近くの公園でサッカーをしていたところ、足を捻挫した等といった状況であれば、基本的に業務遂行性がないと判断されます。

いずれにしても、事業主としては業務災害の発生によって生ずる費用負担に備えてしかるべき準備をしておくことは重要です。 

業務災害事故!建築業で実際にあった損害賠償保険金支払い30例を一挙公-2

業務災害補償保険とは?

業務災害によって生じる費用負担に備える保険として最適なのが業務災害補償保険です。

某大手損害保険会社では、業務災害補償保険の概要を下記のように記載しています。 

『従業員の業務上の災害にかかわる各種費用の支出・損害賠償責任リスクをニーズに合わせた補償でしっかりカバーする保険』 

それでは業務災害補償保険の特徴を、各ポイントごとに詳しく解説していきたいと思います。

補償内容が幅広い(主契約のみ)

業務采配補償保険は、どこの保険会社で販売している商品も非常に補償内容が幅広く、手厚いのが特徴です。

基本補償として下記のようなものが用意されています。 

死亡補償保険金

事故日からその日を含めて180日以内に死亡した場合に支払われる保険金。

後遺障害保険金

事故日からその日を含めて180日以内に後遺障害が発生した場合に支払われる保険金。

入院補償保険金

事故による傷病で入院した場合、180日を限度に入院日数に応じた保険金が支払われる。

手術補償保険金

事故日からその日を含めて180日以内に手術を受けた場合に支払われる保険金。

通院補償保険金

事故による傷病で通院した場合、90日を限度に通院日数に応じた保険金が支払われる。 

業務中だけでなく通勤中も補償

業務災害補償保険は、労働者の業務や通勤中の傷害や疾病について、会社(事業者)が補償金や賠償金等の費用を負担することで被る損害を補償します。

業務中の災害だけでなく、通勤中の災害についても補償対象としているのです。 

使用者賠償にも対応できる

近年は労働者の権利意識の高まりもあり、使用者側の安全配慮義務違反を理由とした損害賠償訴訟件数も増加しています。

また裁判上で確定した賠償額も、高額化傾向にあります。業務災害補償保険ではそのような使用者賠償責任にも対応することができます。

 

事業者は、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。(e-GOV法令検索 労働安全衛生法 第三条(事業者等の責務)より抜粋) 

特約の種類が豊富

業務災害補償保険には補償範囲を拡張できる特約が幅広く用意されています。

以下にその一部を紹介します。 

フルタイム補償特約

業務外において発生した事故による傷病も補償対象とするもの。

雇用慣行賠償責任補償特約

労働者に対して行ったハラスメント・不当解雇に起因して会社(事業主)が負う賠償責任を補償するもの。

事業主費用補償特約

会社(事業主)が負担した葬儀費用や花代を補償するもの。

休業補償保険金特約

業務中の傷病によりその日を含めて180日以内に就業不能となった場合、休業補償保険金を補償するもの。 

付帯サービス

業務災害補償保険には基本補償や特約以外にも、保険会社によってさまざまな付帯サービスが用意されています。以下にその一部を紹介します。 

助成金受給可能性診断

簡単なアンケートに答えるだけで、助成金の受給可能性の診断が受けられる。

就業規則チェックサービス

就業規則に法令違反等の問題がないか、各条文ごとに社会保険労務士によるチェックが受けられる(就業規則の新規作成や改定作業は別途有料になります)。

メンタルヘルスサポート

労災で増加傾向にあるメンタルヘルス問題の解決に向けた様々なサービスが受けられる。

経営セカンドオピニオン

法律・税務・人事労務等の経営に関する相談に対し、各分野の専門家によるアドバイスが受けられる。 

経営事項審査の加点対象

業務災害補償保険に加入すると、経営事項審査の加点対象になります。

経営事項審査とは、国、地方公共団体などが発注する公共事業を直接請け負おうとする場合には、必ず受けておかなくてはならないとされている審査です。

経営事項審査における点数に応じて、建設事業者はランク付けされ、ランクに応じた規模の工事に入札できるようになっているため、建設事業者にとって非常に大きなポイントです。

ただし、業務災害補償保険に加入するだけで加点されるわけではなく、補償内容(死亡補償保険金、後遺障害保険金を付帯すること等)に一定の要件があることは注意が必要です 

なお、業務災害保険については下記サイトでも違った観点から解説されています。ぜひ参考にしてみてください。 

【参考サイト:業務災害保険とは?必要性はある?労災との違いは?の質問にプロが回答いたします。】

 【参考サイト:業務災害補償保険と労災の違いを分かりやすく現役の社労士が解説いたします。

業務災害補償保険の保険料例を紹介します

ここで業務災害補償保険の保険料の例を紹介します。

某大手損害保険会社で試算したものを紹介しますが、保険会社ごとにベースとなる保険料率は異なります。

また割引制度の摘要の有無によっても保険料に差は出ますので、あくまで参考程度にしてください。 

業務災害補償保険 比較表

業務災害補償保険 比較表

【プランA】

事業種類:建設事業
売上高:1億円
保険期間:1年間
保険料支払い方法:一時払い
死亡補償保険金:1,000万円
後遺障害保険金:1,000万円
入院補償保険金:5,000円
手術補償保険金:5,000円
通院補償保険金:3,000円

プラスの特約

使用者賠償責任補償特約:1億円
事業主費用補償特約:100万円
コンサルティング費用:補償特約100万円
雇用慣行賠償責任補償特約:1,000万円

合計保険料:322,520円

【プランB】

事業種類:建設事業
売上高:1億円
保険期間:1年間
保険料支払い方法:一時払い
死亡補償保険金:1,000万円
後遺障害保険金:1,000万円
入院補償保険金:5,000円
手術補償保険金:5,000円
通院補償保険金:3,000円

プラスの特約

使用者賠償責任補償特約:1億円
事業主費用補償特約:100万円
コンサルティング費用:補償特約100万円
雇用慣行賠償責任補償特約:なし

合計保険料:288,390円

【プランC】

事業種類:建設事業
売上高:1億円
保険期間:1年間
保険料支払い方法:一時払い
死亡補償保険金:1,000万円
後遺障害保険金:1,000万円
入院補償保険金:5,000円
手術補償保険金:5,000円
通院補償保険金:3,000円

プラスの特約

使用者賠償責任補償特約:なし
事業主費用補償特約:なし
コンサルティング費用:なし
雇用慣行賠償責任補償特約:なし

合計保険料:163,330円

 上記は保険料のいわゆる定価です。保険会社によっては、全社的に用意されている割引制度であったり、保険会社独自の割引も用意されています。

契約を検討する際には必ず保険会社に割引制度について確認するようにしましょう。 

事故事例の紹介

最後に、建設作業現場における業務災害の事故事例を紹介します。 

事故内容・詳細:資材の移動中、足を踏み外し地上まで落下。

足場上で資材の移動中、足を踏み外し地上まで落下。腰骨を骨折し、障害が残ってしまう。

職場復帰は不可能となり、慰謝料・逸失利益を請求される。

保険金支払額

保険金支払額(円):92,809,000円

事故内容・詳細:鉄塔における高所作業中に転落し、死亡。

鉄塔における高所作業中に転落し、死亡。労働者の遺族は会社の安全配慮義務違反を理由に訴訟を提起。

裁判で会社側の過失が認定された。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):48,700,000円

事故内容・詳細:資材に躓き転倒。右手をついた際につき方が悪く、右手首を骨折してしまう。

工事現場内を移動中、現場に置いてあった資材に躓き転倒。右手をついた際につき方が悪く、右手首を骨折してしまう。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):198,800円

事故内容・詳細:足場上で外壁を塗装作業中、足を踏み外し転落。

マンションの足場上で外壁を塗装作業中、足を踏み外し転落。右足首の骨折の重症を負う。一か月間の療養を余儀なくされた。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):426,800円

事故内容・詳細:清掃作業中、脚立から降りる際に足を踏み外し転倒。

脚立に乗って清掃作業中、脚立から降りる際に足を踏み外し転倒。右足首の骨折を負ってしまう。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):489,000円

事故内容・詳細:トラックと台車の間に手を挟み、骨折してしまう。

建設工事現場にてトラックの荷台から台車に資材を積み運び中、トラックと台車の間に手を挟み、骨折してしまう。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):342,560円

事故内容・詳細:足場上階から落下してきた鉄骨が背中に激突。

建設現場を移動中、足場上階から落下してきた鉄骨が背中に激突。骨折の診断を受ける。結果的に半年間の療養となってしまった。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):2,893,000円

事故内容・詳細:現場監督からの日常的なパワハラを苦に精神疾患とり患。

従業員が現場監督からの日常的なパワハラを苦に精神疾患とり患。会社側に相談するも、適切な対応が取られることはなかった。当該従業員は結果的に自殺してしまう。従業員の遺族は会社に対し損害賠償を求め、裁判でも会社の過失を認定した。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):68,700,000円

事故内容・詳細:誤って工具で左手の親指を切断してしまう。

建築資材を組み立て中、誤って工具で左手の親指を切断してしまう。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):4,890,000円

事故内容・詳細:建設現場内で資材移動中、バランスを崩し転倒。

建設現場内で資材移動中、バランスを崩し転倒。店頭の際に資材が左足に落ちて打撲挫創。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):453,000円

事故内容・詳細:ゴミをおろしていたところ、バランスを崩し転倒。

ゴミをおろしていたところ、バランスを崩し転倒。その際に右足をくじいてしまい、さらにその足の上に資材が落ちてきてしまった。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):827,000円

事故内容・詳細:内装解体作業中に、床を持ち上げた時に腰を痛めた。

内装解体作業中に、床を持ち上げた時に腰を痛めた。病院にて腰の捻挫との診断を受けた。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):675,000円

事故内容・詳細:資材に躓いて転んでしまい、トラックの角に顔から激突。

建設現場で出た廃材を運んでいるとき、足元に置いてあった資材に躓いて転んでしまい、トラックの角に顔から激突。病院にて眼窩底骨折との診断を受ける。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):985,600円

事故内容・詳細:会社へ移動中に交通事故を起こし左足太腿部分を骨折してしまう。

工事現場から会社へ移動中に交通事故を起こし左足太腿部分を骨折してしまう。日常的な長時間労働による居眠り運転が原因とされ、会社側の安全配慮義務違反を問われた。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):6,820,000円

事故内容・詳細:ローラーの間に足を踏み外し、足首をひねって捻挫をした。

足踏み場と、その下にあるローラーの間に足を踏み外し、足首をひねって捻挫をした。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):51,000円

事故内容・詳細:木材と木材に左手親指を挟み、切断してしまう。

木材を運搬作業中、木材と木材に左手親指を挟み、切断してしまう。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):4,638,000円

事故内容・詳細:軽量材で下地を組んでいるときにつまづいた。

軽量材で下地を組んでいるときにつまづき、つまづいた拍子にスタットに手を掛け持ちこたえようとしたが、持ちこたえられず、すべるように手が流れ、ふれ止めのチャンネルに手を引っかけた。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):198,800円

事故内容・詳細:足場から地上への落下事故。

建設作業現場における足場から地上への落下事故。両足首の骨折を負ってしまう。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):1,870,000円

事故内容・詳細:資材の重さに耐えきれず転倒。転倒した際に頭を打ってしまう。

資材を積んだトラックから資材を降ろす作業中、資材の重さに耐えきれず転倒。転倒した際に頭を打ってしまう。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):878,000円

事故内容・詳細:資材を持ち上げた時に右太ももに肉離れをおこした。

プラントで管工事中に、資材を持ち上げた時に右太ももに肉離れをおこし、救急搬送される。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):198,000円

事故内容・詳細:仮囲いの打ちこみパイプにヒザがぶつかり切傷。

タワークレーンのタラップに昇る時足がすべり、仮囲いの打ちこみパイプにヒザがぶつかり切傷。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):117,800円

事故内容・詳細:鉄板を左足の甲に落としてしまう。

工事現場で廃材運搬中、鉄板を左足の甲に落としてしまう。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):428,700円

事故内容・詳細:台車が倒れてきて資材に背中を押され、頭部を強打した。

資材を積んだトラックからの資材の荷受時に、台車が倒れてきて資材に背中を押され、頭部を強打した。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):1,473,000円

事故内容・詳細:建設資材を搬入中に転倒。

建設資材を搬入中に転倒。腰椎圧迫骨折と診断された。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):3,003,000円

事故内容・詳細:運搬中に転倒、膝を捻挫する。

工事現場で資材を運搬中に転倒、膝を捻挫する。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):418,000円

事故内容・詳細:手をついた上に材料が落下し右手を骨折。

建設現場で、肩に材料を背負って歩行中、段差につまづき転倒。手をついた上に材料が落下し右手を骨折。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):362,000円

事故内容・詳細:はしごが頭めがけて落下。

資材置場の2階へのハシゴでの作業中、強風にあおられたはしごが頭めがけて落下。そのまま緊急搬送された。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):296,000円

事故内容・詳細:手とひじが、はさまり亀裂骨折。

現場のロングパンに手をかけて上に上がっている時に、単管のネットに手とひじが、はさまり亀裂骨折。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):249,000円

事故内容・詳細:脚立から降りようとした際に転倒

工事現場で脚立から降りようとした際に転倒し、右足を骨折する。

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):308,000円

事故内容・詳細:つまずき足を捻挫

足場階段を下りるときにつまずき足を捻挫

保険金支払額(円)

保険金支払額(円):103,000円

 このように、なかには数千万にものぼる高額賠償事例もあります。

ただ、上記はあくまで建設作業現場における業務災害事故のほんの一部に過ぎません。

労働者としては危険を極力回避できるよう、日々安全作業に努め、会社としては従業員の安全配慮をしっかりしているか、万が一の事故に際した補償がなされているか、しっかり確認しましょう。

 まとめ

今回の記事では、業務災害補償保険について、その補償内容を解説し、損害事例についても紹介しました。

建設業において、業務災害補償保険は非常に重要な保険です。

他の業種と比べると、業務災害事故の多い業種であることも理由のひとつですが、経営事項審査の加点対象であることも、建設業における業務災害補償保険の重要性を示しています。

業務災害の発生頻度の高いということは、保険会社にとってはリスクが高い業種ということを示しており、その他の業種よりは保険料は高い設定となっています。

契約を検討する際には割引制度の有無について必ず調べるようにしましょう。

そして、適用するための要件等の詳細は、保険会社や保険代理店の担当者に確認するようにしましょう。

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