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2024.11.07

生産物・PL保険賠償事故!損害保険金支払い事例17件を一挙公開

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著者情報 森 逸行 FP歴15年 経験した事を伝え解決に導く『金融パーソナルトレーナー』

【実話】・PL保険賠償事故!損害賠償保険金支払い事例20件を一挙公開

 近年、飲食店が提供した料理を食べたことによって生じたトラブルが増えています。

厚生労働省のデータ(厚生労働省「食中毒統計調査」)によると、食中毒事件数はここ3年間で増加傾向にあります。

飲食店経営者にとって、これは無視できるデータではなく、PL保険に加入する等、しっかり備えておかなければならないことを示していると言えます。

今回の記事では、PL保険の補償内容について解説し、損害保険の現場に身を置く筆者が実際に経験した損害事例を紹介したいと思います。 

目次

生産物賠償事故とは?

製造業者が造ったものや、販売業者が行った業務において生じた瑕疵が原因で、エンドユーザーに損害を与えてしまう事故を、生産物賠償事故といいます。

このような事故が生じた場合、製造業者や販売業者等のサービス提供者は、生じた事故の結果によってエンドユーザーに損害を与えた場合、その損害を賠償しなければなりません。

PL法(製造物責任法)では下記のように定められています。

この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定める

e-GOV法令検索 製造物責任法 第一条 より抜粋)

このような製造業者や販売業者等のサービス提供者の損害賠償責任を補償するために、各損害保険会社よりPL保険が販売されています。

次項でその補償内容を詳しく解説します。

生産物・PL保険賠償事故!損害保険金支払い事例20件を一挙公開-2

今日のPL保険に至った背景

PL保険を語る上で、PL法の制定・施行は大きな転換点といえます。

日本では1995年に施行されました。施行前、日本では様々な製品が安価で手に入れることができる状況で、非常に高い生活水準への移行期でした。

一方で、不運にも不具合のある製品を手にしてしまったことによる損害も多発していたのです。

その際、損害を被った被害者は、製造業者に損害賠償請求するためには、業者側の故意・過失を「被害者側が」具体的に立証しなければなりませんでした。

しかし実際には、被害者側で業者側の責任を立証するのは限界があります。

そのような社会的状況を背景として、199571日のPL法施行により、被害者は、製造業者の製品に欠陥があることを立証するだけでよく、業者側の故意や過失を問わず、損害賠償請求が可能になったのです。

PL保険の補償内容とは

この項では、PL保険の補償内容について解説していきます。

対象となる者

まずPL保険の対象となる者(補償を受けることができる者)について説明します。

①・・製品等を製造した者、販売した者、飲食店等

電気器具、食品、料理等、店舗やレストランで販売・提供されたものの欠陥、不具合に起因する損害が補償の対象となります。

②・・工事や作業を請け負った者

建設工事・内装工事、機械類の設置工事、清掃作業の結果に起因する損害が補償の対象となります。

※①②ともに法律上の賠償責任が認められる範囲に限られます。

支払い対象となる損害

次に、具体的にどのような保険金を受け取ることができるのか、について説明します。

・損害賠償金
・損害防止費用
・権利保全行使費用
・緊急措置費用
・協力費用
・争訟費用

損害賠償金

法律上の損害賠償責任に基づいて被害者に支払う金額であり、PL保険のメインの補償です。具体的には被害者の治療費や慰謝料だけでなく、和解金・示談金等も含まれます。なお、法律上の賠償義務がないのにも関わらず支払われた見舞金等は、補償対象外となります。

損害防止費用

事故が発生した場合の損害の発生または拡大の防止のために必要または有益であった費用をいいます。実際に事故が発生すると、損害が拡大するのを防ぐことも重要です。さらに、保険法においても、事故が発生した際の損害防止義務を遂行しなければならない旨、規定されています。このような費用も補償対象となります。

権利保全行使費用

第三者に損害賠償を請求できる場合に、その権利を保全・行使するための費用をいいます。たとえば建設工事業を営んでいるとして、建設工事において、工事完成し引き渡したものの(仕事の結果)、施工ミス等によってエンドユーザーに損害を与えたとします。建設工事の場合、下請け業者が入ることが一般的です。元請の工事業者がエンドユーザーから損害賠償請求されたとしても、下請け業者の仕事の結果、損害が発生したのであれば、当該下請け業者も責任を負う必要があります(元請業者も監督責任は問われます)。

このようなケースで、元請業者がエンドユーザーに損害賠償金を全額支払った後で、下請け業者の過失割合に応じて請求することになりますが、その手続きにかかる費用を権利保全行使費用といいます。

緊急措置費用

事故が発生した場合の緊急措置(ケガ人の救助活動、応急手当等)に要した費用をいいます。②の損害防止費用ともリンクしますが、事故が発生した際の初動対応を迅速にしっかりすることで、結果的に損害賠償が発生せずに済むこともあります。PL保険ではその費用も補償対象としているのです。

協力費用

事故が発生した場合、保険会社へ事故報告をします。保険会社も事故解決にあたる場合で、保険会社へ協力するために必要となる費用をいいます。

争訟費用

裁判費用、弁護士報酬等、損害賠償に関連する争訟について支出した費用をいいます。PL事故が発生すると、エンドユーザーより損害賠償請求訴訟を提起されることもありえます。この裁判の結果如何によって、損害賠償金の支払額、そもそも支払うべきものなのかどうか、といった点が大きくかかわってきます。このような費用もPL保険で補償対象となるのです。

特約の補償内容

前項で解説したものは、PL保険の基本補償になります。どこの損害保険会社で販売されているPL保険においても、基本補償部分に相違点はありません。

この基本補償の内容を拡大するために付保する特約についても解説します。

特約は各損害保険会社によって特色の出る部分で、会社によっては用意していないところもあります。

・不良完成品損害補償特約
・リコール費用補償特約
・食中毒・特定感染症利益補償特約
・被害者対応費用補償特約
・事故対応特別費用補償特約

不良完成品損害補償特約

基本補償において保険金の支払対象外とされている、生産物が部品等として使用された完成品の損壊に起因する損害に関し、この特約を付保することで補償対象とすることができます。

リコール費用補償特約

製造した製品によるエンドユーザーへの損害が発生し、損害原因となった製品を回収する費用を補償するものです。なお、特約の支払限度額は決して十分な額が補償されているとはいえず、リコールの費用をしっかり備えるためにはリコール保険の付保をおすすめします。

食中毒・特定感染症利益補償特約

飲食店において食中毒、保険会社所定の感染症が発生し、営業休止となった際の損失を補償するものです。

被害者対応費用補償特約

損害が発生した際、被害者に対して支払った見舞金や、初期対応に要した臨時費用を補償するものです。なお、このような補償内容の特約はどこの損害保険会社のPL保険にも用意されているものですが、各社ごとに特約の名称が異なります(初期対応費用補償特約など)。

事故対応特別費用補償特約

PL保険の支払い対象となりそうな損害賠償請求をされた場合に、その対処のために要した費用(文書作成費用、交通費、通信費など)を補償するものです。

保険金支払い事例を紹介

ここで、保険金の支払い事例をいくつか紹介します。

筆者が実際に現場で対応に当たった事例も含めて紹介したいと思います。

事故事例①防水コンセントの不備により漏電する事故発生。

事故日:2015.1.11
事故内容・詳細:リフォーム工事での内装引渡し後、防水コンセントの不備により漏電する事故発生。

保険金支払額

保険金支払額:1,008,073円

事故事例②店の室外機と外壁を汚損する事故発生。

事故日:2016.12.23
事故内容・詳細:設置した排煙口からの油成分が隣地パチンコ店の室外機と外壁を汚損する事故発生。

保険金支払額

保険金支払額:1,380,000円

事故事例③戸建て住居での雨漏れによる家財破損事故発生。

事故日:2021.1.18
事故内容・詳細:リフォーム工事引き渡し後、戸建て住居での雨漏れによる家財破損事故発生。

保険金支払額

保険金支払額:635,500円

事故事例④工事用のサッシビスが駐車場に残っており、施主運転自動車がパンクさせる事故発生。

事故日:2020.12.5
事故内容・詳細:新築戸建引き渡し後、工事用のサッシビスが駐車場に残っており、施主運転自動車がパンクさせる事故発生。

保険金支払額

保険金支払額:99,000円

事故事例⑤トイレが詰まり排水管から漏水しクロス破損する事故。

事故日:2024.6.8
事故内容・詳細:トイレが詰まり公示後に排水管から漏水しクロス破損する事故。

保険金支払額

保険金支払額:204,000円

事故事例⑥リフォームで給湯器の水抜き作業の不備で排水管が凍結する。

事故日:2022.9.10
事故内容・詳細:中古戸建販売時のリフォームで給湯器の水抜き作業の不備で排水管が凍結する。

保険金支払額

保険金支払額:90,420円

事故事例⑦漏水によりコピー機を破損させる事故発生。

事故日:2014.3.25
事故内容・詳細:エアコン設置後の漏水により施主所有のコピー機を破損させる事故発生。

保険金支払額

保険金支払額:162,300円

事故事例⑧ボードアンカーの締付の弱さからクロスごと剥がれ落下する事故発生。

事故日:2020.5.19
事故内容・詳細:1年前に設置したエアコンが、ボードアンカーの締付の弱さからクロス横2m縦50㎝ごと剥がれ落下する事故発生。

保険金支払額

保険金支払額:332,400円

事故事例⑨エアコンが落下した際に壁クロスに接触し傷をつける。

事故日:2014.11.20
事故内容・詳細:2013年に設置したエアコンが落下した際に壁クロスに接触し傷をつける。

保険金支払額

保険金支払額:99,930円

事故事例⑩1年前に設置引き渡しをしたエアコンドレーン部分より漏水。

事故日:2018.10.17
事故内容・詳細:1年前に設置引き渡しをしたエアコンドレーン部分より漏水。2階の個室と階下個室に漏水被害。漏水原因はドレーンホースが冷媒配管に押しつぶされ逆流したため事故になった。

保険金支払額

保険金支払額:1,423,000円

事故事例⑪飛んだ鉄骨が雨どいに付着し、さびとなり居住者より請求をお受ける。

事故日:2020.7.12
事故内容・詳細:マンション屋上修繕工事中に強風により飛んだ鉄骨が雨どいに付着し、さびとなり居住者より請求をお受ける。

保険金支払額

保険金支払額:558,900円

事故事例⑫3年前に設置したエアコンが落下し、家財破損の請求を受ける事故。

事故日:2021.7.20
事故内容・詳細:3年前に設置したエアコンが落下し、エアコンの買替・クロス張替・家財破損の請求を受ける事故。

保険金支払額

保険金支払額:249,800円

事故事例⑬エアコン設置後に排水管より漏水

事故日:2019.3.21
事故内容・詳細:エアコン設置後に排水管より漏水し、居住人所有物の高級ブランドバッグ複数点を汚損させた。

保険金支払額

保険金支払額:428,200円

事故事例⑭給水管工事完了後HVP管が接続不良により階下へ漏水した。

事故日:2019.7.9
事故内容・詳細:キッチン周りのリフォームを受注し、給水管工事完了後HVP管が接続不良により抜けてしまい階下へ漏水した。

保険金支払額

保険金支払額:1,880,800円

事故事例⑮トイレ給水配管工事の引き渡し二日後に配管部分より漏水した。

事故日:2019.3.22
事故内容・詳細:法人企業様の事務所トイレ給水配管工事の引き渡し二日後に配管部分より漏水した。原因はVP管の接合部に塗料残りがあり接合部が抜け落ちたため漏水事故に繋がった。

保険金支払額

保険金支払額:1,820,900円

事故事例⑯エアコン設置後に漏水し居住者のソファーとベッドと壁を汚損させた。

事故日:2021.1.6
事故内容・詳細:エアコン取り付け作業を受注し、エアコン設置後に漏水し居住者のソファーとベッドと壁を汚損させた。

保険金支払額

保険金支払額:486,900円

事故事例⑰キッチン排水ホース交換作業引き渡し後、2カ月ほどして漏水する事故が発生。

事故日:2022.10.11
事故内容・詳細:キッチン排水ホース交換作業引き渡し後、2カ月ほどして階下に漏水する事故が発生。原因は排水ホースナットとパッキンのネジ口径が合っておらず隙間から漏水した。

保険金支払額

保険金支払額:218,000円

上記で紹介した事例は主に物損損害です。不幸中の幸いなのか、賠償金額はそれほど高額にはなりませんでしたが、人身損害ともなると、損害額は高額化する傾向にあります。

たった一度の事故でも経営を揺るがしかねない経済的損失を被る可能性があります。

しっかりPL保険でそのような損害に備えておくことは大切です。  

まとめ

今回の記事では、PL保険の補償内容について解説し、実際の損害事例も紹介しました。

PL事故は生命を危険にさらす可能性を孕んでいる、決して軽視できないリスクです。

損害額によっては経営を揺るがすダメージにもなりえます。

PL保険の補償内容についてしっかり理解し、適切にリスクに備えるようにしましょう。

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