一棟20部屋のマンション火災保険を3社比較!おすすめの保険会社と保険料を割り出し解説しました。
マンション経営には、安定した家賃収入や不労所得といった魅力があります。
一方で、予期せぬ災害によって、収益を生み出すマンションに損害が生じた場合には、収益が止まってしまうばかりか、修繕費の支出や住人のために仮住まいを手配しなければならないこともあります。
このように、マンションオーナーは空室をどのように埋めるかといった営業的な戦略に加えて、様々なリスクについても考えておかなければなりません。
今回の記事では、一棟マンションのオーナーが考えるべきリスクについて考察し、そのリスクに対応すべく火災保険の設計について解説していきたいと思います。
目次
マンションの災害リスク
まず、マンションが抱える災害リスクについて解説します。
火災リスク
マンション建物が火事によって損害を被るリスクです。
マンションでは多くの人が、ひとつの建物の中の区分所有された空間の中で生活しています。
多くの人が集まれば集まるほど、その分リスクは高まります。
タバコを吸う人もいれば、料理でよく火を使う人もいるでしょう。
また、マンション住人の不注意によるものだけでなく、たとえば放火による火災の発生等、外部からのリスクもないとはいえません。
このようなリスクが火災リスクになります。
風害リスク
台風等の暴風雨によってマンション建物が損害を被るリスクです。
筆者も損害保険の現場で、毎年夏から秋にかけては台風による損害対応に奔走しました。
保険会社全社的に見てみても、保険金支払額が数百万~数千万超にも上る大規模災害に発展したものが数多くあり、保険料の値上げの大きな要因にもなりました。
風害は決して無視できないリスクです。
水ぬれリスク
給排水設備の破損等に起因する水濡れ・漏水等によって、建物が損害を被るリスクです。
多くの人が居住するマンションではよりリスクが高くなる傾向にあります。
盗難リスク
空き巣等によってマンション居住者の所有する財物を盗まれたり、また空き巣が建物内に侵入するために窓ガラスを壊してしまった、といったリスクです。
多くの居住者が集まるマンションでは、それぞれ盗難に対するリスクの考え方も異なります。
しっかり施錠して、なるべく自宅居住室内には現金を置かないという考え方の人もいれば、施錠する習慣がなく、無頓着な人もいます。
水害リスク
河川の増水やゲリラ豪雨によってマンション建物が浸水を被るリスクです。
マンションにおいては、居住者目線で考えても、低層階に居住する人にとってはしっかり考えなければならないリスクです。
マンションオーナーにとっては言わずもがなのリスクです。
その他のリスク
これまでに紹介したような明確な区分には該当しないものの、外的・突発的な原因によって建物に損害を被るリスクをいいます。
地震リスク
大地震によって建物が倒壊してしまったり、建物外壁部分に亀裂が入ってしまったりといったリスクになります。
また、地震を直接の原因として火災が発生してしまったような場合も、地震リスクとして考えるべきものになります。
上記はマンションが抱えるリスクとして紹介しましたが、特にマンションだからといって固有のリスクではありません。
一戸建て住宅にも概ね当てはまるものです。
このようなリスクに備えるのに最適なものは火災保険です。
その補償内容については、次項で解説したいと思います。
火災保険の補償内容
ここでは、マンションの災害リスクで紹介したリスクの対策として役立つ、火災保険の補償内容について解説します。
保険会社によって取り扱いは異なりますが、概ね6種類の補償とプラスアルファで地震保険という仕組みになっています。
それぞれの補償事例について見ていきたいと思います。
①火災、落雷、破裂・爆発
・火災により建物が焼失した。
・隣家の延焼により建物が損害を受けた。
・落雷が直撃し、火災が発生した。
・ガス漏れにより爆発した。
②風災、雹災、雪災
・暴風雨を受け、窓ガラスが割れた。
・強風を受け、ベランダの造作の一部が破損した。
・積雪の重みに耐えきれず天井が抜けた。
③水ぬれ
・水道管が破裂し、浸水が発生。天井や内装部分に汚損害が生じた。
・上階住人がトイレに異物を流してしまい、階下の居室に漏水が発生。
④盗難
空き巣が窓ガラスを割って侵入してきた。
空き巣によってエントランスのカギ、区分所有個室のカギをそれぞれ壊された。
⑤水災
・ゲリラ豪雨に起因する土砂崩れによって、流れてきた土砂による損害を受けた。
・河川の氾濫に起因する浸水損害を受けた。
⑥破損、汚損等
・近所の子どもが遊んでいたボールによって窓ガラスが割れた。
・運転操作を誤った自動車が飛び込んできて、エントランス部分に損害を受けた。
・深夜に建物の外壁にスプレーで落書きをされてしまった。
地震保険
・地震によって建物が倒壊してしまった。
・地震によって発生した津波によって建物が流されてしまった。
・地震に起因する火災によって建物が消失してしまった。
地震保険は火災保険とセットでのみ加入できるものです。地震保険のみを単体で加入することはできません。
また結果的に火災が発生した場合、外形的には火災損害に見えますが、損害保険としては、そもそもの原因が地震によるものであれば、地震保険が適用され、火災保険は適用対象外となります。
マンションオーナーにとって大事なこと
マンションオーナーにとって大事なことを一点お伝えします。
上記のような事例が発生し建物が損害を被った場合、マンションオーナーには居住する住人のために建物を修繕する義務があります。
住人から修繕の依頼があった場合、すみやかに対応しなければならないのです。
仮に修繕を拒否して住人が費用負担したような場合、住人は修繕に要した費用を請求することができます。
【参考条文:民法第606条 賃貸人による修繕等】
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
【参考条文:民法第608条 賃借人による費用の償還請求】
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
万が一マンションオーナーが火災保険に加入していない状態で損害が発生してしまうと、補償は受けられず、修繕費はマンションオーナーの自己負担になってしまいます。
このような場合に備えて、火災保険には必ず加入しておきましょう。
一棟マンションのオーナー特有のリスクとその対策
一棟マンションのオーナーは、リスク対策の観点で、火災保険を自宅に付保するのと同じような補償内容で付保するだけで十分でしょうか。
答えは、自宅と同じような補償内容の設定では十分とは言えません。
ここで、通常の火災保険にプラスアルファで必要となるマンションオーナーならではのリスクとその対策について解説します。
施設賠償リスク
施設賠償リスクとは、所有または管理するマンションの欠陥や管理上の不備によって第三者にケガを負わせたり、第三者の物に損害を与えてしまった場合に負う可能性のある賠償リスクを指します。
たとえば、マンションに設置された看板が落下して通行人にケガを負わせてしまった場合は、管理上の不備となる可能性が極めて高いです。
この事例で、もし仮に打ち所が悪く後遺障害を負ってしまったり、万が一亡くなってしまった場合は、法律上の損害賠償額は数千万~数億円になる可能性があります。
このような場合に備えて、施設賠償責任保険で準備しておくことは大事です。または、火災保険に特約を付帯することで補償を持たせることもできます。
空室リスク・清掃費用負担リスク
火災等が発生し居室部分に損害を受けると、部屋を貸し出すことができなくなり、その間の家賃収入は得られなくなります。
また縁起でもない話ですが、マンション内で自殺や犯罪死といった死亡事故が発生することも、たくさんの人が入居するマンションにおいては可能性としてあります。
このような場合、マンションオーナーとしては家賃収入が見込めなくなるばかりか、清掃・脱臭・遺品整理等といった出費が発生します。
このような事態の補償として火災保険の特約には「家賃収入特約」、「家主費用特約」といったものが用意されています。
・家賃収入特約・・・火災等の事故によって賃貸している建物の家賃収入が得られなくなった場合の損失を補償します。
・家主費用特約・・・賃貸している住宅内で死亡事故が発生したことに起因して、空室の期間等が発生した際の家賃の損失や、居室のクリーニング費用、遺品整理費用等を補償します。
このようなことも想定し、しっかり備えておきましょう。
漏水リスク
たとえば、マンション上階の住人が風呂の水を数日間出しっぱなしにした結果、階下の住人に漏水損害を与えてしまったとします。
このような場合は、当然上階の住人の責任になるのですが、上階の住人が個人賠償責任保険に加入していなかった等の理由で、賠償に応じないなんてこともあるでしょう。
この場合の備えとして、火災保険には個人賠償責任包括特約というものがあります。
これは、マンションのすべての居住者を対象に個人賠償責任特約を付保するというものです。
本来はマンションの居住者が各自で個人賠償責任特約は付保すべきものですが、付保が漏れた場合に備えたものです。
なお、マンションの管理上の不備によって漏水が発生した場合は、マンションオーナーの責任となります。
このような場合には、施設賠償責任保険に漏水補償を拡張担保することができますので、忘れずに備えておきましょう。
一棟マンション保険料例
最後に一棟マンションの保険料例を紹介します。紹介するのは筆者が実際に提案したものになります。
ぜひ参考にしてください。
A社:年換算保険料491,370円
合計保険料2,456,850円(5年間)
B社:年換算保険料497,450円
合計保険料2,487,250円(5年間)
C社:年換算保険料507,658円
合計保険料2,538,290円(5年間)
まとめ
今回の記事では、マンションのオーナーならではのリスクについて考察し、それに備える火災保険等の設計について解説しました。
火災保険の基本補償をしっかり付保するだけでは決して十分ではないことが実感できたと思います。
マンションオーナー特有のリスクをしっかり洗い出し、保険でカバーできるものはしっかり補償を付保することが重要です。
なお、加入の際には自分一人で決めたりせず、保険代理店等、保険のプロに必ず相談しましょう。