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2025.01.27

建設業の労災上乗せとは?どんな危険?入るべき賠償責任やモノ保険は?事故事例あり!

カテゴリー名
著者情報 ファイナンシャルプランナー森 逸行 FP2級・住宅ローンアドバイザー。住宅購入、投資、相続など自身の経験を活かし、実践的かつ現実的なアドバイスを提供。

建設業の労災上乗せは?どんな危険?入るべき賠償責任やモノ保険は何?事故例あり!1. 建設業は事故の多い事故のひとつとして数えられています。

労災事故であったり賠償事故、物損事故であったりと、挙げだすとキリがありません。

経営者の方はリスク管理に頭を悩ませていることでしょう。

今回は建設業におけるリスクについて、質問に対する回答を通じて解説していきたいと思います。 

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建設業の労災上乗せは?どんな危険?入るべき賠償責任やモノ保険は何?事故例あり!2

目次

質問1:建築工事業で具体的にどういった危険があるのでしょうか?

建築工事業を営んでいる者です。

従業員も10名程度で小さな会社ではありますが、危険の多い業種であることは認識しており、日々安全作業に努めているつもりです。

危険が多いことは漠然と認識しているものの、具体的にどういった危険があるのでしょうか?

きちんと整理したいと思って質問しました。 

回答|建設業が最低限備えるべきリスクについて解説します。

建設業は様々な事故や、多重下請け構造といった業界特有の構造から発生するトラブルの多い業種です。

そのような事情もあってか、損害保険会社各社は様々な保険商品を開発し、各社でしのぎを削っています。

加入者側にとっては、選択肢が増えるのはありがたい面もありますが、一方で結局何の保険に入ったら良いのかわからなくなってしまいます。

ここでは建設業が最低限備えるべきリスクについて解説します。まず考えるべきは、大きく分けて下記の3種類になります。 

・従業員のケガのリスク
・第三者に対する賠償リスク
・物に対するリスク

 それぞれについて解説していきます。 

従業員のケガのリスク

従業員が現場作業中の事故によってケガをしてしまったり亡くなってしまうリスクです。

業務中のケガであれば政府労災が適用されますが、補償としては政府労災だけでは足りないというのが実情です。

建設業に限った話ではありませんが、会社には従業員が安全に働くことのできる環境をつくる義務(安全配慮義務)があります。

たとえば業務中の事故が原因で後遺障害を負ってしまったとします。

政府労災の認定を得られ、一定の給付が得られたとしても、被害者としては、政府労災の補償だけでは不十分であると考えるケースもあるでしょう。

この場合で、被害者が会社の安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求訴訟を提起してしまうとすると、多くの場合、会社側に不利な判決が下ってしまいます。

このように従業員のケガに対して、政府労災だけでは不十分であることを念頭に置いた上で、上乗せの備えを考える必要があります。 

第三者に対する賠償リスク

建設工事中に、第三者にケガを負わせてしまったり、第三者のモノに損害を与えてしまうリスクです。

また、建設工事が完了し、引き渡した成果物の不備に起因して第三者に損害を与えた場合の賠償リスクも含まれます。

たとえば、第三者に対する賠償リスクに関する事故としては、下記のような事故が想定されます。 

【事故例】

・建設現場において足場を組み立てていたところ、高層階から資材を誤って落下させてしまい、たまたま通りかかった通行人の頭部に直撃し、後遺障害を負わせてしまった。

・台風により足場が崩れてしまった。近隣の住宅建物の多くに足場が倒れてしまい、損害を与えてしまった。

・商業ビルの敷地内に看板を設置したが、建付けが甘かったことで、強風により倒れてしまい、通行人に直撃。大けがを負わせてしまった。

・給排水管工事を終え住人に引き渡したが、工事の不備により配管部分から漏水が発生。住宅の家財道具の多くに損害を与えてしまった。 

建設工事における賠償事故となると、多くの場合、損害額は非常に高額になります。

たった一回の事故で経営を揺るがすほどの経済的損失を被ってしまうケースは往々にしてあります。賠償事故に関してはしっかり備えておかなければならないリスクです。 

物に対するリスク

建設工事中に、物に対して発生するリスクです。

建設現場には、配管・機械・空調設備等といった様々な物があります。

そういった物に対して、火災や風災に代表される自然災害や突発的な事故に起因して損害が起こった場合についても考えておかなければなりません。 

いかがでしたでしょうか。

その他にもリスクを上げだしたらキリがありませんが、上記の3種類のリスクについては最優先で考えるようにしましょう。

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建設業の労災上乗せは?どんな危険?入るべき賠償責任やモノ保険は何?事故例あり!3

質問:労災上乗せ保険とはどういった保険なのでしょうか?

解体工事業をしています。先日、同業他社の経営者と話す機会がありました。

そこでその社長に労災の上乗せに入っているか?と聞かれました。

弊社は入っていない旨を伝えたところ、入ることを強く勧められ、保険会社まで紹介されました。

労災上乗せ保険とはどういった保険なのでしょうか?また、入った方が良いのでしょうか。

なんとなく騙されているのでは、と思ったので確認しました。 

回答|労働者の業務上の事由または通勤による傷病等に対して保険給付を行う制度です。

まず政府労災について、その概要を解説します。

政府労災とは、労働者の業務上の事由または通勤による傷病等に対して保険給付を行う制度です。

原則として1人でも労働者を使用する事業は加入が法律で義務付けられています。

自動車に例えると自賠責保険をイメージしてもらえるとわかりやすいのではないでしょうか。

事業主は使用する労働者が業務に起因する事故によって傷病を負った場合、被災労働者に対して補償する義務があります。

政府労災は、その事業主の責任を肩代わりする位置づけになるのです。

しかし、いざ業務災害が発生し政府労災の認定が下って保険給付を受けたとしても、被災労働者にとっては政府労災の給付だけでは不十分なケースが大半です。

その足りない分を補填する意味で労災の上乗せ保険があるのです。

保険商品は損害保険会社各社から様々な特徴を持って販売されています。

また労災の上乗せ保険は大きく2種類のものがあります。労働災害総合保険と業務災害総合保険の2種類です。

それぞれについて簡単に概要を説明します。

労働災害総合保険

政府労災に完全に連動した保険です。保険金請求には政府労災の認定が必要になります。ただし特約を付帯することで、補償範囲を拡張することができます。

業務災害総合保険

労働災害総合保険と異なり、業務災害総合保険は政府労災の認定を待たずに保険金請求をすることができます。

つまり保険金支払いの条件に労災認定は入っておらずスピーディな保険給付を得ることができます。

また、労働災害総合保険と同様、特約を付帯することで補償範囲の拡張ができますが、特約の種類は労働災害総合保険のものよりも多く用意されています。 

なお労働災害総合保険と業務災害総合保険の違いは、下記の記事に詳細な解説がされています。ぜひ参考にしてください。

 【参考記事:業務災害補償保険と労災の違いを分かりやすく現役の社労士が解説いたします。】

 結論として、労災の上乗せ保険は加入することを強くおすすめします。

労災のリスクの高い建設業であればなおさらです。

質問者様の話にあった同業他社の社長は騙す意図は全くなかったものと思われます。ぜひ検討してみてください。 

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質問:建設関係の業種で入るべき賠償責任保険について教えてください。

建設関係の仕事をしています。内装工事や解体、防水工事等、様々な仕事を請け負っています。

労災の上乗せ保険には入っていますが、賠償責任保険には何も入っていません。

しかし賠償事故に関しては、漠然とした心配はあります。

ただ、一口に賠償責任保険といっても様々な種類があって、何に入ったら良いのかわかりません。

建設関係の業種で入るべき賠償責任保険について教えてください。 

回答|建設関係の優先すべきリスクは下記の2種類になります。

建設関係の業種では事故によって様々な賠償責任が発生するリスクをはらんでいます。

その中でもとりわけ優先すべきリスクは下記の2種類になります。 

・工事遂行中の損害リスク
・仕事の結果に対するリスク 

それぞれのリスクについて解説し、適用すべき保険を紹介していきます。

 工事遂行中のリスク

たとえばマンションの建設工事中、高層階から資材を誤って落下させてしまい、通行人がケガをした等といった、建設工事作業に起因して第三者に損害を与えてしまうリスクです。

また工事作業そのものだけでなく、建設作業のために使用または管理している施設や資材によって第三者に損害を与えるリスクもあります。

たとえば木材を現場に立てかけて保管していたところ、管理方法が甘く崩れてしまい、通行人にケガを負わせてしまった、といったケースが、その代表的な例です。

このようなリスクに対応する保険は、請負業者賠償責任保険です。

この保険では請負作業遂行中に発生した偶然な事故、または請負作業遂行のために所有、使用もしくは管理している施設の欠陥、管理の不備により発生した偶然な事故に起因して、他人の生命や身体を害したり、 他人の財物を損壊した場合に補償する内容となっています。

なお、請負業者賠償責任保険については下記の記事でも解説していますので、併せてご確認ください。 

【参考記事:建設工事・解体業での物損事故!請負業者賠償責任保険金支払い事例30件を一挙公開】

 仕事の結果に対するリスク

たとえば内装工事業者の施工ミスにより、壁に立て付けてあった棚が落下し、家財に損害が発生といったように、仕事の結果に起因する事故のリスクがあります。

このようなリスクに対応するのは生産物賠償責任保険(PL保険)です。

PL保険では製造・販売した財物(生産物)が第三者に引き渡された後、その生産物の欠陥により発生した偶然な事故、または行った仕事が終了した後、その仕事の欠陥により発生した偶然な事故によって第三者に損害を与えた場合に補償します。

PL保険についても補償内容について下記の記事で解説していますので、ご確認ください。 

【参考記事:生産物・PL保険賠償事故!損害保険金支払い事例17件を一挙公開】

総合賠償責任保険について

これまで紹介した2種類のリスクに限定するのではなく、事業活動において生じる可能性のあるあらゆるリスクについて備えることのできる賠償責任保険があります。

それは総合賠償責任保険というもので、多くの損害保険会社で販売しています。

細かくリスク区分ごとに賠償責任保険を付保するわずらわしさもなく、これだけかけておけばとりあえず付保漏れリスクはなく安心といった性質の保険になります。

ただし総合賠償責任保険を付保するにあたり、注意点を2点紹介します。

1点目の注意点として、業種によっては不要な補償がついている点です。

たとえば総合賠償責任保険では預かり品の補償というものが付保されていますが、建設業にとってその補償は必ずしも必要な補償とは言えません。

このような余分な補償もついてくるという点には注意しておきましょう。

2点目の注意点は、保険料が割高になるという点です。補償内容も補償範囲も手厚い分保険料はどうしても高くなってしまいます。

保険料削減のために不要な賠償部分の補償を削るというのはできません(保険会社の規程によります)。

以上の2点の注意点を踏まえ、補償内容と保険料のバランスをよく考えて検討するようにしましょう。 

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質問4:建設業におけるモノ保険とは何を指すのでしょうか?教えてください。

総合建設業を営んでいます。土木や建設工事から様々な建設関係の業務を請け負っています。

従業員の退職金のために養老保険を準備していて、労災の上乗せや総合賠償責任保険にも加入しているので、福利厚生やリスク対策はバッチリだと自負しています。

ところが、先日保険の担当者と話していたところ、モノ保険がかかっていないことの指摘を受けました。

事務所の設備什器にはしっかり火災保険をかけているので、その時はいまいちピンときませんでした。

建設業におけるモノ保険とは何を指すのでしょうか?教えてください。 

回答|建設業におけるモノ保険は一般的に下記の3種類になります。

建設現場には様々な資材が置かれています。そのような資材の損壊リスクを補償するのが建設業におけるモノ保険の位置づけです。

建設業におけるモノ保険は一般的に下記の3種類になります。 

・建設工事保険
・組立保険
・土木工事保険

それぞれ建設現場において工事対象物(工事目的物)に生じた損害を補償する保険という点で共通していますが、対象とする工事で相違点があります。

それぞれの対象とする工事は下記となります。

建設工事保険

ビル、工場建屋、住宅などの建物の建築(増築・改築・改修工事を含みます。)を主体とする工事を対象としています。

組立保険

機械、機械設備、装置などの据付・組立を主体とする工事を対象としています。 

対象工事の例)建物の内装・外装工事、鉄塔・サイロの工事、発電設備の工事、化学プラントの工事など。 

土木工事保険

道路工事、上下水道工事等の土木工事を主体とする工事を対象としています。 

対象工事の例)道路工事、ダム工事、上下水道工事、河川工事など 

なお、保険金支払事由も概ね共通しています。主な支払事由は下記となっています。 

・台風、防風、落雷等の自然災害
・自動車、航空機の衝突
・盗難、放火、いたずら
・火災、爆発・地盤沈下、地滑り、土砂崩壊
・施工ミス 

このように事務所内のデスクや椅子、パソコン等は質問者様の仰る通り、火災保険で設備・什器に補償を設定することができますが、建設現場におけるモノに対しては、別途保険を付保する必要があるのです。

保険期間の設定や補償内容の詳細等については、保険会社の営業担当者に必ず確認するようにしましょう。 

建設業における保険金支払い事例と解説

ここまで建設業におけるリスクについて、質問と回答を紹介することで解説してきましたが、リスク対策として保険の有効性を理解していただけたことと思います。

建設業では事故やトラブルが起きやすく、実際に多額の損害賠償や修繕費用が発生するケースがあります。

本記事の最後に、保険金の支払い事例をいくつか紹介し、保険金がどのように役立ったのかについても解説したいと思います。 

事例①:落下物による通行人へのケガ

◆事故の状況

ある都市部でのマンション建設工事の現場で発生した事例です。高層階で作業員が足場を組み替えていた際、誤ってスパナを作業床の隙間から地上に落下させてしまいました。

現場は一応、仮囲いや安全ネットで覆われていましたが、作業員が使っていた工具を完全に防ぐ構造にはなっていませんでした。

作業員がスパナを落としたちょうどそのタイミングで、工事現場横の歩道を通行していた通行人の肩に工具が直撃してしまいました。

通行人は強い衝撃で転倒し、鎖骨を骨折、さらに入院治療が必要となりました。 

◆発生後の対応

工事業者はすぐに救急搬送を手配し、現場監督が警察へも事故の報告を行いました。

建設現場での事故は、労働災害だけでなく第三者災害にもつながるため、報道によって地域のイメージダウンや施主との信頼関係の悪化にも直結します。

このケースでも、事故は近隣住民にも知れ渡ることとなり、工事業者は安全管理の徹底を求められることとなりました。

◆保険金支払いの流れ

被害者の治療費や入院費、通院に伴う交通費、仕事を休んだことによる休業損害、さらに精神的苦痛に対する慰謝料が請求されました。

これらの損害は合計で約800万円に上りました。

このとき活用されたのが「請負業者賠償責任保険」です。

この保険は、工事中に第三者へケガや財物損壊を与えた場合に、法律上の賠償責任を補償する保険であり、建設業者にとって不可欠なものです。

保険から全額が支払われたことで、事業者は自己資金による多額の補償を免れることができました。 

◆学ぶべきポイント

以下、今回の事例から学ぶべきポイントを整理します。

 落下物事故は典型的な建設現場リスク

高所作業が伴う建設現場では、工具や資材の落下は日常的に起こり得る事故です。ヘルメットを着用する作業員ならある程度は守られますが、一般通行人は無防備であるため、被害が大きくなりやすいのが特徴です。

安全管理の徹底が第一

落下防止用の工具ホルダーや安全ネットの設置、作業エリア直下の通行規制など、事故を防ぐための措置を講じることが何よりも重要です。実際にこの事故の後、工事業者は作業中の歩道通行を一時的に封鎖し、迂回路を設ける対応をとることになりました。 

保険はあくまで「最後の備え」

安全対策を講じてもゼロリスクにはできません。万が一の事故で高額な損害賠償を求められた際に、事業者が存続を続けられるかどうかは保険加入にかかっています。特に都市部の現場は人通りが多いため、請負業者賠償責任保険の加入は必須です。 

企業イメージへの影響も考慮

事故は、補償をすることで金銭的には解決できても、地域住民や施主の信頼を損ねる可能性があります。事故後の迅速な謝罪と説明責任、安全管理体制の改善は、保険では補えない「企業の信用」を守るために欠かせません。 

◆総括

落下物による通行人へのケガは、建設業において典型的かつ重大なリスクです。安全管理を徹底しても完全には防ぎきれず、実際に数百万円〜数千万円規模の賠償が発生することがあります。

今回の事例のように、請負業者賠償責任保険がなければ、企業は一度の事故で大きな財務的打撃を受ける可能性があります。

「防止策の徹底」+「保険による備え」

この両輪があって初めて、建設業は安定した事業運営を継続できると言えます。転ばぬ先の杖ということを意識することが、建設業経営においては重要な考え方です。 

事例②:施工中の火災による建物損害

◆事故の状況

ある商業施設の改修工事の現場での事例です。既存の壁面を補強するため、溶接作業を行っていた際に、飛び散った火花が近くにあった断熱材へ引火してしまいました。当時、作業員は火花が飛ばないよう遮蔽板を設置していましたが、わずかな隙間から火花が侵入した結果の火災事故です。断熱材は発火性が高く、すぐに火が広がり、数分のうちに煙が充満しました。

初期消火を試みたものの、火の勢いは収まらず、消防が出動する大規模な火災となり、施工中の建物の一部が焼失。幸い人的被害はありませんでしたが、建物の修復には数千万円単位の費用がかかることとなりました。 

◆発生後の対応

現場監督は直ちに消防と警察へ通報し、現場作業員の避難誘導を行いました。施主に対しても事故の報告が行われ、工事は全面的に中断。工事の遅延に加え、追加工事費用や損害賠償責任が懸念される事態となりました。

火災は「作業中の過失」によって発生したものと判断されましたが、業者単独で修復費用を負担することは困難でした。 

◆保険金支払いの流れ

ここで活用されたのが「建設工事保険」です。この保険は、施工中の建物や資材が火災・風災・水災・盗難などの偶然な事故で損害を受けた際に補償されるものです。

調査の結果、焼失部分の復旧費用、内装のやり直しに伴う資材費・人件費などが認められ、最終的に約4,500万円が保険金として支払われました。これにより、事業者は倒産の危機を免れ、工事を再開することができました。 

◆学ぶべきポイント

以下、今回の事例から学ぶべきポイントを整理します。

施工中の火災は珍しくないという認識をもつこと

溶接・溶断・塗装・防水工事など火気を扱う作業は火災リスクが非常に高いです。特に断熱材や塗料は発火性が高いため、火花や熱が少しでも届くと一気に燃え広がる危険があります。

火災防止策は万全にすべき

火気作業時には遮蔽板・消火器の常備・火花の飛散範囲の確認・火気管理者の配置などが必須です。また、作業後も「火の見回り」を一定時間行い、残火がないか確認することが重要です。

保険がなければ経営に致命傷となりうる

施工中の建物は施主にとって大切な資産であり、その損害を施工業者が全額負担するのは現実的ではありません。数千万円〜数億円規模の損害が発生することもあり、建設工事保険がなければ企業は一度の事故で経営破綻に追い込まれる可能性があります。

施主との信頼維持にもつながる

事故後、スムーズに補償を行えたことで、施主は「しっかり保険対応している業者だ」と安心しました。逆に、保険未加入で補償ができない事態となれば、施主との関係は完全に破綻するでしょう。保険加入は単なるリスクヘッジにとどまらず、取引先からの信頼確保にも直結します。 

◆総括

施工中の火災は、建設業において決して珍しい事故ではありません。特に溶接や防水工事など火気を扱う工程では、たとえ一瞬の油断でも数千万円規模の損害につながることがあります。

この事例では建設工事保険が機能したことで、事業者は経営危機を回避し、施主との信頼関係も維持することができました。

建設業に携わる企業にとって、

・火災防止の徹底した安全管理
・万一の事故に備えた建設工事保険への加入

この二つが不可欠であることを改めて示す事例となりました。 

事例③:完成後の施工不良による事故

◆事故の状況

ある中規模マンションの外壁改修工事での事例です。工事完了から半年後、大雨の際に外壁の一部から雨漏りが発生。住民からの苦情を受け、建物の点検を行ったところ、シーリング材の充填不足が原因であることが判明しました。さらに数か月後、雨漏りによって内装の壁紙や床材が損傷し、住戸の一部ではカビの発生も確認されました。

このように施工不良が原因で建物自体に損害が及んだだけでなく、居住者の生活にも影響を及ぼす事態となりました。

◆発生後の対応

施工業者はまず住民への謝罪を行い、応急的に雨漏り部分を補修しました。しかし損害が拡大していたため、全面的な再施工が必要と判断されました。住戸の修繕、内装の張替え、仮住まいの手配など、膨大な費用が想定され、施工業者単独で負担するのは困難な状況でした。

さらに、施主(管理組合)からは「工事の瑕疵に基づく損害賠償」を正式に請求されることになり、賠償責任が法的にも明確化しました。

◆保険金支払いの流れ

ここで役立ったのが 生産物賠償責任保険(PL保険)です。この保険は「施工が完了・引渡し後に、施工不良や過失が原因で第三者に損害を与えた場合」に適用されます。

損害調査の結果、

・外壁の再施工費用
・住戸内の修繕費(壁紙・床材の張替え等)
・居住者の仮住まい費用

などが補償対象と認定され、最終的に約3,000万円の保険金が支払われました。これにより施工業者は、巨額の賠償金を自己資金で全額負担する事態を免れました。

◆学ぶべきポイント

以下、今回の事例から学ぶべきポイントを整理します。

完成後の事故は数年後に表面化することもある

施工不良は工事直後には発見されず、雨漏りやひび割れのように時間が経ってから顕在化することがあります。そのため、完成後も一定期間リスクが継続する点を認識しておく必要があります。 

施工業者の賠償責任は重大

施工不良は施主や入居者の財産を直接損なうため、損害賠償請求に発展しやすく、多額の費用を伴うことが多いです。

生産物賠償責任保険の重要性

工事中の事故を補償する「建設工事保険」や「請負業者賠償責任保険」だけでなく、引渡し後に生じるリスクをカバーする「生産物賠償責任保険(PL保険)」が不可欠です。

品質管理体制の強化が不可欠

事故を未然に防ぐためには、施工チェックリストの徹底、第三者検査の導入、材料管理の徹底など、品質管理体制を強化することが必要です。 

◆総括

完成後の施工不良による事故は、施工業者にとって最も大きなリスクのひとつです。この事例ではシーリング施工不良という一見些細なミスが、住民の生活環境にまで影響を及ぼし、数千万円規模の損害賠償に発展しました。

施工中のリスク(建設工事保険や請負業者賠償責任保険)と完成後のリスク(生産物賠償責任保険)の両方に備えることが、建設業におけるリスクマネジメントの要です。 

事例④:労働災害による補償

◆事故の状況

ある建設現場で鉄骨組立工事を行っていた際の事例です。高所作業をしていた作業員が足場板の固定不良により転落し、骨折と頭部の裂傷という重傷を負いました。幸い命に別状はありませんでしたが、数か月の入院とリハビリが必要となり、長期間の就労不能が見込まれる状況となりました。

この事故は、作業環境の不備(足場板の固定不足)と安全帯の未使用という複合的な原因によって発生した典型的な労災事故といえます。 

◆発生後の対応

事故発生後、現場監督はすぐに救急搬送を手配し、労働基準監督署へ労災事故として報告しました。工事は一時中断され、事故原因の調査と再発防止策の検討が行われました。

施工会社は被災した作業員とその家族に対して謝罪を行い、治療費や休業補償についての説明を実施。さらに、安全管理体制の不備が明らかになったため、社内での安全教育や足場点検体制の強化を急ぎました。 

◆保険金支払いの流れ

このケースでは、まず政府管掌の労災保険(労働者災害補償保険)が適用されます。労災保険によって、 

・治療費(療養補償給付)
・休業中の補償(休業補償給付:平均賃金の約8割)
・障害が残った場合の障害補償給付

などが支給対象とされました。

さらに、企業が任意で加入していた労災上乗せ保険により、政府管掌の労災保険でカバーしきれない部分(休業中の収入減少分や家族への見舞金など)が補填されました。最終的に、治療費・生活補償・見舞金を含めて総額約2,000万円が保険金として支払われ、作業員とその家族の生活の安定が確保されました。

◆学ぶべきポイント

以下、今回の事例から学ぶべきポイントを整理します。

労災はいつでも起こり得る

建設現場は高所作業・重量物の取り扱い・重機の使用など危険が多く、業種別で見ても労災発生率が高い分野です。 

安全管理の徹底が第一

足場の固定確認、安全帯やヘルメットの使用徹底、KY活動(危険予知活動)など、日常の安全管理を怠ると重大事故につながります。 

政府管掌の労災保険だけでは不十分な場合が多い

政府管掌の労災保険は最低限の補償ですが、休業補償は平均賃金の8割程度にとどまり、家族の生活費やローン返済などに十分でないケースもあります。企業が任意の「労災上乗せ保険」や「傷害保険」に加入しておくことで、従業員と家族を守ることができます。

企業の信用維持にも直結

事故後の対応が不十分であれば、労働基準監督署からの行政指導や、元請・発注者からの信頼喪失につながります。迅速で誠実な補償対応は、企業の社会的信用を守る上でも欠かせません。 

◆総括

労働災害は建設業における最大のリスクの一つであり、ひとたび事故が起きれば作業員本人とその家族の生活に甚大な影響を及ぼします。この事例では、政府管掌の労災保険と労災上乗せ保険によって十分な補償が行われ、被災者と家族の生活を支えることができました。しかし、本来であれば事故自体を未然に防ぐことが最も重要と考えるべきです。

建設業の経営者・現場管理者は、

・徹底した安全管理の実践
・労災保険に加えた上乗せ保険の整備

この二つを柱に、労働災害への備えを怠らないことが求められます。

事例⑤:自然災害による工期遅延

◆事故の状況

ある地方都市で大型物流倉庫の建設工事が行われていた際、台風による記録的な豪雨と暴風が直撃しました。工事現場では仮設の足場や資材置き場が大きな被害を受け、鉄骨の一部が倒壊。さらに現場は冠水し、工事が完全にストップしました。

建物自体はまだ基礎工事段階で大きな損害は免れたものの、資材の一部が使用不能となり、復旧作業や再調達が必要となったため、工期は大幅に遅延しました。その結果、発注者からは「契約納期を守れないことによる損害賠償」の請求が懸念される状況になりました。

◆発生後の対応

施工会社は被害状況を速やかに調査し、施主に対して被害報告と工期遅延の見込みを説明しました。並行して、倒壊した仮設物の撤去、冠水した現場の排水、再利用できない資材の仕分けなどを行い、安全確認のうえで復旧作業を開始。

また、今後の工期短縮のため、作業員の増員や夜間工事を導入するなど工程の再編成を実施しましたが、それでも当初契約より数か月の遅れが避けられない状況でした。

◆保険金支払いの流れ

このケースでは、まず建設工事保険によって自然災害で損害を受けた資材や仮設物の修復費用が補償されました。さらに、契約条件に基づき工期遅延によって施主に損害賠償責任が発生したため、企業が加入していた工事遅延損害保険(工事の利益保険、あるいは請負業者賠償責任保険の特約)が適用されました。

これらの保険により、

・資材再調達にかかる追加費用
・工期遅延によって施主に支払う違約金の一部
・復旧に必要な追加人件費

などがカバーされ、最終的に約6,000万円の保険金が支払われました。

これにより、施工会社は経営への大打撃を避けることができました。

◆学ぶべきポイント

以下、今回の事例から学ぶべきポイントを整理します。

自然災害は不可抗力だがリスク管理は必須

台風・豪雨・地震など自然災害は不可避であり、施工業者の過失がなくても工期に影響を与えます。そのため、契約時点で自然災害リスクをどう取り扱うかを明確にしておくことが重要です。

保険の範囲を正しく理解しておく

建設工事保険は資材や仮設物の損害を補償しますが、工期遅延そのものはカバーされません。工期遅延に備えるには「工事遅延損害保険」や「利益保険」など、別途の補償が必要です。

契約条項の整理が不可欠

災害による工期遅延を「不可抗力」として契約上免責とする場合もあれば、賠償請求対象とされる場合もあります。契約時に発注者との取り決めを明確にしておくことが、後のトラブル防止につながります。

工程管理とBCP(事業継続計画)の重要性

自然災害を完全に防ぐことはできませんが、被害発生時にいかに早く復旧し、工期遅延を最小限に抑えるかが企業の信頼に直結します。代替資材の調達ルートや復旧作業の体制をあらかじめ準備しておくことが重要です。

◆総括

自然災害による工期遅延は、建設業にとって避けがたいリスクのひとつです。この事例では、建設工事保険と工事遅延損害保険を併用することで、資材損害と工期遅延による賠償負担をカバーでき、施工会社は経営危機を免れました。自然災害は不可抗力である一方、保険や契約条項の整備、安全・工程管理の徹底によってリスクを最小限に抑えることは可能です。

建設業の経営者や現場責任者は、こうした災害リスクを前提に備えを行うことが、長期的な企業存続と信用維持のために不可欠といえるでしょう。

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