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2024.12.10

労使協定と就業規則の違いについて解説いたします。

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労使協定と就業規則の違いについて解説いたします。

会社に就職するということは、会社と労働者との間で雇用契約を締結することを意味します。

その際に締結される雇用契約書には、就業時間や就業場所、賃金等、労働条件の記載が必須となっていて、労使双方で合意した内容となっています。

一方で、会社には就業規則や労使協定等、雇用契約のほかにも労使間の契約とされるものが多くあり、何が何だかわからないと思われた方は多いのではないでしょうか。

今回の記事では、労使間の契約事についての概要を説明し、特にまぎらわしい労使協定と就業規則の関係について解説するとともに、労使協定の中の36協定について深掘りしていきたいと思います。 

労使協定と就業規則の違いについて解説いたします。3

労使間の約束事や契約

会社と労働者との間の契約・約束事は様々なものがあります。

代表的なものは雇用契約、労働協約、就業規則、労使協定です。

●雇用契約
●労働協約
●就業規則
●労使協定

それぞれについて解説していきます。 

雇用契約とは

雇用契約とは、労働者が雇用主のもとで労働し、雇用主がその対価として賃金を支払うことを約する契約をいいます。

雇用契約は民法上、諾成契約(※)とされていますが、労使双方で雇用契約書という書面を取り交わすのが一般的です。 

(※)諾成契約・・・必ずしも書面を必要とせず、当事者双方の合意のみで成立する契約。 

雇用契約の締結にあたり、明示しなければならない事項として、以下2つの注意点があります。 

絶対的明示事項

労働条件の中で、必ず明示しなければならない事項です。

以下の項目が該当します。 

・労働契約の期間に関する事項

・有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項

・就業場所、および従事すべき業務に関する事項

・労働時間、休憩、休日、休暇等に関する事項

・賃金に関する事項

・昇給に関する事項

・退職(解雇を含む)に関する事項 

相対的明示事項

会社が定めをした場合には、必ず明示しなければならない項目です。

もし定めをしていなければ明示する必要はありません。

具体的には下記のような項目です。 

・退職手当に関する事項

・臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)に関する事項

・労働者に負担させるべき食費、作業服等に関する事項

・安全衛生に関する事項

・職業訓練に関する事項

・災害補償および業務外の疾病扶助に関する事項

・表彰および制裁に関する事項

・休職に関する事項 

なお、雇用契約書には絶対的明示事項は必ず記載する必要があります。

一方で、相対的明示事項は必ずしも書面に記載する必要はなく、口頭での説明で問題ないとされています。

しかし言った言わないの問題を未然に防止する意味でも、こちらも書面にする方が望ましいでしょう。 

労働協約とは

労働協約とは、労働組合と使用者との間で交わされる重要な合意書をいいます。

ここでは、労働条件や労働する上での環境、待遇等などについて、労働組合と使用者との間で取り決めた内容が記載されます。

なお、労働協約の締結当事者は労働組合と使用者となり、労働協約の適用を受けるのはその労働組合に加入している者のみになります。

しかし下記の要件を満たすと、「一般的拘束力」と呼ばれる効力が発生し、組合員以外の労働者にも労働協約が拡張適用されることになります。 

一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。

(労働組合法第17条 一般的拘束力より) 

就業規則とは

就業規則とは、労働者が働くにあたってのルールや労働条件、職場内の決まり等を明文化したものです。

労働基準法にも常時10人以上の労働者を使用する使用者に作成が義務付けられていて、作成義務を怠った場合には罰則の定めもある、非常に重要な規定です。 

就業規則に必ず定めなければならない事項

就業規則には必ず定めなければならない事項があり、かつそれらの各事項が労働基準法を下回る基準であってはなりません。

・これを「絶対的必要記載事項」といいます。具体的には下記の事項となります。 

・始業、終業時刻、休憩時間、休日に関する事項

・労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合における、就業時転換に関する事項

・賃金の計算・支払方法、締切り、支払の時期、および昇給に関する事項

・退職に関する事項(解雇の事由を含む) 

(労働基準法第89条より要約して記載しています) 

会社内に定めをした場合には、必ず就業規則に記載しなければならない事項

これを「絶対的必要記載事項」に対して、「相対的必要記載事項」といいます。具体的には下記の事項です。 

・退職手当に関する事項

・臨時の賃金等(退職手当を除く)、最低賃金額に関する事項

・安全衛生に関する事項

・職業訓練に関する事項

・災害補償、業務外の疾病扶助に関する事項

・表彰、制裁に関する事項

・その他、すべての労働者に適用される事項 

(労働基準法第89条より要約して記載しています) 

なお、就業規則は公序良俗に反するものでない限り、基本的にどのようなことを記載してもよいのです。

なかには使用者が就業規則を定めるにあたっての、従業員に対する想いを就業規則序文として記載していたり、ユニークな福利厚生制度を記載している会社もあります。

就業規則は会社のカラーが如実に表れる、とても面白い部分です。 

就業規則作成にあたっての注意点

就業規則を作成し、従業員に適用するにあたっての手続きについても、労働基準法に規定されています。規定されているのは以下の内容になります。 

●就業規則の作成にあたり、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、当該労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければならない。

●労働基準監督署に就業規則を届け出るにあたっては、その意見書を添付しなければならない。

 (※労働基準法第90条より要約して記載しています) 

具体的な流れとして、まず就業規則の案として、全文を全従業員に周知し、確認してもらいます。

その後、労働者の過半数で組織する労働組合がない会社の場合、従業員代表として選任された者の意見を聴取することになるのですが、ここで注意が必要です。

従業員の過半数代表者は、管理監督者であってはならず、使用者の恣意的な選任であってもならないという点です。

使用者の意向が反映されやすく、適切な規定とならないおそれが大きいためです。

なお、選任方法さえ適切なものであれば、実際の意見書の記載内容は不問とされます。

極端な話、意見書に記載された内容が、公開された就業規則案に全面的に反対するものであったとしても、労働基準監督署は就業規則の届出を受理します。 

労使協定とは

労使協定とは、読んで字のごとく、労使間で締結される協定書を意味します。

労使協定を締結する目的は、労働基準法で定められた原則から外れた働き方をする場合について、労使間で合意し、その合意の証として協定を結ぶことにあります。

なかには労働基準監督署への届出が義務付けられている労使協定もあり(後述します)、届出義務違反を犯した場合には、罰則の適用可能性もある、非常に重要なものなのです。 

労使協定の種類

労使協定には様々な種類があります。

下記のものは労働基準監督署への届出が必要であり、注意が必要です。 

・使用者が委託を受けて労働者の貯蓄金を管理する場合

1年単位の変形労働時間制を導入する場合

1週間単位の非定型的変形労働時間制の労使協定

・時間外、休日労働に関する労使協定

・事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定

・専門業務型裁量労働制に関する労使協定 

特に重要な36協定について

最後に、労使協定の中でも特に重要なもの、36協定について解説します。

上記、労使協定の種類の中で紹介した、時間外、休日労働に関する労使協定です。

36(サブロク)協定という言葉は多くの方が一度は聞いたことがあることと思います。

この36(サブロク)とは、労働基準法第36条を表し、そこでは下記のように規定されています。 

使用者は、労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者と書面による協定を取り交わし、労働基準監督署に届け出た場合は、労働時間又は休日に関する規定にかかわらず、労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。 

(労働基準法第36条より要約して記載しています)

 そもそも労働基準法においては、法定労働時間として18時間、1週間で40時間(特例事業を除く)と定められています。

この規定は、労働者の健康に配慮した基準となっているという面もあります。

 

【参考条文:労働基準法第32条 (労働時間)】

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。 

労働時間が増えればそれに比例して過労死リスクも高まります。

使用者側には、安全配慮義務の一環で労働時間を適切に管理する必要があり、その指標が労働基準法第36条に定められているということになります。

しかし業務の都合上、どうしても時間外労働や休日労働が発生することはあります。

そのような場合には、下記の項目を定めて労使間で36協定を締結し、労働基準監督署に届出をしなければなりません。 

・時間外労働、休日労働をする労働者の範囲

・時間外労働、休日労働をする具体的な理由

・法定労働時間を超えて労働する時間数

 ただし、上記の項目を定めたからと言って、無制限に時間外労働が認められるわけではありません。

具体的には月45時間、1年間でも360時間が上限となります。

36協定違反には企業側に罰則が適用される可能性がありますので注意が必要です。 

まとめ

今回の記事では、労使間で取り交わされる契約や協定について解説し、労使協定、とりわけ36協定に深掘りしました。

労使間の約束事は、すべて労働基準法に代表される法令が根拠となっています。

そのため協定に違反したり、そもそも協定を締結しなかったりすると、企業には厳しい罰則が適用される可能性があります。

法令に関する理解を深め、適切な労務管理を心がけてよりよい職場環境の形成を目指しましょう。

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