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2024.11.16

建設工事・解体業での物損事故!請負業者賠償責任保険金支払い事例30件を一挙公開

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著者情報 森 逸行 FP歴15年 経験した事を伝え解決に導く『金融パーソナルトレーナー』

建設工事業での物損の賠償事故!保険金支払い事例30件を一挙公開

 建設工事を営んでいる事業者は、様々なリスクを想定しなければなりません。

作業員の労災リスク、第三者に対する賠償リスク、工期を遅延することによるリスク等、様々なことが起こり得ます。

さらに第三者に対する賠償にしても、その第三者にケガや後遺障害を負わせてしまったのか、物を壊してしまったのか等、さらに細分化していかなくてはなりません。

今回の記事では、建設事業者が考えるべきリスクで、第三者に対する物損害という点に絞って考察したいと思います。

本記事の後半では、実際の保険金支払い事例も紹介します。 

目次

物損事故とは?

そもそも物損事故とはどういった事故を指すのでしょう。

一般的な解釈として、人のケガは発生しておらず、物の損害のみが発生した事故を指します。

一見すると自動車事故に多いように思われがちですが、何も自動車事故に限った話ではありません。

冒頭にお話したように、建設工事現場での作業中にも物損事故は十分に起こりうる事故です。

特に建設工事現場ではその規模によっては非常に高額の損害に発展してしまうケースもあるのです。

物損事故は、建設事業者にとって決して軽視できない問題です。 

建設工事現場で事故が起きた際、責任を負うのは?

たとえば建設工事現場における解体作業中に、高層の足場から工具を落としてしまい、隣家の駐車場に停めてあった自動車に損害を与えてしまったとします。

このケースで、自動車に損害を与えてしまった責任は、誰が負わなくてはならないのでしょう。

このような場合、原則として解体作業をしている工事業者が損害賠償責任を負うことになります。

実際に工具を落としてしまった作業員個人は、作業に起因する事故の為、責任を負うことはありませんが、責任を問われることもあります(民法715条より)。

今回の事例では一目瞭然ですが、通常、建設工事現場で第三者に損害を及ぼす場合、施工のどこかに過失が存在することがほとんどです。

そのため、民法709条の不法行為として工事にあたった業者が責任を負うことになるのです。 

民法第709条(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法第715条(使用者等の責任)

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

 ただし例外もあります。建設工事においては発注者から具体的な指示があったり、発注者が工事に必要となる材料や道具を提供する場合もあります。

この場合で発注者からの指示や提供された材料、道具が原因で損害が発生した場合は発注者に過失ありとみなされ、発注者が損害賠償責任を負うことになるのです。 

責任の所在が工事業者にあろうと、発注者にあろうと、建設工事現場で起こる第三者に対する賠償責任は、損害額が甚大になる危険をはらんでいます。

このような賠償責任を補償するために、請負業者賠償責任保険を適切に付保することが必要です。

建設工事業での物損の賠償事故!保険金支払い事例30件を一挙公開-2

請負業者賠償責任保険とは

請負業者賠償責任保険は建設工事業者にとって必須の保険です。

この保険は、請負工事や建設工事の作業にあたって、誤って第三者の身体にケガを負わせてしまったり財物に損害を与えてしまったりした場合の、建設工事業者が負うべき法律上の賠償責任を補償するものです。 

補償対象となる工事

建設工事業者が請け負う工事であれば、どんなものでも補償内容となるわけではありません。

保険会社によって取り扱いは異なりますが、一般的には下記の通りとなります。必ず契約前に保険会社に確認するようにしましょう。 

・各種地下工事
・道路建設工事
・道路等の舗装工事
・軌道建設工事
・ビル建設工事
・橋りょう建設工事
・各種建築物設備工事
・移動・解体・取壊工事
・プラント・機械装置の組立・据付工事
・高層構築物(鉄塔・高架線等)建築工事
・建築 物設備・機械装置等の改修または維持工事
・土地造成工事、荷役、清掃、造園、芝刈・草刈作業、除草作業、殺虫殺そ(害虫等駆除)
・引越、運送、撮影・取材、除雪、調査・測量、放置車両確認業務、ビルメンテナンス業務 
(※某王手損害保険会社の請負業者賠償責任保険のパンフレットより抜粋) 

補償対象となる主な場合

請負業者賠償責任保険の補償対象として想定している事故例は下記の通りです。 

請負作業中の損害

・ビル改築工事中に高層の作業現場より工具を過失により落としてしまい、通行人にケガを負わせた。

・足場の備え付けの不備により倒壊を起こし、たまたま通りかかった自動車の上に落とし、キズをつけてしまった。 

請負作業遂行のために所有、使用または管理している施設の欠陥、管理不備による事故

・資材置き場においてあった工具類が倒れてしまい、たまたま通りかかった通行人にケガを負わせた。 

支払い対象となる損害

請負業者賠償責任保険では、どのような保険金を受け取ることができるのでしょう。

某大手損害保険会社のパンフレットでは、支払い対象となる損害として下記6種類の費用を規定しています。 

●損害賠償金
●損害防止費用
●権利保全行使費用
●緊急措置費用
●協力費用
●争訟費用

 上記6種類は基本補償であり、保険会社ごとの相違点はなく、ほぼ全社統一の取り扱いとなっています。

なお各費用の解説は、下記サイトにて詳しく説明していますので、参考にしてください。 

【関連記事:生産物・PL保険賠償事故!損害保険金支払い事例17件を一挙公開】←リンク

建設工事業での物損の賠償事故!保険金支払い事例30件を一挙公開-3

実際の保険金支払事例を紹介

最後に、実際に対応した保険金の支払い事例を紹介します。

事故内容・詳細:作業中に壁に穴をあけた際、配管を切断してしまった。

保険金支払額:240,900円

事故内容・詳細:店舗解体時に鉄の梁にぶつけた。

保険金支払額:434,800円

事故内容・詳細:解体工事作業中、プレハブの階段を重機でへこませる。

保険金支払額:410,300円

事故内容・詳細:作業中にユンボが横転。建物に大損害を与える。

保険金支払額:3,480,020円

事故内容・詳細:解体作業中、付近のブロック塀を破損。

保険金支払額:624,800円

事故内容・詳細:解体作業中、付近の建物の壁・シャッターを破損。

保険金支払額:469,800円

事故内容・詳細:工事中に誤って付近の物置を破損。

保険金支払額:386,000円

事故内容・詳細:道路上空の架空線に接触し、切断させてしまった。

クレーン積載トラックにて工具・資材を運搬中、ブームが伸ばしたままになっており、道路上空の架空線に接触し、切断させてしまった。

保険金支払額:3,823,400円

事故内容・詳細:誤って埋没されていた給水管を破損させてしまう。

転落防止用の手摺り設置工事において、誤って埋没されていた給水管を破損させてしまう。

保険金支払額:1,628,300円

事故内容・詳細:解体作業中にレンタルユンボが鉄骨にあたり破損させてしまう。

保険金支払額:532,800円

事故内容・詳細:解体作業中、現場近くに停車していた自動車に破片が飛び、破損させてしまう。

保険金支払額:438,300円

事故内容・詳細:解体作業中、解体予定のない壁を壊してしまう。

保険金支払額:1,273,877円

事故内容・詳細:解体作業中に足場が倒れて水道管を破損させてしまう。

保険金支払額:893,400円

事故内容・詳細:作業中、ハンドル操作を誤った重機が隣家建物に接触。損害を与える。

保険金支払額:1,876,900円

事故内容・詳細:解体作業中、コンクリートにレンタルユンボのアームが当たり、大規模な破損となる。

保険金支払額:2,118,300円

事故内容・詳細:建設作業中、作業ミスから隣の家の雨どいを破損させてしまう。

保険金支払額:393,000円

事故内容・詳細:ブランケットアームがコンクリートの基礎に当たり、破損させてしまう。

保険金支払額:298,600円

事故内容・詳細:隣の駐車場に停めてあった車に落下、傷を負わせてしまう。

屋根材を剥がしていたところ、養生シートを誤って破ってしまい隣の駐車場に停めてあった車に落下、傷を負わせてしまう。

保険金支払額:228,000円

事故内容・詳細:近くに停めてあった高級車に当て、キズをつけてしまった。

解体現場において足場設置作業中、資材運搬の際に近くに停めてあった高級車に当て、キズをつけてしまった。

保険金支払額:1,680,000円

事故内容・詳細:ユンボでコンクリートを解体中、隣のブロック塀を引っ張ってしまい破損させてしまった。

保険金支払額:2,328,000円

事故内容・詳細:解体作業中、隣家のフェンスを壊してしまった。

保険金支払額:782,300円

事故内容・詳細:解体作業中に重機が隣家に当たり壁を壊してしまった。

保険金支払額:847,600円

事故内容・詳細:建設作業中、隣のアパートの壁破損させてしまった。

保険金支払額:198,900円

事故内容・詳細:エアコン設置工事で穴をあける箇所を間違えてしまった。

保険金支払額:38,000円

事故内容・詳細:足場組立時にパイプが落下させ、隣家の扉に当たり破損させてしまった。

保険金支払額:178,000円

事故内容・詳細:駐車場と道路のアスファルト破損。

保険金支払額:1,189,000円

事故内容・詳細:外壁工事の足場の設置作業中、単管をカーポートの屋根に落下させて破損させた。

保険金支払額:282,000円

事故内容・詳細:整地作業中、ガス管を破損させてしまう。

保険金支払額:828,000円

事故内容・詳細:作業中にガス管破損、隣の飲食店が休業せざるをえなくなる

保険金支払額:428,000円

事故内容・詳細:作業中、隣家の壁、パイプ、室外機等を破損させてしまう。

保険金支払額:348,000円 

上記はあくまで物損害に絞った事例の紹介です。

それでも規模が大きいものとなると、損害額は数百万円にものぼります。

これは決して軽視することはできません。

請負業者賠償責任保険でしっかり備えておくことが非常に重要です。 

まとめ

今回の記事では、建設工事業者が考えるべき第三者に対するリスクで、物損害に絞って考察し、備えるべき保険として請負業者賠償責任保険の補償内容を解説しました。

人のケガの伴わない物損害においても、損害額は大きくなる危険性をはらんでいます。

今回の記事で紹介した事例は、すべて実際に起こった事故です。

事故を起こさないよう、普段から注意を払って仕事に取り組むのは当然ですが、それでも人為的ミスから事故は起こります。

そのようなときのために、しっかり請負業者賠償責任保険で備えておきましょう。

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