建設業や解体業の損害保険料が高い・安い!保険料を安くする方法と補償内容を解説します。
建設業や解体業を営む上で必ず必要になるのが損害保険になります。
損害保険というと自動車保険と火災保険の2つが思い浮かぶのではないでしょうか。
しかし今日、企業を営む事業者には賠償責任や労災事故、サイバー攻撃と多岐に渡るリスクに晒されています。
そんな中で、企業や経営者を守るためにある保険が損害保険になります。
今回は実際にご相談いただいた建築解体工事業のお客様を例に、企業や経営者が損害保険の加入や見直しを検討するうえでのポイントに関して質問に回答していきます。
目次
質問:建設業・解体工事業で必要とされる損害保険を教えてください。
解体工事業で必要とされる損害保険を教えてください。
これから加入予定ですが全く知識がありません。聞くところによると賠償責任保険や業務災害保険など入ると良いと聞きました。
現在は、民間の仕事や公共施設の仕事も受注しております。簡単で良いので損害保険で加入が必要な補償内容を教えてください
回答|建設業や解体工事業に限らず、全ての事業者が備えるべきは賠償責任保険
事業者は「第三者の」命・財物・情報・納期といったあらゆる事柄に責任を負っています。
他人の命や財物をピンポイントで補償する商品もありますが、準備の漏れや免責(補償対象外となる)事由で保険金が支払われないという事態を防ぐには、総合的に補償される賠償総合保険があります。
建設業や解体工事業での賠償責任は?
事業の遂行によって生じた偶然な事故に起因する、対人・対物事故等による賠償損害(施設・業務遂行、生産物・仕事の結果、借用不動産など)費用(被害者治療費等、初期対応費用、訴訟対応費用など)を包括的に補償する商品です。
建設業や解体工事業での賠償総合の補償内容
受託物・借用財物・支給財物の損壊等についても補償する
業務遂行に関連する偶然な事故による損害
施設の所有・使用・管理に関連する偶然な事故による損害
生産物・仕事の結果に関連する偶然な事故による損害
作業場内、施設内における自動車および作業場内における車両に起因する事故
作業を行う対象物の損壊
従業員が所有する自動車を業務に伴い使用した際に発生した事故
国外出張業務に起因する事故
生産物・仕事の目的物自体の損壊
生産物が一時的に国外に持ち出されたまたは流出した際に発生した事故
お客さまから預かった財物の損壊
業務に伴い管理する受託物、借用財物、支給財物の損壊
工事が遅延した場合の遅延規定に基づく損害賠償金
データ損壊復旧費用補償
他人のデータ・プログラムの消失・損壊
被害者の治療費を負担したとき等、原因となった事故の発生の日からその日を含めて1年以内に被保険者が現実に負担した費用で、通常要する費用
事故現場の後片づけをしたとき等、緊急的対応のために支出した費用
書類の作成など、訴訟に関する諸費用等、損害賠償請求を解決するために要した費用
他人の財物の損壊による復旧費が時価額を上回る場合の超過費用サイバーリスク補償特約
「他人の情報の漏えいまたはそのおそれ」や「IT事故」「サイバー攻撃」等により負担する賠償損害および費用損害を補償します。
使用者賠償責任補償特約
労災事故による被用者(従業員等)や遺族に対する記名被保険者とその役員が負担する損害賠償責任を補償します。
雇用慣行賠償責任補償特約
被用者等(従業員、採用応募者等)に対する差別的行為、ハラスメント、不当解雇等の不当行為や第三者ハラスメントに起因して記名被保険者とその役員および使用人等が負担する損害賠償責任を補償します。
借用不動産損壊補償特約
借用不動産が損壊した場合に、貸主に対する損害賠償責任を補償します。
生産物の欠陥等による経済損害補償特約
オプション補償(費用損害・利益損害)
リコール費用補償特約
生産物の欠陥に起因して、日本国内に存在する生産物の回収等を実施することにより生じた費用を補償します。
対人・対物事故の「おそれ」によるリコールも補償します。
弁護士費用特約(企業総合用)
対人事故または対物事故による被害が発生したことによって、被保険者が損害賠償請求を弁護士等に委任した場合の費用等や弁護士等への法律相談費用を補償します(弁護士費用等保険金)。
休業損害補償特約
火災や自然災害等による損害
休業損害補償特約(食中毒・特定感染症補償対象外特約セット)
建設業や解体工事業での業務災害の補償内容
従業員の命に対する責任という点では業務災害保険も事業者が備える補償の一つです。
最近では業務災害保険の支払事由を業務時間外にも拡大し、福利厚生と歌う事業者も増えてきています。
その他のリスクでは従来の自動車・火災のほか、メール経由のサイバー攻撃から個人情報の流出に備えたサイバー保険や役員個人を守る役員賠償責任保険などがあります。
質問:建設業や解体工事業の損害保険は長期での契約を結ぶことができますでしょうか?
解体工事業の損害保険は長期での契約を結ぶことができますでしょうか?
長期での契約が出来れば、火災保険の様に保険料の値上がりが抑制できるので良いと思います。契約期間と値上がりの仕組みも簡単に教えていただきたいです。
回答|建設業や解体工事業の保険契約期間は原則1年契約になります。
契約の期間は保険会社や商品により異なるものの、原則1年間です。
自動車保険や火災保険では複数年での契約が可能ですが、先に挙げた賠償責任保険や業務災害保険といった事業者向けの損害保険の保険料は、過去1年間の売上高や従業員数により算出されます。
保険料を算出する上では、売上高が大きい事や従業員数が多いほど保険料は高くなります。
また一般的に、前年の事故件数や保険会社からの保険金支払金額によって保険料が算出される為、契約は1年ごとに結んでいただく必要があります。
質問:建設業や解体工事業で加入する際の業種で保険料が大きく変わると聞きました。
現在、解体工事業をしており損害保険の加入を検討しております。加入する際の業種で保険料が大きく変わると聞きました。
この場合だと解体工事業での業種に限られますでしょうか?
仮に建設業での業種で加入する事は可能でしょうか?教えてください。
回答|建設業や解体工事業の売上割合で業種が確定します。
解体工事業の売上割合で業種が確定します。保険会社や商品により、売上高全体のうち最も割合の大きな業種を告知する場合もあれば、業績が挙がっている全ての業種を細かく告知する場合もあります。また売上高と従業員数とで申告する数字を選ぶことができる保険商品もあります。
少数精鋭で生産性が高いのであれば従業員数を申告し、立ち上げまもなく従業員数は潤沢だけど業績はまだまだこれからなのであれば売上高を申告すればよい、といった選択が可能です。
いずれのケースでも業種や売上高を偽って申告すると、事故発生時に保険金が支払われなかったり、保険契約が解除されたりという事態にも繋がりかねないので注意が必要です。
質問:建設業や解体工事業で損害保険料安くさせる方法はありますか?
解体工事業で損害保険の見積を取ったら保険料が高額になりました。売上の1%ほどの保険料になりかなりの負担になります。
この高額な保険料をどうにか安くさせる方法はありませんでしょうか?何か良い方法がありましたら教えてください。
回答|最大で70%程度の保険料を抑えることが可能です。
結論からお伝えすると、最大で70%程度の保険料を抑えることが可能です。
例示する見積では、年間保険料が957万円→284万円になり、673万円分の保険料を下げることができました。
保険料を安くする4つのポイントがありますので、ご紹介していきます。
保険料を安くさせるポイント:①損害保険契約を見直す。
加入している損害保険契約を見直す。損害保険は一年で保険期間が終わり、契約満期前の2か月前に更改の案内が保険会社や代理店から届きます。
更改案内ハガキが届いたと同時に加入している損害保険の見直しを行います。
保険料を安くさせるポイント:②複数の保険会社の見積を取る
加入している保険会社以外に2社の見積もりを作成してもらう事です。
損害保険会社を複数社取り扱いのある保険代理店に依頼するのがおすすめです。
見積もりを依頼する時には、現在契約している保険証券と売上金額や従業員数・事故歴を伝えたうえで見積もりを作成してください。
この事前情報を伝えずに見積もりが出てきたとしても、いざ加入しようとしたときにこの保険料では加入できないことも多くありますので事前情報の提供はしっかりと行ってください。
保険料を安くさせるポイント:③保険会社と保険代理店の割引を引き出す
損害保険には保険会社が定める一般的な保険料から一定の割引枠があります。
保険種類や事故履歴によっても割引適応の出来る、出来ないが決まります。
年間の保険料が50万円を超えてくる保険に関しては、大幅な割引が適応できる可能性もあるので保険代理店や担当者に割引の依頼をすると良いかと思います。
もし、保険料割引に前向きでなければ保険代理店や担当者を替える事も検討した方が良いかもしれません。
また、他の保険代理店へセカンドオピニオンとして提案してもらう事でもよいかもしれません。
保険料を安くさせるポイント:④商工会・組合団体で最大58%の割引を適応させる
より割引を適応させるには、商工会・全国中小企業団体中央会・都道府県中小企業団体中央会会員の組合団体等での申込で最大で58%の割引で加入出来ます。
商工会議所等の「団体保険制度」を活用する事で保険料を安くすることができます。
団体保険制度のスケールメリットにより、保険料そのものや事故発生後の保険料の上がり幅を、一般的な加入経路より保険料を安くすることができる可能性があります。
保険会社や商品ごとの保険料差は、業種や売上高の金額帯・従業員数の人数帯により5~10%程度の開きがあり、さらに割引の適用や団体保険制度の利用有無により10~58%割引が適応になり大幅に保険料が安く加入出来ます。
質問:建設業や解体工事業で保険料をより安くして加入するポイントを教えてください。
保険料を少しでも安くして加入したいと思っております。保険料をより安くして加入するポイントを教えてください。
また、保険会社や商品によって保険料差がどの程度あるのか参考までに教えてください。
回答|上記記載の保険料を安くさせるポイント①②③④を実行
上記記載の保険料を安くさせるポイン①②③④をまず実行します。
①損害保険契約を見直す。
②複数の保険会社の見積を取る
③保険会社と保険代理店の割引を引き出す
④商工会・組合団体で最大58%の割引を適応させる
業種が建設業で①②③④を行なえば最安の保険料が引き出せた事になります。
回答|解体業での実例
ここで、より大幅に保険料を安く出来た解体業での実例で解説いたします。
以下の解体業の実例です。
―実例―
建設業・解体業
売上:10億円
売上割合:解体業7割、建設業3割
保険種類:賠償総合保険・業務災害保険
――
会社が損害保険会社3社に見積書作成依頼をし以下の様な見積金額になりました。
A損害保険会社:業種/建設工事業 年間保険料311万円→×
コメント①解体業売上げが7割にも関わらず『建設工事業』の業種で保険料を算出しているため検討できず。
A損害保険会社では、解体業の売り上げが7割になるので、必ず業種の告知は解体業を選択しなくてはいけません。
建設業での業種選択は、告知や業種の違反に当たるのでいくら保険料が安くても事故が起こった時に保険金が出ない可能性があるので、選択肢には入りません。
B損害保険会社:業種/解体業 年間保険料957万円→△
コメント②『解体業』の業種で保険料を算出しているが保険料が957万円と高額になる。
B損害保険会社では、解体業の売り上げが7割になるので、解体業で業種選択するも解体業のリスクが高いとの判断になり保険料が957万円と高額になる。
C損害保険会社:業種/解体業 年間保険料284万円→◎
コメント③『解体業』の業種で保険料を算出しているが保険会社の割引と組合での割引が適応で保険料が284万円と最安値になる。
また、他2社の損害保険会社は、解体業は解体業の業種選択が出来ないが、C損害保険会社は、唯一『建設業』での業種選択ができ保険料を大幅に安くすることが判明しました。
回答|解体工事業の損害保険料は、保険会社によっても大きくかわります。
この様に建設業や解体工事業の損害保険料は、保険会社によっても大きくかわります。
A損害保険会社:年間保険料311万円→×
B損害保険会社:年間保険料957万円→△
C損害保険会社:年間保険料284万円→◎
本ケースのように年間保険料が957万円→284万円になり、673万円(70%程度)の保険料を抑えることが可能です。
損害保険料がここまで差がでると見直しや検討をしっかりと行いたいと思う企業は多いと思います。
建設業や解体工事業で保険料をより安くして加入するポイントは、建設業や解体工事業の損害保険の取り扱い経験が豊富な保険代理店や担当者に依頼する事がポイントになります。