借家人賠償事故!火災保険の損害賠償保険金が実際に支払われた10例を一挙公開
実家を出て賃貸住宅で一人暮らしを始める際、不動産屋から火災保険の加入を勧められます。
もちろん主な加入目的としては、入居者の大切な家財道具を損害から守るためではありますが、不動産屋にとってそれよりも大切な目的があって勧めているのです。
それは管理する物件が、借主の責任で火災等が生じた際に、その損害を補償するためなのです。
今回の記事では、そのような不動産屋のニースに応える借家人賠償責任保険に焦点をあてて、その補償内容を解説します。
また筆者が現場で実際に経験した保険金の支払いの事例もあわせて紹介していきます。
目次
- 1 借家人賠償責任保険とは?
- 2 参考:保険料の目安を紹介
- 3 保険金支払事例・事故事例を紹介
- 3.1 事故事例①:冷蔵庫を自宅へ搬入中に角を壁にぶつけ壁を破損。
- 3.2 事故事例②:自宅で設置中に壁にテレビ台をぶつけて破損させた。
- 3.3 事故事例③:従業員が窓ガラスを割ってしまった。
- 3.4 事故事例④:搬入中に転倒させ、玄関の左右の壁に傷をつけてしまった。
- 3.5 事故事例⑤:空き巣に入られ、窓ガラスと網戸を壊される。
- 3.6 事故事例⑥:冷蔵庫を移動する際にに壁クロスを破損。
- 3.7 事故事例⑦:風呂釜を掃除中に蓋を落として風呂釜の底を破損しそこから階下に漏水。
- 3.8 事故事例⑧:ボヤが起き、壁と床に燃え、全面張替が必要になる損害になる。
- 3.9 事故事例⑨:布団に横になってタバコを吸っていたら、布団やカーペットに引火。
- 3.10 事故事例⑩:洗濯機の排水ホースが外れて水漏れが発生。
- 4 保険金支払にならない事例
- 5 まとめ
借家人賠償責任保険とは?
そもそも借家人賠償責任保険とはどのような保険なのでしょうか。
某大手損害保険会社では下記のように規定しています。
被保険者に責任がある不測かつ突発的な事故によって借用住宅を損壊し、貸主に対して法律上の損害賠償責任を負った場合の損害賠償金等をお支払いします。
つまり、賃貸住宅の住人が不注意で自分の住む部屋に損害を与えてしまった場合、その修理費用を補償するのが借家人賠償責任保険ということになります。
たとえばタバコの不始末でボヤを発生させてしまったり、家財道具を移動させる際にうっかり壁に穴をあけてしまったりといったケースが該当します。
保険金額は保険会社にもよりますが、概ね1,000~2,000万円くらいの範囲で設定することが多いです。
また、借家人賠償責任保険は火災保険の特約で補償を付保することが一般的です。
家財に対する火災保険に借家人賠償責任補償特約を付保するといった具合です。
参考:保険料の目安を紹介
参考までに借家人賠償責任保険の付保された火災保険の保険料の目安を紹介します。
保険料の試算条件は下記をご確認ください。
保険会社によって保険料率に差がありますが、概ね主契約である家財保険金額に比例して保険料も高くなる傾向にあります。
借家人賠償特約や個人賠償特約の保険金額が大きくても主契約の保険金額が小さければ、保険料にそれほど影響はないという点を押さえておきましょう。
保険金支払事例・事故事例を紹介
ここで筆者が現場で損害対応した事例をいくつか紹介したいと思います。
事故事例①:冷蔵庫を自宅へ搬入中に角を壁にぶつけ壁を破損。
事故日:2020年8月
事故内容・詳細
電気屋で購入した冷蔵庫を自宅へ搬入中に角を壁にぶつけ壁を破損。
保険金支払額
54,850円
事故事例②:自宅で設置中に壁にテレビ台をぶつけて破損させた。
事故日:2020年5月
事故内容・詳細
家具屋でテレビ台を購入し、自宅で設置中に壁にテレビ台をぶつけて破損させた。
保険金支払額
69,400円
事故事例③:従業員が窓ガラスを割ってしまった。
事故日:2018年1月
事故内容・詳細
事務所清掃作業中に誤って従業員が窓ガラスを割ってしまった。
保険金支払額
184,800円
事故事例④:搬入中に転倒させ、玄関の左右の壁に傷をつけてしまった。
事故日:2023年10月
事故内容・詳細
購入したばかりの棚を手持ちで搬入中に転倒させ、玄関の左右の壁に傷をつけてしまった。
保険金支払額
134,850円
事故事例⑤:空き巣に入られ、窓ガラスと網戸を壊される。
事故日:2023年2月
事故内容・詳細
自宅で留守にしている時に空き巣に入られ、窓ガラスと網戸を壊される。
保険金支払額
126,400円
事故事例⑥:冷蔵庫を移動する際にに壁クロスを破損。
事故日:2021年2月
事故内容・詳細
自宅の模様替えしている中で、冷蔵庫を移動する際にに壁クロスを破損。
保険金支払額
126,400円
事故事例⑦:風呂釜を掃除中に蓋を落として風呂釜の底を破損しそこから階下に漏水。
事故日:2021年2月
事故内容・詳細
風呂釜を掃除中に蓋を落として風呂釜の底を破損しそこから階下に漏水。
保険金支払額
1,032,560円
事故事例⑧:ボヤが起き、壁と床に燃え、全面張替が必要になる損害になる。
事故日:2021年2月
事故内容・詳細
ストーブの火でボヤが起き、壁と床に燃え、張替が必要になる損害になる。
保険金支払額
328,400円
事故事例⑨:布団に横になってタバコを吸っていたら、布団やカーペットに引火。
事故日:2017年12月
事故内容・詳細
布団に横になってタバコを吸っていたら、布団やカーペットに引火。消防車が出動する等、近隣住居が大騒ぎになった。
結果的に借用戸室全体に損害を与えるボヤになった。
保険金支払額
2,244,860円
事故事例⑩:洗濯機の排水ホースが外れて水漏れが発生。
事故日:2020年3月
事故内容・詳細
洗濯機の排水ホースが外れて水漏れが発生。部屋の中を水浸しにしてしまう。階下の住人の家財も水濡れし損害を与える。
保険金支払額
848,000円
このように損害額としても決して小さな金額ではありません。
なによりこのような事故を発生させてしまうと、その後の大家さんとの関係を維持することは難しくなってしまいます。
借家人賠償保険に入っているからと油断せず、普段の生活から最低限火の始末に気を付けるなど、事故を起こさない心がけは大切です。
保険金支払にならない事例
最後に借家人賠償責任保険において、保険金の支払いの対象外となる代表的な事例についても触れておきたいと思います。
故意による損害
ストレスから壁を殴りつけて穴をあけてしまう等、わざと損害を与えるようなケースは保険金の支払対象外です。
感覚的に理解できるとは思いますが、実際に損害保険の現場に身を置いていると、このような相談はよくあります。
保険契約の締結の際の説明の重要さを痛感します。
借家人賠償責任保険で対象になるのは、あくまで「過失」によるものです。
経年劣化による損害
住宅はどんなにきれいに使うことを心がけていても、経年劣化によって傷んでくるものです。
経年劣化による損害はそもそも損害保険全般で支払対象外となります。
保険金支払い対象となるのは、急激・偶然・外来という要素が必要になるのです。
建物オーナー以外の第三者に対する損害
借家人賠償責任保険は、あくまで建物オーナーに対する損害賠償責任を補償するものです。
たとえば漏水事故を起こして、階下の住人に損害を与えた場合、階下の住人に対する補償は個人賠償責任保険の守備範囲になります。
賃貸住宅に入居する場合は、借家人賠償責任保険と個人賠償責任保険はともに重要です。
漏れのないよう、しっかり付保しておきましょう。
ペットによる損害
ペット可の住宅に住んでいると、ペットによる損害が発生する可能性はとても高いです。
しかしながら、借家人賠償責任保険ではペットによる損害を対象外としているのです。
まとめ
今回の記事では、借家人賠償責任保険について、筆者の現場での経験を踏まえて解説しました。
賃貸住宅に入居の際、ほぼ確実に借家人賠償責任保険の加入を勧められます。
しかし現実的に補償内容の説明は決して十分になされているとはいえません。
借家人賠償責任保険の補償内容をしっかり理解するとともに、事故を起こさないような生活を送ることがなにより大切です。
これを機に、一度ご自身の加入している火災保険の補償内容を確認するとともに生活習慣も見直してみましょう。