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2024.09.24

PL保険(生産物賠償責任保険)とは? 国内・海外いる・いらない?事例や適用範囲は?

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著者情報 森 逸行 FP歴15年 経験した事を伝え解決に導く『金融パーソナルトレーナー』

pl保険(生産物賠償責任保険)とは?-いる・いらない?事例や適用範囲は国内-海外?

  PL保険という言葉を、きっと多くの人が一度は耳にしたことがあることでしょう。

しかしその意味や補償の内容については、日常生活を営む上でそれほど接する機会はありません。

実はこのPL保険、飲食店経営者や製造業者、工事業者にとってはものすごく重要なものなのです。

今回の記事ではPL保険について深堀りしていきたいと思います。 

PL保険とは

まずPL保険とはいったいどのようなものなのか、その概要について解説します。

PL保険とは生産物賠償責任保険といい、製造業者等が製造または販売した製品、あるいは工事業者等が行った仕事の結果が原因で、他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりしたために、事業者が法律上の賠償責任を負担することにより被る損害を補償する、事業者向けの保険です。

(※日本損害保険協会 損害保険QA PL保険はどのような保険ですか より抜粋)

 製造業者や飲食店業者は、自身の行った仕事の結果や提供した飲食物が原因で第三者に損害を与えてしまった場合、損害賠償を負ってしまうリスクが発生します。

PL保険ではその賠償リスクについて経済的な面を補償してくれるものなのです。 

PL法について

PL保険を語るうえで、PL法についてある程度は理解しておかなければなりません。

製造物責任法(以下PL法と記載します)は、製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定した法律です。

(※消費者庁 製造物責任法の概要Q&A より抜粋)

本来、不法行為責任に基づく損害賠償請求を提起する際には、被害者の側で加害者の過失を立証しなければなりません。

しかし製造物責任については、製造物に欠陥があることのみを立証するだけで良く、業者側(加害者)の過失までを証明しなくても良いのです。

要するに業者側の製造物・仕事に対する責任がより重くなっているということ意味します。

業者側にとってはPL保険の必要性が大きいことの所以です。

なお、PL保険では、PL法に基づく責任だけでなく、民法に基づく不法行為責任や債務不履行責任なども補償対象としているため、PL法で問われる法律上の賠償責任よりも広い範囲をカバーすることができます。 

PL保険で補償されるもの

ここでPL保険の内容について詳しく解説していきます。 

補償内容

PL保険では主に以下の5つの費用を補償しています。

1.法律上の損害賠償金

・賠償責任に関する訴訟費用・弁護士費用等の争訟費用・求償権の保全・行使等の損害防止軽減費用

4.事故発生時の応急手当等の緊急措置費用

5.弊社の要求に伴う協力費用

 

※上記は東京海上日動のPL保険の補償内容になります。

保険会社によって異なる場合もあるので、詳細は必ず保険会社に確認しましょう。

 PL保険とは、の項で触れたように、製造業者等が製造または販売した製品、あるいは工事業者等が行った仕事の結果が原因で、他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりしたために、事業者が法律上の賠償責任を負った場合、上記の1~5の費用が補償の対象となるのです。 

特約

PL保険は損害保険に分類されます。

火災保険等と同じように、PL保険においても特約を付保することで、補償範囲を拡張することができます。

代表的な3つの特約を以下に紹介します。

不良完成品損害補償特約

不良完成品損害補償特約・・・本来補償の対象外とされている、生産物を成分、原材料、部品等として用いられた完成品による損害についても補償する特約。

不良製造品損害補償特約

不良製造品損害補償特約・・・本来補償の対象外とされている、生産物が部品として用いられている機械等の損害についても補償する特約。

食中毒・特定感染症利益補償特約

食中毒・特定感染症利益補償特約・・・食中毒、所定の感染症の発生、またはその疑いがある場合における保健所等による施設の消毒その他の処置によって、営業が休止または阻害されたために生じた逸失利益等を補償する特約。 

事故事例、支払事例

ここで、PL保険における事故事例を紹介します。

【事故事例・支払事例】

・ノートパソコンのバッテリー発火に起因して火災が発生。ノートパソコンの製造業者に対し、製造物責任に基づく損害賠償責任が認定された。

・ポリエチレン製灯油容器の溶着不良により、店舗内および自動車内に灯油が漏れたことにより損害が発生。ポリエチレンの製造業者に対し約1,000万円の損害賠償責任が認定された。

・エアコンの室内機からの発火により建物や家財道具が焼失。エアコンの製造会社の製造物責任を認定。

・手術における医療機器の使用により患者が死亡。裁判所は医療機器の欠陥を認め、製造業者に対し損害賠償を命じた。

 PL保険の事例といえば、飲食店による食中毒をまず初めに連想される方も多いと思いますが、必ずしも飲食店に限った話ではないことは上記の事例からも明らかです。 

PL保険で補償されないもの

PL保険で保険金の支払い対象外となる事例についても触れておきたいと思います。 

リコール費用

PL保険では第三者に対して損害を与えた場合に補償する保険ですが、第三者に損害を与える恐れがある状態、つまり第三者に損害を与える前の段階では補償されません。

第三者に損害を与える危険性があるとして製品の回収措置を実施したとしてもその回収費用(リコール費用)は補償の対象外になるのです。

保険会社によってはリコール費用補償特約を用意しているところもありますが、その支払限度額は1,000万円程度が上限設定であったりと、かなり制限された補償となっています。 

【参考サイト:損保ジャパン 国内PL保険パンフレット 4ページに特約内容記載】

大規模な回収措置ともなると、とても特約の補償内容ではカバーしきれません。

リコールに備えるにはリコール保険を別途付保することをおすすめします。 

【参考サイト:東京海上日動 生産物回収費用保険(リコール保険)】

製造業者側の過失や怠慢による損害

PL保険では、第三者に対する身体障害や財物の損壊があってはじめて補償されるものです。

たとえば部品のメーカーが作った部品が、契約で定められた規格・基準を満たさないために、納品先の業者で製品の着手が大幅に遅れたとして、逸失利益の損害賠償を受けたとします。

この事例では、実際に第三者に対する身体障害・財物損壊は起こっていないので、PL保険では補償の対象外となるのです。

このような、業務遂行上の過失や不注意が原因で起こる損害に備えるには、E&O保険が必要となります。

E&Oは「Errors&Omissions」の略称で、Errorsの意味する「過失、不注意」と、Omissionsの意味する「怠慢」に対する補償です。

EO保険は、PL保険では補償対象外となっている、第三者に対する身体障害・財物損壊を要件としない、経済的な損害を補償するものです。

製造業者はぜひ参考にしてみてください。 

その他、保険金支払い対象外となる主な場合

その他の保険金支払い対象外となる主な場合としては、火災保険等、他の損害保険同様、下記の場合があります。

保険金支払い対象外となる主な場合

 ・保険契約者の故意によって生じた賠償責任

 ・地震、噴火、洪水、津波またはこれらに類似の自然変象に起因する賠償責任

 ・戦争、外国の武力行使、内乱等に起因する賠償責任

 PL保険に限らず、保険を検討する際には、どのような場合に補償されるか、という点と同じくらい保険金支払い対象外となる事例をしっかり理解することが重要です。

パンフレット等で事前に確認しておきましょう。 

PL保険の保険料を安くする方法について

PL保険に限らず、保険は万が一の事故に備えて加入するものです。

万が一の事故が起こらなければ、当然保険金を受け取ることができず、保険料は無駄になります。

そのような事故が発生しないに越したことはないですが、できることなら保険にかかる費用は抑えておきたいものです。

ここでPL保険を安く加入する方法を紹介します。 

設計方法を工夫①:費用内枠払いにする

損害が発生し保険金をお支払いする場合、通常は、設定された損害賠償金の支払限度額(保険金額)と費用保険金(損害防止費用、緊急措置費用、権利保全行使費用、争訟費用、協力費用)は別枠での支払いとなります。

この部分を、損害賠償金の支払限度額(保険金額)の範囲内とすることで、保険料は若干安くすることができます。

設計方法を工夫②:共通支払限度額方式にする

PL保険の加入にあたって、支払限度額(保険金額)は身体賠償と財物賠償のそれぞれについて設定します。

この部分を、1事故について身体賠償・財物賠償それぞれの損害額を合算して保険期間中の支払限度額を限度とする『身体・財物共通保険金額設定方式』に設定することでも、保険料を若干安くすることができます。

※上記①②はともに補償内容に若干の制限を加えることで、保険料を実現させているものです。上記を採用する際には、その点をしっかり理解した上で実施しましょう。 

商工団体を利用すると割引率は最大50%

商工三団体(日本商工会議所・全国商工会連合会・全国中小企業団体中央会)に加入することで、団体ならではのスケールメリットを活かした保険料の割引が受けられます。

その割引率は最大50%となっています。

補償内容は保険会社が販売しているPL保険とも相違ないもので、特約内容も充実しています。

PL保険の加入にあたって、まずは商工三団体での加入の可否を検討することをおすすめします。 

【参考サイト:東京商工会議所 共済・福利厚生 団体PL保険】

海外PL保険について

ここで海外PL保険についても触れておきたいと思います。

海外PL保険とは、海外で発生したPL事故における損害賠償責任を補償するものです。

つまり通常のPL保険では国内の事故のみが対象となり、海外における事故は補償対象外となっているのです。 

【参考サイト:三井住友海上 生産物賠償責任保険パンフレット 2ページ上部 この契約の対象となる方の記載をご確認ください】 

仮に国内向けに作っていたものでも、海外に持ち込まれ、結果として海外で事故が発生したような場合でも、海外PL保険でないと補償対象外となってしまうのです。

たとえば国内のみで製造・販売していたお菓子を、海外からの観光客が購入し、帰国して自国にて食べた結果、食中毒が発生したなんてことは、想像できる事例なのではないでしょうか。

海外にわたる可能性が少しでもある製品、商品を作っている事業者であれば、海外におけるPLリスクは必ず考慮するようにしましょう。 

海外PL保険の保険料は割高

海外PL保険の保険料は国内PL保険の約2倍から4倍の保険料のイメージになります。

販売する国や地域によっても変わりますが、アジア圏やアメリカ圏・ヨーロッパ圏など国や地域によって保険料の算出基準が異なります。

よくアメリカは法律の世界といわれてますが、PL保険の保険料ではアメリカ圏向けの海外PL保険は特に保険料が高いイメージになります。

当然売上高や業種によっても変わりますが、基本的には国内のPL保険に比べて割高な保険料になる事が多いです。

海外PL保険を加入する際は、損害保険のプロにアドバイスをもらい加入することをお勧めします。

まとめ

今回の記事ではPL保険にスポットライトをあてて、その内容を深掘りしました。

飲食店経営者、製造業者、工事業者にとって、事業を営む上で第三者に損害を与えるリスクからは避けて通ることはできません。

事故内容によっては、経営に影響を与えうるほどの大きな経済的ダメージのリスクもあります。

PL保険の補償内容をしっかり理解し適切に付保することで、リスクにしっかり備えることが重要です。

補償内容や合理的な付保の方法については、保険会社や代理店の担当者に相談するようにしましょう。

 

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