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2024.09.24

PL保険(生産物賠償責任保険)とは? 下請けも必要?請負業者賠償責任保険の違い?海外いる・いらない?事例と質問に回答

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著者情報 ファイナンシャルプランナー森 逸行 FP2級・住宅ローンアドバイザー。住宅購入、投資、相続など自身の経験を活かし、実践的かつ現実的なアドバイスを提供。公的保障から資産形成まで、人生とお金をトータルサポート

pl保険(生産物賠償責任保険)とは?-いる・いらない?事例や適用範囲は国内-海外?

  PL保険という言葉を、きっと多くの人が一度は耳にしたことがあることでしょう。

しかしその意味や補償の内容については、日常生活を営む上でそれほど接する機会はありません。

実はこのPL保険、飲食店経営者や製造業者、工事業者にとってはものすごく重要なものなのです。

今回の記事ではPL保険について深堀りしていきたいと思います。 

目次

PL保険とは

まずPL保険とはいったいどのようなものなのか、その概要について解説します。

PL保険とは生産物賠償責任保険といい、製造業者等が製造または販売した製品、あるいは工事業者等が行った仕事の結果が原因で、他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりしたために、事業者が法律上の賠償責任を負担することにより被る損害を補償する、事業者向けの保険です。

(※日本損害保険協会 損害保険QA PL保険はどのような保険ですか より抜粋)

 製造業者や飲食店業者は、自身の行った仕事の結果や提供した飲食物が原因で第三者に損害を与えてしまった場合、損害賠償を負ってしまうリスクが発生します。

PL保険ではその賠償リスクについて経済的な面を補償してくれるものなのです。 

PL法について

PL保険を語るうえで、PL法についてある程度は理解しておかなければなりません。

製造物責任法(以下PL法と記載します)は、製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定した法律です。

(※消費者庁 製造物責任法の概要Q&A より抜粋)

本来、不法行為責任に基づく損害賠償請求を提起する際には、被害者の側で加害者の過失を立証しなければなりません。

しかし製造物責任については、製造物に欠陥があることのみを立証するだけで良く、業者側(加害者)の過失までを証明しなくても良いのです。

要するに業者側の製造物・仕事に対する責任がより重くなっているということ意味します。

業者側にとってはPL保険の必要性が大きいことの所以です。

なお、PL保険では、PL法に基づく責任だけでなく、民法に基づく不法行為責任や債務不履行責任なども補償対象としているため、PL法で問われる法律上の賠償責任よりも広い範囲をカバーすることができます。 

PL保険で補償されるもの

ここでPL保険の内容について詳しく解説していきます。 

補償内容

PL保険では主に以下の5つの費用を補償しています。

1.法律上の損害賠償金
2.賠償責任に関する訴訟費用・弁護士費用等の争訟費用
3.求償権の保全・行使等の損害防止軽減費用
4.事故発生時の応急手当等の緊急措置費用
5.弊社の要求に伴う協力費用

 

※上記は東京海上日動のPL保険の補償内容になります。

保険会社によって異なる場合もあるので、詳細は必ず保険会社に確認しましょう。

 PL保険とは、の項で触れたように、製造業者等が製造または販売した製品、あるいは工事業者等が行った仕事の結果が原因で、他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりしたために、事業者が法律上の賠償責任を負った場合、上記の1~5の費用が補償の対象となるのです。 

特約

PL保険は損害保険に分類されます。

火災保険等と同じように、PL保険においても特約を付保することで、補償範囲を拡張することができます。

代表的な3つの特約を以下に紹介します。

不良完成品損害補償特約

不良完成品損害補償特約・・・本来補償の対象外とされている、生産物を成分、原材料、部品等として用いられた完成品による損害についても補償する特約。

不良製造品損害補償特約

不良製造品損害補償特約・・・本来補償の対象外とされている、生産物が部品として用いられている機械等の損害についても補償する特約。

食中毒・特定感染症利益補償特約

食中毒・特定感染症利益補償特約・・・食中毒、所定の感染症の発生、またはその疑いがある場合における保健所等による施設の消毒その他の処置によって、営業が休止または阻害されたために生じた逸失利益等を補償する特約。 

事故事例、支払事例

ここで、PL保険における事故事例を紹介します。

【事故事例・支払事例】

・ノートパソコンのバッテリー発火に起因して火災が発生。ノートパソコンの製造業者に対し、製造物責任に基づく損害賠償責任が認定された。

・ポリエチレン製灯油容器の溶着不良により、店舗内および自動車内に灯油が漏れたことにより損害が発生。ポリエチレンの製造業者に対し約1,000万円の損害賠償責任が認定された。

・エアコンの室内機からの発火により建物や家財道具が焼失。エアコンの製造会社の製造物責任を認定。

・手術における医療機器の使用により患者が死亡。裁判所は医療機器の欠陥を認め、製造業者に対し損害賠償を命じた。

 PL保険の事例といえば、飲食店による食中毒をまず初めに連想される方も多いと思いますが、必ずしも飲食店に限った話ではないことは上記の事例からも明らかです。 

PL保険で補償されないもの

PL保険で保険金の支払い対象外となる事例についても触れておきたいと思います。 

リコール費用

PL保険では第三者に対して損害を与えた場合に補償する保険ですが、第三者に損害を与える恐れがある状態、つまり第三者に損害を与える前の段階では補償されません。

第三者に損害を与える危険性があるとして製品の回収措置を実施したとしてもその回収費用(リコール費用)は補償の対象外になるのです。

保険会社によってはリコール費用補償特約を用意しているところもありますが、その支払限度額は1,000万円程度が上限設定であったりと、かなり制限された補償となっています。 

【参考サイト:損保ジャパン 国内PL保険パンフレット 4ページに特約内容記載】

大規模な回収措置ともなると、とても特約の補償内容ではカバーしきれません。

リコールに備えるにはリコール保険を別途付保することをおすすめします。 

【参考サイト:東京海上日動 生産物回収費用保険(リコール保険)】

製造業者側の過失や怠慢による損害

PL保険では、第三者に対する身体障害や財物の損壊があってはじめて補償されるものです。

たとえば部品のメーカーが作った部品が、契約で定められた規格・基準を満たさないために、納品先の業者で製品の着手が大幅に遅れたとして、逸失利益の損害賠償を受けたとします。

この事例では、実際に第三者に対する身体障害・財物損壊は起こっていないので、PL保険では補償の対象外となるのです。

このような、業務遂行上の過失や不注意が原因で起こる損害に備えるには、E&O保険が必要となります。

E&Oは「Errors&Omissions」の略称で、Errorsの意味する「過失、不注意」と、Omissionsの意味する「怠慢」に対する補償です。

EO保険は、PL保険では補償対象外となっている、第三者に対する身体障害・財物損壊を要件としない、経済的な損害を補償するものです。

製造業者はぜひ参考にしてみてください。 

その他、保険金支払い対象外となる主な場合

その他の保険金支払い対象外となる主な場合としては、火災保険等、他の損害保険同様、下記の場合があります。

保険金支払い対象外となる主な場合

 ・保険契約者の故意によって生じた賠償責任

 ・地震、噴火、洪水、津波またはこれらに類似の自然変象に起因する賠償責任

 ・戦争、外国の武力行使、内乱等に起因する賠償責任

 PL保険に限らず、保険を検討する際には、どのような場合に補償されるか、という点と同じくらい保険金支払い対象外となる事例をしっかり理解することが重要です。

パンフレット等で事前に確認しておきましょう。 

PL保険の保険料を安くする方法について

PL保険に限らず、保険は万が一の事故に備えて加入するものです。

万が一の事故が起こらなければ、当然保険金を受け取ることができず、保険料は無駄になります。

そのような事故が発生しないに越したことはないですが、できることなら保険にかかる費用は抑えておきたいものです。

ここでPL保険を安く加入する方法を紹介します。 

設計方法を工夫①:費用内枠払いにする

損害が発生し保険金をお支払いする場合、通常は、設定された損害賠償金の支払限度額(保険金額)と費用保険金(損害防止費用、緊急措置費用、権利保全行使費用、争訟費用、協力費用)は別枠での支払いとなります。

この部分を、損害賠償金の支払限度額(保険金額)の範囲内とすることで、保険料は若干安くすることができます。

設計方法を工夫②:共通支払限度額方式にする

PL保険の加入にあたって、支払限度額(保険金額)は身体賠償と財物賠償のそれぞれについて設定します。

この部分を、1事故について身体賠償・財物賠償それぞれの損害額を合算して保険期間中の支払限度額を限度とする『身体・財物共通保険金額設定方式』に設定することでも、保険料を若干安くすることができます。

※上記①②はともに補償内容に若干の制限を加えることで、保険料を実現させているものです。上記を採用する際には、その点をしっかり理解した上で実施しましょう。 

商工団体を利用すると割引率は最大50%

商工三団体(日本商工会議所・全国商工会連合会・全国中小企業団体中央会)に加入することで、団体ならではのスケールメリットを活かした保険料の割引が受けられます。

その割引率は最大50%となっています。

補償内容は保険会社が販売しているPL保険とも相違ないもので、特約内容も充実しています。

PL保険の加入にあたって、まずは商工三団体での加入の可否を検討することをおすすめします。 

【参考サイト:東京商工会議所 共済・福利厚生 団体PL保険】

海外PL保険について

ここで海外PL保険についても触れておきたいと思います。

海外PL保険とは、海外で発生したPL事故における損害賠償責任を補償するものです。

つまり通常のPL保険では国内の事故のみが対象となり、海外における事故は補償対象外となっているのです。 

【参考サイト:三井住友海上 生産物賠償責任保険パンフレット 2ページ上部 この契約の対象となる方の記載をご確認ください】 

仮に国内向けに作っていたものでも、海外に持ち込まれ、結果として海外で事故が発生したような場合でも、海外PL保険でないと補償対象外となってしまうのです。

たとえば国内のみで製造・販売していたお菓子を、海外からの観光客が購入し、帰国して自国にて食べた結果、食中毒が発生したなんてことは、想像できる事例なのではないでしょうか。

海外にわたる可能性が少しでもある製品、商品を作っている事業者であれば、海外におけるPLリスクは必ず考慮するようにしましょう。 

海外PL保険の保険料は割高

海外PL保険の保険料は国内PL保険の約2倍から4倍の保険料のイメージになります。

販売する国や地域によっても変わりますが、アジア圏やアメリカ圏・ヨーロッパ圏など国や地域によって保険料の算出基準が異なります。

よくアメリカは法律の世界といわれてますが、PL保険の保険料ではアメリカ圏向けの海外PL保険は特に保険料が高いイメージになります。

当然売上高や業種によっても変わりますが、基本的には国内のPL保険に比べて割高な保険料になる事が多いです。

海外PL保険を加入する際は、損害保険のプロにアドバイスをもらい加入することをお勧めします。

Q&A:PL保険についての質問と回答

ここまでPL保険について、補償内容や特色について解説してきました。製品を製造・販売している企業や個人事業主にとって、製品に関する思わぬトラブルのリスクから完全に逃れることはできません。たとえ万全の品質管理を行っていても、製品に欠陥が見つかったり、使用中に事故が起きてしまったりする可能性はゼロではありません。もしその結果、消費者がケガをしたり、消費者の財産に損害を与えてしまった場合、製造者や販売者は「製造物責任法(PL法)」に基づいて高額な損害賠償責任を負うことになります。

こうしたリスクに備えるために役立つのが「PL保険(製造物責任保険)」です。PL保険に加入していれば、製品に起因する事故によって発生した損害賠償請求に対応でき、企業の経営を守る強力なセーフティネットとなります。

しかし、損害保険は一般の方にとっては総じてわかりにくいものです。特にPL保険に関しては、その傾向が顕著であると感じます。「どんな場合に補償されるのか?」「保険料はどうやって決まるのか?」「海外輸出にも対応できるのか?」等といった疑問は、筆者も損害保険の現場において、よく投げかけられます。

そこで今回は、PL保険に関して、筆者が実際に現場で問い合わせを受けた質問をいくつかピックアップして、Q&A形式でわかりやすく解説していきます。保険加入を検討している方や、すでに加入しているけれど詳細をよく理解していない方にとっても、参考になる内容です。 

質問①:万全の品質管理をしていれば、PL保険は不要ではないですか?

製造業を営んでいます。付き合いのある保険代理店より、製造業者であれば必須の保険ということで、PL保険には加入していますが、創業来1度も保険にお世話になったことはありません。

手前みそですが、弊社は品質管理体制は万全にしているので、PL事故が起こることは考えられません。

このように、万全の品質管理をしていれば、PL保険の加入は必要ではないのではないでしょうか? 

回答:万全の品質管理をしていても、PL保険は「不要ではなく、むしろ必須」と考えましょう!

PL保険は、どんなに万全な備えをしていても、決して不要になるものではありません。品質管理は事故の「発生確率」を下げますが、事故そのものをゼロにすることはできません。

PL保険は発生してしまったときの「損害の大きさ」を抑える手段です。日本の製造物責任法(PL法)は過失の有無にかかわらず、製品に「欠陥」があり、それが原因で損害が生じた場合に責任を問う枠組みとなります。

たとえ高度な品質保証体制を敷いていても、ゼロリスクにはできないため、保険によるリスク移転は経営上、実務上ともに有効です。 

なぜ万全の品質管理体制でもリスクは残るのか

製造現場で実際に起こりうる、品質管理では塞ぎ切れない要因を整理します。

 

◆設計段階の見落とし(設計上の欠陥)
想定外の使用状況や極端な環境条件(高温多湿、落下、想定外の組み合わせ)で危険性が顕在化します。FMEAFTAを尽くしても未知の使われ方は残ります。 

◆製造ばらつき(製造上の欠陥)
設備の経年変化、微小な寸法・材料ロット差、作業者の微差で、ごく一部の個体に欠陥が混入する可能性があります。 

◆警告・表示の限界(表示上の欠陥)
マニュアル・ラベルで注意喚起しても、「予見可能な誤使用」は一定程度発生します。表示の不備と評価されるリスクもあります。 

◆サプライチェーン起因
上流部材の潜在欠陥、仕様変更の連絡遅延、偽造部品混入など。事故の際は、最終製品メーカーに損害賠償請求が集中しやすい構造です。

◆流通・保管でのダメージ
梱包破損、落下、温湿度逸脱など。外観上は良品でも内部に潜在損傷が残ることがあります。

◆市場での想定外の使用実態
子どもの誤飲、改造、他社製との予期せぬ組み合わせ利用、産業機器の家庭利用など。 

◆経年劣化・使用後リスク
絶縁劣化、樹脂の脆化、バッテリー膨張等。販売後長期にわたり請求リスクが残ります(一般に長期の時効管理が必要)。 

◆海外法制・訴訟文化
輸出の場合、各国の基準・訴訟慣行の違いにより、小さな事故でも高額化することがあります(特に米国は要注意)。 

◆因果関係争い・風評
原因が自社か他社か判然としない場合でも、まず被告として対応が必要になり、一定程度の防御費用を想定しておくことが必要です。

◆低頻度・高損害の特性
発生確率は低くとも、一度の重大事故で企業存続に影響する規模の賠償・費用が発生し得ます。 

実例イメージ(よくある想定外な事例)

ここで、メーカー側にとっては想定外の原因に起因する事例を紹介します。

 

・モバイルバッテリー:輸送中の微小損傷が市場で発火に。ロットのごく一部の不良でも人的被害が発生→高額賠償化。設計・製造・表示の各論点が争点に。
・子ども向け玩具:第三者製の別パーツと組み合わせた使用で小部品が外れ、子どもが誤飲。マニュアル・年齢表示の妥当性が問われる。
・厨房機器:想定より高湿度・油ミスト環境で絶縁劣化した結果、感電事故が発生。設置・使用条件の表示が十分だったかが焦点に。

 

いずれも品質活動は有効でも完全な防壁ではないため、保険のバックアップが経営継続上の要になります。

経営視点で考えて、コスト対効果と「保険+管理」の最適化を図ることが極めて重要です。

あくまで保険は最後の砦と考え、品質管理の徹底に取り組むことで事故の発生確率を下げ、それでも残るリスクの尾の太さ(損害額の大きさ)を保険でならすという発想が適切な考え方と言えます。 

補償設計の考え方(要点)

PL保険の設計について、要点をまとめました。一口に製造業と言っても製造品目によってリスクは千差万別です。

それでも最低限、下記の要点を押さえておくことで大きな損害は防ぐことはできます。

・1事故/年間の限度額、自己負担(免責)の設定は最悪シナリオから逆算する
・海外有無・輸出先・販売形態(直販/代理店)を反映
・取引先要求(最低限度額・追加被保険者記載 等)を反映

上記のポイントはあくまで最低限押さえるべき項目であり、実際の補償設計にあたっては、保険会社に相談した上で加入するのが最も確実です。

結論

品質管理は必要十分条件ではなく、どれほど高度なものであっても、ゼロリスクにはできません。また、PL法の厳格責任とサプライチェーン現実として、ひとたびPL事故が発生すると、製造業者に過失がなくても賠償責任・防御費用が発生し得ます。だからこそ二層防御の体制(①品質・安全・表示・サプライヤ管理で発生確率を低減、②PL保険で発生時の損害を吸収)を敷くことがリスク管理においては重要になります。

上記の①と②どちらが欠けてもリスク管理の観点で万全とは言えません。しっかり取り組みましょう。 

質問②:部品や原材料を提供している下請け業者でもPL保険は必要ですか?

PL保険について質問です。弊社はとある電子製品の部品を製造している会社です。メーカーにとってPL保険は重要な保険ということは重々理解しているのですが、弊社のような、製品の部品や原材料を提供しているに過ぎない会社でも、PL保険は必要になるのでしょうか?特に弊社は、重大な事故に直結するような部分の部品を担当しているわけではなく、あまり必要性を感じていないというのが本音です。このあたりのこと、教えてほしいです。 

回答:部品・原材料の供給業者にとってもPL保険は必要です!

結論を先に言いますと、PL保険は必要です。完成品の事故原因が「部品や原材料」に遡及するケースは決して珍しいことではなく、PL法(製造物責任法)は完成品メーカーだけでなく部品供給者・原材料供給者にも責任が及び得ます。さらにBtoBの契約実務では、取引条件としてPL保険加入・加入証明書の提出・追加被保険者化が求められることが一般化しています。品質管理を徹底していても、ゼロリスクにはならないため、保険によるリスク移転は下請け・ティアサプライヤにとっても経営必須の備えと言えます。 

なぜ下請けにもPL責任が及ぶのか(法的・実務的背景)

PL法律における責任が、なぜ部品や原材料を供給しているに過ぎない下請け業者にも及びうるのか、以下に解説していきます。

 

◆欠陥の類型
設計上・製造上・表示上の欠陥は部品や原材料レベルでも成立します。

具体例)リングの材質不適合(製造上)、化学原料の微量混入(製造上)、安全使用条件の注意表示不足(表示上)など。 

◆因果関係の集中
市場事故では最終メーカーがまず被告になりやすいものの、原因追及を勧めた段階で部品・原材料へ遡り、求償・共同被告化が起こります。

◆契約実務
品質保証協定、取引基本契約で補償義務や求償条項が定められ、部材に起因する事故なら大きな補償負担が下請けに来る構造となっています。 

◆間接輸出リスク
国内の一次納入でも完成品が海外販売されれば、海外での事故・高額訴訟に巻き込まれる可能性(輸出による間接リスク)があります。

よくある請求シナリオ

ここで、下請けの原材料・部品供給業者が訴訟に巻き込まれるケースについて、いくつか紹介します。

 

・化学原料の微量が異物として混入 → 食品の大規模廃棄
目視で検知困難な金属粉混入が発覚。多数ロットが対象となり、これにより損害額が一気に跳ね上がった。

 

・樹脂部品の寸法のばらつきがあった → 家電の発火事故
ごく一部のロット不良でも人的被害が生じ、人身・物損賠償+争訟費が高額化します。

 

・表面上の不備 → 腐食早期進行
取説・表示の不備も争点となり表示上の欠陥が問われる。

 

・完成品メーカーのリコール
直接の第三者損害に加え、取引先の回収・交換・物流費の負担要請(契約・求償)に直面。 

保険で守れるもの、守れないもの

PL保険で補償できるもの、補償できないものを整理すると下記のようになります。

区分代表例標準PL保険の取り扱い
第三者の人身・物損消費者のけが、火災での他人財物損壊補償対象
防御費用弁護士費用、鑑定費、和解交渉費補償対象
(約款に準拠)
取引先の財物損壊組付け先設備の焼損など補償対象(物損)
自社製品そのものの損害不良部品の交換費用対象外
リコール費用回収・通知・交換・廃棄対象外
(特約で担保可能)
純粋財産損害物損・人損を伴わない操業停止損多くは対象外
(拡張特約があれば検討)
契約違反起因納期遅延・仕様未達のみ対象外
故意・重大過失欠陥認識後の出荷継続など対象外

 PL保険の基本補償としては、概ね上記のように整理することができます。リコール費用特約や海外PL特約、契約上の賠償責任拡張、追加被保険者特約など、サプライヤ実務で求められるオプションを検討することが重要です。

 

※海外・間接輸出への備え

基本は国内限定:標準的なPLは保険では国内事故のみを補償対象としていることが原則です。海外への輸出がある場合や、自社は国内納入でも、完成品が海外販売されるなら海外PL特約の付保を検討しましょう(米国・EUは高リスクで条件・料率が変動します)。 

取引契約でよく求められる保険要件(チェックポイント)

業者間の取引で契約上求められる保険要件をまとめると下記のようになります。

製造品目によって詳細は異なりますが、下記の項目はどれも重要なものです。チェックリストとして参考にしてください。 

・加入証明書の提出(保険会社名、保険種目、1事故/年間限度額、保険期間、特約記載)
・取引先の「追加被保険者」登録(Additional Insured)
・代位求償権放棄(場合により)、相互免責の取り扱い
・契約上の賠償責任の担保範囲(賠償条項に整合)
・世界包括担保や輸出国限定の明確化

結論(下請けがとるべき実務対応)

まず原則として、下請け・素材サプライヤであってもPL保険は必須と考えましょう。

部品・原材料でも責任は及び得るためです。具体的な補償内容については、様々なチェックポイントがありますので、保険会社や代理店の営業担当者といった専門家に相談した上で設計することが望ましいです。 

質問③:PL保険と請負業者賠償責任保険はどう違うのですか?

建設工事業を営んでいる者です。建設作業中の賠償事故に備えて、請負業者賠償責任保険に加入しています。

個人的にはこの保険に加入しておけば、業務上考えられる賠償事故にはしっかり備えられているつもりでいましたが、同業他社の社長と話した際、PL保険の加入も考えた方が良いと勧められました。

建設工事業でもPL保険は必要なのでしょうか?そもそもPL保険と請負業者賠償責任保険の違いがよくわからないので、教えてほしいです。

回答|請負業者賠償責任保険で工事中のリスクを、PL保険で引渡し後のリスクに備えます!

結論として、建設工事業において、請負業者賠償責任保険とPL保険はともに必要です。

請負業者賠償責任保険は工事中の事故に対応(第三者の人身・物損)するのに対し、PL保険(生産物賠償責任保険)は工事完了し、引渡した後・完成した後に、施工物や組み込んだ部材の欠陥が原因で起きた事故に対応する保険です。

そのため、建設工事業では 「工事中=請負業者賠責」+「引渡し後=PL」 の二層でカバーするのが基本的なリスク対策となります。以下、両保険の違いについて解説していきます。 

請負業者賠償責任保険とPL保険の違い

ざっくり両保険の相違点をまとめると、下記のように整理することができます。

比較軸請負業者賠償責任保険標準PL保険の取り扱い
典型的な事故例・足場材の落下で通行人負
・隣家の塀を破損
・養生不備で車両を傷つけた
・施工した配管の接続不良で漏水し、下階家財を水損
・配線不良が原因で入居後に火災発生
関連しがちな誤解「施主の物は第三者だから全部出る」→作業対象物除外に注意「施工不良の無償補修も出る」→純粋なやり直し費用は対象外
よく付帯される特約管理財物(受託物)特約、施設賠償の包括化、作業対象物拡張 など海外PL特約(間接輸出含む)、リコール費用特約、追加被保険者特約 など
補償対象期間工事中
(施工・据付・搬入・試運転含む)
完成・引渡し後
(使用開始後の事故)
自社施工物の扱い施工対象物そのものの損害は原則除外(結果損害は対象)施工物そのもののやり直し費用は原則除外(結果として他人に与えた人身・物損は対象)
補償の発動(トリガー)施工中の偶然な事故の発生引渡し後に欠陥が原因で人身・物損が発生
補償の相手第三者(通行人、近隣、施主の他の財物 等)引渡し後の居住者・テナント・第三者 等
法的根拠の典型民法上の不法行為責任(過失)製造物責任(欠陥)
不法行為責任(過失)

 ※「施設賠償責任保険」は、工事現場や事務所・資材置場など施設の管理・業務に起因する事故をカバーします。請負業者賠償責任保険とのセットや包括商品(総合賠償責任保険など)でまとめることもできます。※「建設工事保険(CAR)」は工事物件そのものの物的損害を補償する「物保険」で、賠償責任保険とは目的が異なります。 

具体的な事故シナリオでの違い

ここでは具体的な事故事例をもとに、請負業者賠償責任保険とPL保険がどのように関わってくるかについて考察します。

 

◆事故例①:配管工事
引渡し前の試運転で漏水が発生。階下の什器に水ぬれ損害が発生。

 

【各シナリオごとの補償可否】

・施行工事中の事故 → 請負業者賠償責任保険の補償対象となる。
・自社が施工中に扱っている作業対象物の損害は補償対象外となる。
・同じ配管が引渡し後に外れて漏水、テナントの在庫が水損害 → 完成後の事故としてPL保険の補償対象(第三者物損)。

 

◆事故例②:内装工事
内装現場で作業員が脚立を倒して、通行人にケガを負わせてしまった。

 

【各シナリオごとの補償可否】
・施工中の人的事故 → 請負業者賠償責任保険で対人(第三者)事故として補償対象。
・ケガを負った通行人が、自社作業員であった場合 → 第三者に当たらず、請負業者賠償責任保険では補償対象外。

 

◆事故例③:タイル施行工事
タイル施工の接着不良が原因で1年後に剥落し通行人を負傷させてしまった。

 

【各シナリオごとの補償可否】
・完成後の欠陥事故 → PL保険(対人)で補償対象となる。
・剥落したタイルの貼り直し費用そのものは原則対象外。 

共通の「補償対象外」代表例(両保険に共通する留意点)

補償の可否は事故時の状況によってケースバイケースではありますが、ここでは両保険において共通して補償対象外となる事例について触れておきます。

・自社の作業対象物・施工物そのもののやり直し費用(純粋な瑕疵補修)
・契約上の違反のみに基づく損害(工期遅延、仕様未達、ペナルティ等)
・故意・重大な過失、法令違反
・リコール・自主改修・予防交換費用(特約で担保可能な場合あり)
・設計・監理等のプロフェッショナル行為起因の責任(設計事務所向け賠償責任保険の領域)
・物損・人損を伴わない純粋財産損害(操業停止・営業損失のみ等:拡張特約があれば個別検討) 

建設業者向け補償設計のポイント

ここまでの解説を踏まえ、建設工事業者が講じるべきリスク対策(補償)のポイントをまとめます。

◆二層防御が基本
工事中リスクを請負業者賠償責任保険、工事完成・引き渡し後のリスクをPL保険で補償する。さらに、施設賠償責任保険や建設工事保険(物保険)を合わせ、現場~引渡し後まで包括的にカバーする。 

◆限度額・免責の設定
重大な漏水・火災・人身重篤事故を想定して、対人・対物共通限度額を十分な金額設定をする。一方で、軽微なクレームは免責で自社吸収することで、保険料負担を少しでも抑える。重大事故は保険で厚く補償し、小損害は自社でリスクを保有するというのが、保険の基本的な考え方。 

◆特約の活用
補償範囲を拡張するのに、特約を活用する。下記のような特約の活用は一般化されています。

・請負業者賠償責任保険:管理財物(受託物)特約、作業対象物拡張 等
PL保険:リコール費用特約、追加被保険者特約(発注者・元請)、海外PL特約(間接輸出含む)

 

◆保険期間またぎに注意
損害保険の多くは事故発生主義(事故が起きた時に保険に加入していることが条件)。

工事完成・引き渡し後の潜在欠陥に備えて、保険の継続加入が重要(解約ギャップで補償の空白期間を作らない)。 

よくある誤解の整理

補償の可否について、よくある誤解についても整理しておきます。

筆者が現場で話を聞いていて感じる事案をいくつか紹介します。

 

・「施主の物は第三者だから、施工箇所のやり直し費用も保険が出る」
→ 出ません(作業対象物・自己施工物は補償対象から除外されます)。

 

・「PLに入っていれば、無償補修費まで出る」
→ 原則出ません。人身・物損という結果損害が発生していることが保険対応の前提となる。

 

・「工事中の事故はPL保険で対応できる」
→ 工事中は請負業者賠償責任保険。PL保険は引渡し後が原則と考える。 

結論

請負業者賠償責任保険は施工中リスク、PL保険で完成・引き渡し後(欠陥起因)のリスクに備えるようになっており、役割が明確に分かれています。

いずれも第三者の人身・物損への賠償責任が補償対象となるので、自社のやり直し費は原則として補償対象外です。

建設業では両方を揃え、限度額・免責・特約を現場実態と契約要件に合わせて設計するのが最適な補償設計です。

補償金額や免責、特約の付保等、わかりにくい点は、専門家に相談した上で、しっかり漏れのないようにしましょう。 

質問④:建設工事業者がPL保険に加入するメリットは何ですか?

建設工事業者にとって、PL保険に加入することに疑問を感じている者です。自分で言うのも変ですが、私は自分の仕事の結果には自信を持っていて、施工不良等はないと言えます。

保険料も決して安い金額ではないので、あまりメリットがないようなら加入をやめようかとも考えています。

建設工事業者がPL保険に加入することのメリットがあれば教えてください。 

回答:PL保険は単に事故に備える以外にも様々なメリットがあります!

建設工事業者にとってPL保険(生産物賠償責任保険)に加入する最大のメリットは、完成・引渡し後に発生する予期せぬ事故や損害に備えられることです。

工事中の事故は「請負業者賠償責任保険」で対応可能ですが、実際のリスクは「工事が終わったあと」にも続きます。

施工物の欠陥や不具合は引渡し直後に顕在化するとは限らず、半年後や数年後に事故や損害として表面化することも多いため、PL保険の存在は事業の継続に直結する安全網となります。

以下、具体的なメリットについて解説していきます。 

引渡し後の事故リスクに備えられる

建設工事業者が施工した建物や設備に欠陥があった場合、それが原因で第三者に人身事故や物損を与える可能性があります。

 

例)施工した配管が数か月後に破裂し、階下の事務所が水浸しになった
例)施工した外壁材が剥落し、通行人にケガを負わせた
例)電気工事の不具合が原因で火災が発生し、建物全体が延焼した

 

こうした事故は「完成後」だからといって責任を免れることはできません。民法上の不法行為責任やPL法(製造物責任法)の適用を受けることもあり、損害賠償請求を受ければ巨額の費用負担が発生します。

PL保険に加入していれば、これらの賠償リスクをカバーでき、会社や経営者個人の財産を守ることにつながります。 

元請や発注者からの信用を得ることができる

近年の建設業界では、元請業者や発注者が下請業者に対して「PL保険への加入」を条件とするケースが増えています。

特に大規模工事や公共工事では、事故発生時の対応力や賠償資力を契約条件の一部として重視する傾向が強まっています。

・契約前に「保険証券の写し」や「加入証明書」の提出を求められることも多い
・PL保険に加入していることで、元請にとって「安心して任せられる下請」と評価され、受注のチャンスが広がる

つまり、PL保険は単なるリスク対策にとどまらず、営業・取引上の信用力を高める武器にもなるのです。 

巨額の賠償リスクから事業継続を守る

建設業で起こる完成後の事故は、一件でも数百万円から数千万円、場合によっては億単位の賠償請求につながる可能性があります。

施工不良によって発生した、下記のような事案を想像してみてください。

・火災や漏水によって、建物全体やテナントの設備が損害を受ける
・人身事故で後遺障害や死亡が発生する
・複数の第三者に損害が及び、損害賠償が連鎖的に膨らむ

こうした事態に備え、PL保険で高額な保険金額を設定しておくことで、万一の際にも会社の財務基盤を守り、事業を継続できる体制を整えることができます。 

リコール費用や追加補償にも対応可能

PL保険には「リコール費用特約」や「追加被保険者特約」などのオプションを付けることができます。

建設工事業でよく付保される特約には、以下のようなものがあります。

・リコール費用特約:施工した部材や設備に欠陥が見つかり、社会的に危険があると判断された場合、交換・回収・通知にかかる費用を補償
・追加被保険者特約:元請業者や発注者を一緒に被保険者とし、事故時に連名で対応可能
・海外PL特約:施工資材が輸出品である場合、海外での事故に備える

これにより、単なる賠償責任の補償にとどまらず、取引先や顧客との信頼維持にも役立つリスクマネジメントが実現できます。

経営者個人の資産防衛

万一の事故で大きな損害賠償請求を受けた場合、法人だけでなく経営者個人にまで責任が及ぶケースがあります。

特に中小の建設業者では、会社資産と経営者の個人資産が密接に結びついていることも少なくありません。

PL保険に加入しておけば、賠償責任による経営破綻や経営者個人の資産流出を防げるため、事業を安心して継続できる環境が整います。 

結論

建設工事業者がPL保険に加入するメリットは、単に「事故に備える」というだけではありません。

具体的には下記のようなメリットを得ることができます。

・完成後に潜むリスクからの防御
・元請・発注者からの信用獲得
・巨額な賠償による事業リスクの遮断会費
・特約による柔軟なリスク対応
・経営者個人の資産防衛

これらを総合すると、PL保険は建設業者にとって「任意保険」というより「経営を守る必須の防御策」と言うことができます。

まとめ

今回の記事ではPL保険にスポットライトをあてて、その内容を深掘りしました。

飲食店経営者、製造業者、工事業者にとって、事業を営む上で第三者に損害を与えるリスクからは避けて通ることはできません。

事故内容によっては、経営に影響を与えうるほどの大きな経済的ダメージのリスクもあります。

PL保険の補償内容をしっかり理解し適切に付保することで、リスクにしっかり備えることが重要です。

補償内容や合理的な付保の方法については、保険会社や代理店の担当者に相談するようにしましょう。

 

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