損害保険の重複保険不適用特約とは?建築業必見!!請負業者賠償責任保険
建設工事現場を通りかかると、非常にたくさんの人が集まっているなと、多くの人が思っていることでしょう。
実際に、建設工事現場には様々な業者が出入りします。
足場を組む人や塗装する人、外壁等の洗浄作業をする人等、実に多様な業者が集まって、各専門分野で活躍しています。
これが大規模商業施設や大型マンションといった現場ともなると、出入りする人の数は数百数千にもなりえます。
一か所に集まる人の数が多いことも一因ですが、建設業は一般的な他の業種と比較すると、様々な面で危険の多い仕事です。また、業界の仕組みの面でも、建設業ならではの特殊性もあります。
今回の記事では、建設業界特有の仕組みについて解説し、そのリスクとその対策について触れていきたいと思います。
目次
建設工事の仕組み
建設業界は、現場作業において、元請業者から下請け業者、孫請け業者等といった多くの業者がひとつの現場に集まって作業する、いわゆる重層下請け構造となっています。
この構造は建設業ならではの特徴であると言えます。ではなぜ建設業界はこのようなややこしい構造となっているのでしょう。
それは建設工事においては、建設作業の各段階に応じて必要となる工事が異なるためです。
たとえば工事の初期段階では、土工事や鉄筋工事、型枠工事といった基礎工事が必要となりますが、ある程度建物が間瀬に近づいてきた工事終盤ともなると、設備工事や内装工事が必要となります。
このように工事の段階に応じて必要となる工事が異なるため、各専門分野に特化した業者に工事を請け負ってもらうことになり、結果的に何層もの下請け構造ができあがってしまったのです。
また、単一の業者で様々な職種の職人を抱え、事業展開すると当然固定費(人件費)が重くのしかかり、経営を圧迫しかねません(大企業であれば別ですが)。
中小の業者としては、ある程度得意とする分野を絞るか、専門分野に特化した方が合理的といった事情も重層下請け構造を加速した要因といえます。
建設業者の現場作業中における賠償リスク
ここで、建設業者が現場作業中に想定すべき賠償リスクについて解説していきたいと思います。なお事業者としては業務災害のリスクも当然考えるべきリスクになります。
業務災害については下記サイトで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
【参考サイト:】業務災害保険とは?必要性はある?労災との違いは?の質問にプロが回答いたします。 | FP立川・国分寺・吉祥寺ファイナンシャルプランナー相談はファイナンシャルトレーナー
【参考サイト:】業務災害補償保険と労災の違いを分かりやすく現役の社労士が解説いたします。 | FP立川・国分寺・吉祥寺ファイナンシャルプランナー相談はファイナンシャルトレーナー
請負作業遂行中の賠償リスク
建設作業現場では、請負作業中に発生する偶然な事故によって、作業に関係のない第三者を死傷させたり、第三者の物に損害を与えてしまったりするリスクがあります。
下記のような事例が考えられ、事業者としては当然そのようなリスクを想定し、対策を検討していなければなりません。
・建設現場の高層より資材を落下させてしまい、たまたま通りかかった通行人にケガを負わせてしまった。
・ビルの外装の塗装作業中、ペンキの入った缶を落としてしまい、通行人の衣類を汚損させてしまった。
請負作業遂行のために所有、使用、または管理している施設管理不備のリスク
建設作業そのものに起因する事故だけでなく、建設作業に必要となる施設や機械の管理不備によって、第三者に損害を与えてしまうリスクがあります。
下記のような事例についても事業者はリスクとして想定しておかなければなりません。
・足場の建付け不良のため、近隣の住宅に倒壊してしまう。屋根や外壁に多くの損害を与えてしまった。
・資材置き場に立てかけてあった鉄筋材が強風によって崩れてしまい、たまたま通りかかった通行人に倒れ、ケガを負わせてしまった。
このような建設作業中に発生する賠償リスクに備えるには、請負業者賠償責任保険が最適です。次項でその補償概要を解説します。
請負業者賠償責任保険とは
某大手損害保険会社では、請負業者賠償責任保険の補償概要を下記のように説明しています。
建設工事・土木工事などの工事請負業者や清掃業者などが、請負作業の遂行中に起こした事故や、作業のために所有・管理している施設(仮設建物など)の欠陥や管理不備による事故のため、賠償責任を負われたときに保険金をお支払いします。
この保険は建設業者だけでなく、工事を請け負う業者にとっては必須の保険であるといえます。
では、請負業者賠償責任保険では具体的にどのような損害が補償対象となるのでしょう。
基本補償としては下記の6つの損害を対象としています。
基本補償は6つ
・損害賠償金
・損害防止費用
・権利保全行使費用
・緊急措置費用
・協力費用
・争訟費用
損害賠償金
法律上の損害賠償責任にもとづいて被害者に対して支払うべき損害賠償責任の額を補償します。
具体的には、身体傷害を負ってしまった被害者の方の治療費や慰謝料が該当します。
物を壊してしまったり汚損させてしまった場合には、その修理費、クリーニング代が補償されます。
なお和解金や示談金等も補償対象となります。
損害防止費用
損害が発生した場合の、その損害が拡大するのを防ぐのに必要・有益であった費用が補償対象となります。
損害の拡大を防ぐことは、保険会社側にとっても保険金の支出の削減につながることにもなるのです。
なお、損害防止費用の対象となるかは、可能な限り支出前に保険会社に確認することが望ましいです。
権利保全行使費用
損害が発生した場合によっては、あなたが100%悪いとは限らず、別の業者や被害者側にも落ち度はあるかもしれません。
これを過失割合といいます。この場合の、別の業者や被害者側に対する求償権を保全する手続きのために必要となる費用を指します。
たとえば、文書作成費用や打ち合わせに要した通信費、交通費等が該当します。
緊急措置費用
損害が発生した場合の、ケガをした第三者の救護活動に要した費用等、緊急措置のために支出した費用を補償します。
協力費用
損害が発生した場合の、その原因となる事故の解決に向けて、保険会社に協力するために必要となる費用を補償します。
具体的には交通費や通信費が補償対象となります。保険会社としても事故の早期解決が図られることで保険金の支出を抑える効果が期待できることになるのです。
争訟費用
損害賠償責任に関する訴訟費用や弁護士報酬を補償します。
重複保険不適用特約とは
最後に、建設業に特有の重層下請け構造ならではリスクに対応する特約について紹介します。
たとえば、あなたが下請け業者として元請業者から新築建物の外壁塗装の工事を請け負っていたとします。
もし仮に、その塗装工事中、うっかり塗料を飛散させ、近くに停めてあった高級車を汚損させてしまったらどうなるでしょう。
実際に作業を行ったあなたは当然に責任を負いますが、仕事を発注した元請業者にも管理責任が問われるのです。
このような場合、あなたは以下のような悩みが想定されるのではないでしょうか。
・元請で加入している賠償責任は使わせてもらえるのだろうか。
・元請の保険を使えたとしても、そのことによって元請との関係が悪くなり、今後仕事を発注してもらえるだろうか。
重複保険不適用特約を付帯すると元請の保険を使わずに保険金支払が可能
このような場合、「重複保険不適用特約」を付帯していると、上記の悩みの解決に大きく前進することになります。
「重複保険不適用特約」とは、仕事の遂行または仕事の遂行のために所有・使用・管理する施設により発生した対人・対物事故について、貴社が下請契約により仕事を行う場合の元請負人等または貴社の派遣先等が別途手配する保険契約との保険金の分担は行わず、この保険から優先して保険金を支払うことのできる特約です。
つまり、元請の保険を使わず、あなたの加入している保険から優先して保険金支払いができるのです。
自分の犯した仕事の結果責任をしっかりとることを示すことで、元請業者との関係悪化することなく、良好な関係の継続が期待できます。
建設業において。下請け工事を多く請け負う業者にとって、とても重要な特約です。
なお、保険会社によっては取り扱いのないところもありますので、必ず取り扱いの有無を確認するようにしましょう。
まとめ
今回の記事では建設業界の仕組みについて触れ、業界特有の仕組みがはらむリスクに対応した保険(特約)について解説しました。
建設業は、通常の業種よりもリスクの高い業種であるといえます。
本記事では、その数あるリスクの中でも第三者に対する賠償リスクにフォーカスし、解説しました。
なかでも最後の項で紹介した「重複保険不適用特約」は、建設業の特殊性から生じるリスクにマッチした補償内容であるといえます。
現在加入中の賠償責任保険の補償内容を確認し、当該特約が付保されていないようでしたら、ぜひ加入の検討をしてみてください。
なお、労働者が業務中に怪我を負ってしまうリスク(業務災害リスク)については別の記事で解説してますので、そちらも参考にしてください。
【参考サイト:】業務災害保険とは?必要性はある?労災との違いは?の質問にプロが回答いたします。 | FP立川・国分寺・吉祥寺ファイナンシャルプランナー相談はファイナンシャルトレーナー
【参考サイト:】業務災害補償保険と労災の違いを分かりやすく現役の社労士が解説いたします。 | FP立川・国分寺・吉祥寺ファイナンシャルプランナー相談はファイナンシャルトレーナー