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2024.12.05

火災保険で破損・汚損の免責なし(ゼロ)は必要か?免責金額の考え方は?

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著者情報 森 逸行 FP歴15年 経験した事を伝え解決に導く『金融パーソナルトレーナー』

火災保険で破損・汚損の免責0は必要な補償か?

 年末は1年の中で最も事故報告の多い時期です。

筆者も損害保険の現場で身にしみて感じております。

事故の中でも、たとえば自動車事故が多いのは、年内に仕事を片付けてしまおうという人間の心理的な要因から、運転が荒くなっているのでは、とされています。

火災保険の事故に関しては、そもそも年末は乾燥して燃えやすいという季節的要因が大きいのでしょう。

ところで、火災保険には「破損、汚損等」という補償があるのはご存知でしょうか?

火災保険は何も火災の時だけでなく、様々な損害が補償対象となっているのです。

今回の記事では、火災保険の「破損、汚損等」に焦点を当てて解説していきたいと思います。 

火災保険における「破損、汚損等」とは?

冒頭も申し上げましたが、火災保険は火災だけでなく様々なリスクを補償することができます。

保険会社によってリスクの分類は異なりますが、概ね下記の分類でほぼ統一されています。

①火災、落雷、破裂・爆発
②風災・雹災・雪災
③水濡れ
④盗難
⑤水災
⑥破損、汚損等

上記の分類で、「破損、汚損等」とありますが、具体的にどういったときに補償されるのでしょうか。

某大手損害保険会社では「破損、汚損等」を下記のように説明しています。 

不測かつ突発的な事故で、①~⑤に該当しないものを指します。 

何ともわかりにくい説明ですが、①~⑤には分類されないけれども、損害保険における損害の3要素である「急激」・「偶然」・「外来」に該当するのであれば「破損、汚損等」として損害認定すると考えて差し支えないでしょう。 

火災保険で破損・汚損の免責0は必要な補償か?3

各保険会社の保険商品における「破損、汚損等」の取り扱いを紹介

前項の「破損、汚損等」の説明を聞く限り、補償範囲が広く、とても手厚い補償内容だと感じられたことと思います。

ここで損害保険会社各社の「破損、汚損等」補償の取り扱い状況を紹介します。 

保険会社①:〇〇海上
保険商品名:〇〇すまいの保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円

保険会社②:〇〇海上〇〇
保険商品名:〇〇住まいの保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円

保険会社③:〇〇ジャパン
保険商品名:〇〇住まいの保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円

保険会社④:〇〇ニッセイ
保険商品名:〇〇住まいの保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円

保険会社⑤:〇〇火災海上
保険商品名: 〇〇安心保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円

保険会社⑥:〇〇損害保険
保険商品名:〇〇マイホーム保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:3万円

保険会社⑦:〇〇火災
保険商品名:〇〇あっとほーむ
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:3万円

保険会社⑧:〇〇損害保険
保険商品名:〇〇アシスト
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:3万円

保険会社⑨:〇〇損害保険
保険商品名: 〇〇プロテクト総合保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:1万円

保険会社⑩:〇〇総合保険
保険商品名:〇〇プロテクト総合保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円ただし条件あり

このように多くの損害保険会社で「破損、汚損等」は取り扱っていることはわかりますが、免責金額の設定が必須となっています。

※免責金額の考え方については次項で解説します。 

なかには「破損、汚損等」補償の取り扱い自体がないところもありますので、事前に必ず確認するようにしましょう。

 免責金額の考え方

前項の一覧表を見て、そもそも免責金額って具体的にどういうことを意味するのだろうと思った方は多いのではないでしょうか。

ここで免責金額の考え方について解説したいと思います。 

免責とは

まず損害保険における免責の考え方について解説します。

免責とはその言葉が示す通り、責任を免れることを意味します。

つまり免責とは、保険会社が保険金を支払う責任を免れる・保険会社が保険金を支払う責任を負わない、ということになります。 

免責金額とは

損害保険における免責の意味を踏まえて、今度は免責金額について考えます。

免責金額とは、保険金の支払事由が発生しても、損害額が契約時に設定した免責金額を超えない場合は、保険金を支払う責任を負わないということを意味します。

つまり免責金額イコール契約者が自己負担をする金額ということになります。

たとえば、火災保険に免責金額5万円を設定しているという前提で考えます(その他の諸条件は省略します)。

当該火災保険の契約者が、タバコの不始末によるボヤによって、建物を汚損させてしまったとします。

その際の損害額が10万円と認定された場合、支払われる保険金は、10万円-5万円=5万円となります。

一方で、同じ例で損害額が4万円と認定されたとすると、損害額が免責金額を超えない為、保険金の支払いはありません。 

フランチャイズ方式とは

上記の免責金額と似た概念で、フランチャイズ方式というものがあります。

これは、損害額が、契約した保険商品で設定されたフランチャイズ金額を超えない場合、保険金の支払いはなされないというものです。

たとえば、フランチャイズ金額20万円の火災保険において、強風によって窓ガラスが割れてしまったとします。

損害額が19万円と認定されたら、保険金は1円ももらえないのです。一方で損害額が21万円と認定されると21万円が支払われます。

ひと昔前の火災保険では風災・雹災・雪災は20万円のフランチャイズ方式が一般的でした。

なお、厳密にはフランチャイズ方式は免責金額の中にある方式の分類の一部とされ、フランチャイズ方式との対比でエクセス方式があるのですが、現在ではほとんど免責金額といえばエクセス方式が一般認識とされています。 

免責事項とは

免責事項とは、保険会社が保険金支払いの責任を負わない事由を指します。

保険商品のパンフレットに記載のある「保険金をお支払いしない主な場合」が免責事項に該当します。

主に保険契約者の故意または重大な過失の場合は免責事項となります。 

保険会社とすると免責の規定を設けることで、少額の損害やわざと損害を起こしたような場合は、自己責任で対応してくださいというメッセージを発していると解釈して良いでしょう。

社会的に意義のある保険事業を健全に運営するためには、一定の線引きが必要ということを示しています。 

破損、汚損等は必要な補償か?

ここまで「破損、汚損等」の補償内容について解説してきましたが、ここではそもそも「破損、汚損等」は必要な補償なのかについて考えてみたいと思います。

某大手損害保険会社では「破損、汚損等」の損害事例として下記のようなケースを紹介しています。 

・自転車が飛び込んできて、建物が損害を受けた。

・誤ってコーヒーをこぼしてしまい、パソコンを壊してしまった。

 実は、火災保険の保険金請求事由の半数近くがこの「破損、汚損等」を原因とするものであるとのデータがあります。

上記で紹介した損害事例を考えたら、日常生活において誰にとっても起こりうる出来事だということが想像つくことと思います。

一方で、「破損、汚損等」による損害の額は、それ以外の事由と比較すると小規模損害なのです。

保険を付保する際の基本的な考え方として、発生頻度は少ないけれども、それが発生した際の経済的なダメージが大きいものに優先して付保する、というものがあります。

その考え方を尊重すると「破損、汚損等」の補償の優先順位は低いかもしれません。

しかし筆者はあえて「破損、汚損等」の補償は必要と考えます。

保険はできるだけ手厚く付保するべきで、予期せぬ事由があっても対応できれば平穏な生活を送ることができると考える為です。

想定外の出来事は何も起こらないに越したことはないですが、仮に何かあったとしても、それによる突発的な費用負担は発生せず、保険で賄えれば、家庭における資金繰りが安定します。

また、「破損、汚損等」による損害でも、経済的負担の大きな損害が発生することもありえます。

保険に対する考え方は、その人の置かれた状況や家族構成、保険そのものに対する考え方に応じて千差万別です。

ぜひ筆者の考え方も参考にしてもらえたら幸いです。

なお、「破損、汚損等」損害の実例を別記事で詳しく解説しています。

そちらも合わせて参考にしてみてください。 

【参考サイト:破損・汚損・不測かつ突発的な事故の火災保険金支払い事例20件を一挙公開】破損・汚損・不測かつ突発的な事故の火災保険金支払い事例20件を一挙公開 | FP立川・国分寺・吉祥寺ファイナンシャルプランナー相談はファイナンシャルトレーナー 

まとめ

今回の記事では、火災保険の補償のひとつ「破損、汚損等」について解説しました。

本記事を読んでいただいて、とても幅広い補償内容であることをわかっていただけたと思います。

幅広く手厚い補償であるがゆえに、補償の付保には免責金額の設定が必須となっています。

少し前までの火災保険では「破損、汚損等」も免責金額の設定なしの取り扱いをしていた保険会社はあったのです。

また、補償を手厚くすれば、当然保険料も高くなります。

ご自身の置かれた環境や保険に対する考え方を加味して、付保の有無をじっくり検討してください。

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