火災保険で破損・汚損の免責なし(ゼロ)は必要か?免責金額の考え方は?おすすめの保険会社は?

年末は1年の中で最も事故報告の多い時期です。
事故の中でも、たとえば自動車事故が多いのは、年内に仕事を片付けてしまおうという人間の心理的な要因から、運転が荒くなっているのでは、とされています。
火災保険の事故に関しては、そもそも年末は乾燥して燃えやすいという季節的要因が大きいのでしょう。
ところで、火災保険には「破損、汚損等」という補償があるのはご存知でしょうか?
火災保険は何も火災の時だけでなく、様々な損害が補償対象となっているのです。
今回の記事では、火災保険の「破損、汚損等」に焦点を当てて解説していきたいと思います。
目次
火災保険における「破損、汚損等」とは?
冒頭も申し上げましたが、火災保険は火災だけでなく様々なリスクを補償することができます。
保険会社によってリスクの分類は異なりますが、概ね下記の分類でほぼ統一されています。
①火災、落雷、破裂・爆発
②風災・雹災・雪災
③水濡れ
④盗難
⑤水災
⑥破損、汚損等
上記の分類で、「破損、汚損等」とありますが、具体的にどういったときに補償されるのでしょうか。
某大手損害保険会社では「破損、汚損等」を下記のように説明しています。
不測かつ突発的な事故で、①~⑤に該当しないものを指します。
何ともわかりにくい説明ですが、①~⑤には分類されないけれども、損害保険における損害の3要素である「急激」・「偶然」・「外来」に該当するのであれば「破損、汚損等」として損害認定すると考えて差し支えないでしょう。
各保険会社の保険商品における「破損、汚損等」の取り扱いを紹介
前項の「破損、汚損等」の説明を聞く限り、補償範囲が広く、とても手厚い補償内容だと感じられたことと思います。
ここで損害保険会社各社の「破損、汚損等」補償の取り扱い状況を紹介します。
保険会社①:〇〇海上
保険商品名:〇〇すまいの保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円
保険会社②:〇〇海上〇〇
保険商品名:〇〇住まいの保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円
保険会社③:〇〇ジャパン
保険商品名:〇〇住まいの保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円
保険会社④:〇〇ニッセイ
保険商品名:〇〇住まいの保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円
保険会社⑤:〇〇火災海上
保険商品名: 〇〇安心保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円
保険会社⑥:〇〇損害保険
保険商品名:〇〇マイホーム保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:3万円
保険会社⑦:〇〇火災
保険商品名:〇〇あっとほーむ
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:3万円
保険会社⑧:〇〇損害保険
保険商品名:〇〇アシスト
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:3万円
保険会社⑨:〇〇損害保険
保険商品名: 〇〇プロテクト総合保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:1万円
保険会社⑩:〇〇総合保険
保険商品名:〇〇プロテクト総合保険
破損、汚損等の取り扱い:あり
免責金額の最低額:5万円ただし条件あり
このように多くの損害保険会社で「破損、汚損等」は取り扱っていることはわかりますが、免責金額の設定が必須となっています。
※免責金額の考え方については次項で解説します。
なかには「破損、汚損等」補償の取り扱い自体がないところもありますので、事前に必ず確認するようにしましょう。
免責金額の考え方
前項の一覧表を見て、そもそも免責金額って具体的にどういうことを意味するのだろうと思った方は多いのではないでしょうか。
ここで免責金額の考え方について解説したいと思います。
免責とは
まず損害保険における免責の考え方について解説します。
免責とはその言葉が示す通り、責任を免れることを意味します。
つまり免責とは、保険会社が保険金を支払う責任を免れる・保険会社が保険金を支払う責任を負わない、ということになります。
免責金額とは
損害保険における免責の意味を踏まえて、今度は免責金額について考えます。
免責金額とは、保険金の支払事由が発生しても、損害額が契約時に設定した免責金額を超えない場合は、保険金を支払う責任を負わないということを意味します。
つまり免責金額イコール契約者が自己負担をする金額ということになります。
たとえば、火災保険に免責金額5万円を設定しているという前提で考えます(その他の諸条件は省略します)。
当該火災保険の契約者が、タバコの不始末によるボヤによって、建物を汚損させてしまったとします。
その際の損害額が10万円と認定された場合、支払われる保険金は、10万円-5万円=5万円となります。
一方で、同じ例で損害額が4万円と認定されたとすると、損害額が免責金額を超えない為、保険金の支払いはありません。
フランチャイズ方式とは
上記の免責金額と似た概念で、フランチャイズ方式というものがあります。
これは、損害額が、契約した保険商品で設定されたフランチャイズ金額を超えない場合、保険金の支払いはなされないというものです。
たとえば、フランチャイズ金額20万円の火災保険において、強風によって窓ガラスが割れてしまったとします。
損害額が19万円と認定されたら、保険金は1円ももらえないのです。一方で損害額が21万円と認定されると21万円が支払われます。
ひと昔前の火災保険では風災・雹災・雪災は20万円のフランチャイズ方式が一般的でした。
なお、厳密にはフランチャイズ方式は免責金額の中にある方式の分類の一部とされ、フランチャイズ方式との対比でエクセス方式があるのですが、現在ではほとんど免責金額といえばエクセス方式が一般認識とされています。
免責事項とは
免責事項とは、保険会社が保険金支払いの責任を負わない事由を指します。
保険商品のパンフレットに記載のある「保険金をお支払いしない主な場合」が免責事項に該当します。
主に保険契約者の故意または重大な過失の場合は免責事項となります。
保険会社とすると免責の規定を設けることで、少額の損害やわざと損害を起こしたような場合は、自己責任で対応してくださいというメッセージを発していると解釈して良いでしょう。
社会的に意義のある保険事業を健全に運営するためには、一定の線引きが必要ということを示しています。
破損、汚損等は必要な補償か?
ここまで「破損、汚損等」の補償内容について解説してきましたが、ここではそもそも「破損、汚損等」は必要な補償なのかについて考えてみたいと思います。
某大手損害保険会社では「破損、汚損等」の損害事例として下記のようなケースを紹介しています。
・自転車が飛び込んできて、建物が損害を受けた。
・誤ってコーヒーをこぼしてしまい、パソコンを壊してしまった。
実は、火災保険の保険金請求事由の半数近くがこの「破損、汚損等」を原因とするものであるとのデータがあります。
上記で紹介した損害事例を考えたら、日常生活において誰にとっても起こりうる出来事だということが想像つくことと思います。
一方で、「破損、汚損等」による損害の額は、それ以外の事由と比較すると小規模損害なのです。
保険を付保する際の基本的な考え方として、発生頻度は少ないけれども、それが発生した際の経済的なダメージが大きいものに優先して付保する、というものがあります。
その考え方を尊重すると「破損、汚損等」の補償の優先順位は低いかもしれません。
しかし筆者はあえて「破損、汚損等」の補償は必要と考えます。
保険はできるだけ手厚く付保するべきで、予期せぬ事由があっても対応できれば平穏な生活を送ることができると考える為です。
想定外の出来事は何も起こらないに越したことはないですが、仮に何かあったとしても、それによる突発的な費用負担は発生せず、保険で賄えれば、家庭における資金繰りが安定します。
また、「破損、汚損等」による損害でも、経済的負担の大きな損害が発生することもありえます。
保険に対する考え方は、その人の置かれた状況や家族構成、保険そのものに対する考え方に応じて千差万別です。
ぜひ筆者の考え方も参考にしてもらえたら幸いです。
なお、「破損、汚損等」損害の実例を別記事で詳しく解説しています。
そちらも合わせて参考にしてみてください。
Q&A:破損、汚損等事故の損害対応にあたってよく受けた質問と回答
火災保険の破損・汚損等のリスクは、火災リスクや風災リスクと比較すると、損害額としてはそれほど大きくなりにくいという特徴があります。
ただその反面、事故件数については、火災・風災リスクとは比較にならないほど多いという特徴もあります。
筆者も現場ではよく破損・汚損等の事故について多くの問い合わせを受け、実際に保険金請求の対応も行ってきました。
ここで、筆者が現場で経験した破損、汚損等事故の損害対応にあたってよく受けた質問と、それに対する回答を紹介したいと思います。
質問:火災保険で「破損・汚損等」とは具体的にどのようなケースが対象になりますか?
初めまして。質問させていただきます。念願だった新築一戸建てのマイホームを購入し、火災保険にも加入しました。
きっと人生で一番高い買い物であろうマイホームを、災害から守るという意味で、火災保険の補償内容はしっかりしたもので入りました。
もちろん地震保険もかけています。ここで質問なのですが、火災保険の中にある「破損、汚損等」というのは、具体的にはどういう事故を指すのでしょうか?
これだけがいまいちイメージつかなかったので質問しました。
回答|日常生活の中で発生する、不測かつ突発的な事故を補償します。
火災保険における「破損・汚損」とは、火災、落雷、風災、水災などの主要な災害以外に、日常生活の中で不測かつ突発的に発生した、建物や家財の損害に対して補償するための補償の一つです。
通常の火災保険の基本補償ではカバーしきれない細かい事故リスクを広くカバーする役割を持っています。
具体的にどのようなケースが対象となるか、いくつか代表的な例を挙げて説明します。
典型的な対象事例 ◆家庭内事故による破損
・子どもが室内でボール遊びをしていて、誤って壁に穴をあけた。
・家具を移動中に、床に傷をつけてしまった。
・飲み物をこぼしてカーペットやソファが著しく汚れてしまった。
・掃除中に掃除機を壁にぶつけて壁紙が破れてしまった。
・テレビやパソコンなどの電子機器をうっかり倒して破損させた。
・花瓶や置物を倒してしまい、床や家具に傷をつけた。
典型的な対象事例◆来客や第三者による損害
・来客中に友人が誤って壁に飲み物をぶちまけ、クロスが汚損した。
・配達員が荷物を運び入れる際、玄関のドアを傷つけた。
典型的な対象事例◆その他の突発的事故
・室内でペットが暴れ、壁やフローリングを傷つけた。(※ペットによる損害は契約条件による)
・飲み物がこぼれて電子機器が故障した場合(原因が偶発的なら対象になりうる)。
補償対象外となる典型例
補償対象となりうる場合を上記に列挙しましたが、逆に、破損・汚損補償であっても、以下のようなケースは対象外となることが一般的です。
・故意による損害(わざと壊した場合)
・経年劣化や自然消耗(時間の経過で自然に傷んだ、色あせたなど)
・施工不良や設計ミスによる損害(場合によっては施工業者に損害賠償することができます)
・動植物(ペットを含む)による損害(※契約内容により対象外となることが多い)
・日常的な清掃不足による汚れ(カビ、サビ、シミなど)
・地震・噴火・津波による損害(これらは通常、火災保険ではなく「地震保険」でカバー)
なぜ破損・汚損等の補償が重要なのか?
火災保険は、その名の通り火災に代表される自然災害に備えるものではありますが、実際に起こる損害事故の中には、自然災害には分類されない、日常的な「うっかりミス」による損害は意外に多いです。
たとえば「テレビの破損」「壁の傷」「家具の破損」など、火災とは無関係な事故が住まいには数多く潜んでいます。
こうした突発的な事故は、火災などに比較すると金額は小さいものの、それでも時として修理費用もかさみ、馬鹿になりません。
このような思わぬ出費に対応する意味で、破損・汚損等補償を付帯しておくことで、より幅広いリスクに対応できるという大きなメリットがあります。
以上に説明したように、破損・汚損等補償は、日常生活の中で発生する偶発的な事故による建物や家財の損害をカバーするための補償です。火災や風水害といった大きな災害とは違い、普段の生活の中で意外と頻繁に起こる小さな事故を経済的にカバーする役割を持っています。
ただし、すべての損害が無条件に補償されるわけではなく、契約条件や事故の状況によって対象外となるケースもあるため、事故発生時は必ず保険会社へ詳細を報告し、補償可否を確認することが重要です。
質問:破損・汚損等事故で保険金請求すると保険料は上がりますか?
破損・汚損等の事故で保険金請求すると、保険契約更新の際に、保険料は上がってしまうのでしょうか?
破損、汚損等は比較的補償範囲も広く、充実していると思うのですが、気軽に請求したがために、自動車保険みたいに保険料が上がってしまうのはちょっと避けたいと思い、質問させていただきました。
回答:直ちに保険料は上がりませんが、間接的に将来に影響がでる可能性もあります。
破損・汚損等補償で保険金請求をした場合、直ちに「火災保険料が上がる」ということは一般的にはありません。ただし、火災保険の仕組みや、保険会社の運用方針、契約内容によって影響が出る可能性があるため、一定の注意が必要です。
まず、火災保険(特に住宅向けのもの)は、自動車保険と違い、事故を起こしたからといって「等級」が下がる(割引率が悪くなる)というシステムは基本的には存在しません。
そのため、一度の破損・汚損補償の利用によって次年度の保険料が即座に上がるわけではない、というのが原則です。
しかしながら、実際には以下のような影響が将来的に生じる可能性があります。ひとつずつ見ていきましょう。
影響1:契約更新時に「事故件数」が評価される場合がある
保険会社は、契約者ごとの事故歴(いわゆる「保険金請求の履歴」)を管理しています。破損・汚損等事故による保険金請求を何度もしている場合、火災保険の契約更新時に保険会社がリスクを高く見積もり、保険料が引き上げられる、もしくは「継続契約を断られる」(いわゆる更新拒否)といった対応をされる可能性もゼロではありません。
特に、短期間に複数回請求した場合には、「偶発的事故ではなく、管理状態に問題がある」と見なされることもあるため注意が必要です。
影響2:事故件数に応じた「割引率の減少」
一部の保険会社では、事故がない契約者に対して「無事故割引」や「継続割引」といった、自動車保険に適用されるような割引制度を火災保険にも導入している場合があります。
このような保険会社では、破損・汚損等事故で保険金請求を複数回利用したことで、この割引対象から外れ、次回更新時に割引が適用されず、結果として実質的に保険料が高くなるというケースも考えられます。
つまり「事故そのものに対するペナルティ」ではなく、「割引を受けられなくなることによる間接的な値上げ」といえます。
影響3:補償内容の見直し・条件変更を求められることがある
保険会社によっては、事故履歴が多い場合、保険契約更新時に下記のような提案をしてくるところもあります。
・破損・汚損等補償そのものの付帯を認めない
・免責金額(自己負担額)を引き上げる
・補償対象を制限する
たとえば、これまで「免責金額なし」だったものが、「1事故あたり自己負担5万円」と言う条件を飲まないと契約更新に応じてもらえないくなる場合があります。
影響4:他の保険(乗り換え)にも影響する可能性
もし火災保険の更新時に他社へ乗り換えを検討する場合、過去の事故歴の申告が求められることがあります。
破損・汚損補償の利用も「事故」としてカウントされるため、申告内容によっては新しい保険会社が加入条件を厳しく設定することもあり得ます。
これまでに解説した影響を踏まえると、少額損害での保険金請求は慎重に判断するべきと言えます。
例えば修理費用が数万円程度の場合、「免責金額(自己負担額)」を差し引くと実際に受け取れる保険金額はごくわずか、ということもあります。
そのため、今後の契約条件への影響を考慮し、少額の場合はあえて自己負担する選択肢も検討しましょう。
まずは、損害が発覚した場合は、請求するか迷う場合は保険会社や代理店に必ず相談するようにしましょう。
その際に、「今回の保険金請求がどのような影響を及ぼすか」を事前に確認することをおすすめします。
いただいたご質問に対する回答をまとめると、破損・汚損等事故による保険金請求を利用しただけで直ちに火災保険料が上がるわけではありませんが、
・更新時の契約条件に影響する可能性
・割引の適用除外
・補償内容の見直し
といった間接的な影響が将来的に生じるリスクはあります。
特に短期間に複数回の請求を行うと、保険会社からリスクの高い契約者と見なされる可能性が高まるため、利用するかどうかは冷静に判断し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
質問:破損・汚損補償を使えるかどうかの判断基準は?
分譲マンションの一室に夫婦と子ども1人の合計3人で生活しています。
火災保険にはもちろん加入していますが、これまで一度も保険金請求したことはありません。ただ、いま振り返ってみると、火災保険を使えるような事故を経験していたのでは、と思うこともあります。
特に破損、汚損等事故についてはそのように思っています。
破損、汚損等事故で保険を使えるかどうかの判断基準はどのあたりにあるのでしょうか?
回答|使えるかどうかの判断基準は大きく5つのポイントがあります。
火災保険における破損・汚損補償を実際に利用できるかどうかを判断する際には、単純に「壊れた」「汚れた」という事実だけでは決まりません。
保険金が支払われるかどうかは、保険契約の内容だけでなく、事故発生の状況、損害の性質、対象物の状態など、複数の要素を総合的にチェックして判断されます。
ここでは、破損・汚損等補償を使えるかどうかを見極めるための主な判断基準を、5つのポイントで詳しく解説します。
不測かつ突発的な事故であるか?
最も重要なポイントは、「不測かつ突発的に発生した事故であるかどうか」です。
不測かつ突発的とは、予測できず、かつ意図的ではない事故のことを指します。
たとえば、以下のような事例は不測かつ突発的という要件を満たしているといえます。
・誤って掃除機を壁にぶつけて破損させた → 対象になる可能性が高い
・床に置いていた家電製品をうっかり踏んづけて割った → 対象になる可能性が高い
逆に、下記のような事例となると、不測かつ突発的とは言えず、意図的とみなされます。
・自分で意図的に家具を壊した場合 → 補償対象外(故意による損害)
・明らかに注意義務を怠った(過失が大きい)場合 → 対象外となることがある
なお、偶発的であることを証明するために、事故当時の状況説明や写真などが求められます。
損害対象物が契約上補償対象に含まれているか?
火災保険には、基本的に「建物」と「家財」に分けて補償対象が設定されています。破損・汚損等補償が付帯されていても、対象物が契約時に補償の対象とされていなければ、そもそも保険金は支払われません。
たとえば建物のみを契約している場合、壁や床の破損は補償されるが、テレビや家具は補償対象外となりますが、家財も補償対象としている場合、室内の家具・家電も補償対象になります。
契約内容を確認し、「補償対象物」に該当するかをチェックすることが必須です。
経年劣化・消耗による損害でないか?
破損・汚損補償は「突発的な事故」に対して支払われるものであり、経年劣化や自然な消耗による損害は対象外です。
【経年劣化とみなされ補償対象外となる代表例】
・フローリングが長年の使用で擦り減った
・壁紙が自然に色褪せた
・長年使った家具の脚が自然に折れた
これらは、事故ではなく「時間の経過による自然な変化」と判断され、保険の支払い対象外となります。
免責金額(自己負担額)とのバランスはどうか?
破損・汚損補償には、多くの場合「免責金額(自己負担額)」が設定されています。
例えば「1事故につき自己負担5万円」と設定されていれば、損害額が5万円以下の場合、保険金は支払われず、自己負担となります。
【具体例】
・修理費が3万円 → 保険金支払いなし(全額自己負担)
・修理費が10万円 → 免責5万円を差し引いた5万円が支払われる
このため、免責金額を超える損害かどうかも請求判断の重要なポイントになります。
契約に特別な制限がついていないか?
一部の保険会社の火災保険契約では、破損・汚損等補償について、以下のような制限が設けられている場合もあります。
・1回の事故につき限度額○万円
・特定の家電製品(スマホやタブレット)は対象外
・ペットによる損害は対象外
商品パンフレットや契約書、もしくは重要事項説明書を確認し、自身の契約内容に特別な制限がないかを事前に把握しておくことが大切です。
以上、5つのポイントをまとめると、破損・汚損補償を使えるかどうかは、
・事故が不測かつ突発的か
・損害対象物が補償範囲に含まれているか
・経年劣化でないか
・免責金額を超えているか
・契約上の特別な制限に抵触していないか
といったポイントを総合的にチェックして判断します。迷ったときは、現場の状況をできるだけ詳細に記録し、写真を撮り、速やかに保険会社に相談することで、スムーズな保険金請求が可能になります。
質問:破損・汚損補償を使うとき、どんな書類が必要ですか?
火災保険の破損、汚損等事故について質問です。保険金請求にあたって、どんな書類が必要になるのでしょうか?
幸いなことに、これまで保険金請求するような大きな事故にあったことはないのですが、今後もないとは限らないと思っています。
特に破損、汚損等の事故は、とても可能性の高い事故であるように感じられます。
いざ、そのような事故があったときにあわてたりしないように、今のうちに心の準備をしておきたいので教えてください。
回答|保険金請求書や写真等、複数の資料が必要となります。
破損・汚損補償を利用して保険金を請求する際には、事故の内容や損害状況を正確に保険会社に伝え、補償対象であることを証明するために、いくつかの書類や資料を提出する必要があります。
提出書類には共通して求められる基本的なものと、事故の内容や損害の種類に応じて追加提出が求められるものがあります。以下、詳しく整理してご説明します。
・基本的に必要となる書類
・保険金請求書
これは保険会社による例外のない必須書類です。事故発生後、保険会社に連絡すると、所定の「保険金請求書」が送られてきます。
この書類には、以下のような情報を記入します。
・事故発生日時
・事故発生場所
・事故の発生状況・経緯(なるべく詳しく)
・損害の状況(破損・汚損の程度)
・請求者情報(契約者との関係、住所、連絡先など)
※事故状況の説明欄は、できるだけ具体的に、かつ客観的に記載することが大切です。
事故状況のわかる写真
事故直後の現場写真や、損害の様子がはっきりわかる写真が求められます。写真に収めるべきポイントは下記となります。
・損害箇所を含む全体像
・損害箇所のアップ(破損・汚損の詳細)
・周辺の環境(どういった状況で損害が生じたか推測できる構図)
※破損部分を修理した後では写真提出ができず、請求が難しくなる可能性もあります。修理前に必ず撮影しておくようにしましょう。
修理見積書または修理請求書
破損や汚損の修理にかかる費用を証明するための書類です。以下のいずれかを提出します。
・修理見積書(修理業者に作成依頼)
・修理請求書(すでに修理した場合)
ポイントとして、見積書には、損害箇所ごとの費用明細が具体的に記載されていることが望ましいです。
なお、領収書がある場合は併せて提出するよう求められることもあります。
※修理を行う前に、必ず保険会社に確認を取り、「見積書を先に提出してください」と指示される場合もありますので注意しましょう。
ケースによって必要になる追加書類
事故の内容や保険会社の判断によって、次のような書類が追加で求められる場合があります。
購入時の領収書や保証書
損害を受けた物品が高額(家電、家具など)の場合、購入日や購入価格の証明を求められることがあります。
証明書類の具体例としては下記のようなものです。
・購入時の領収書
・保証書(購入日が記載されているもの)
・購入履歴(ネット通販の場合の購入履歴画面など)
これにより、保険会社は「損害品の時価評価」を行いやすくなります。
警察への届出受理番号(必要な場合のみ)
通常の破損・汚損事故では不要ですが、事故状況によっては、警察への届出が必要になるケースがあります(例:第三者による故意の破壊行為、器物損壊など)。
その場合、下記の情報が必要となります。
・受理番号
・届出警察署名
・受付日時
第三者の証言書・現場報告書(必要な場合)
事故に第三者(来客、宅配業者など)が関わっていた場合や、事故状況が特殊な場合には、現場を見た第三者の証言書や報告書を求められることがあります。
これらは、保険会社が事故の偶発性・突発性を判断する補助資料となります。
資料の提出方法について
通常は、保険金請求書類に同封して郵送か、またはWeb(保険会社マイページ)から提出可能となっています。
最近では写真や見積書をスマホで撮影してアップロードできる簡単な手続きも増えています。
書類の提出前には不備がないかを確認し、わからないことは保険会社や代理店に事前相談しておくのがおすすめです。
ご質問に対する回答をまとめると、破損・汚損等補償を使うために必要な主な書類は、以下のものとなります。
・保険金請求書
・事故現場・損害の写真
・修理見積書または請求書(事故内容によっては購入証明書類)
・警察の受理番号
・第三者証言
事故の特徴によっては、警察の受理番号や第三者証言等は不要となるケースもありますので、保険会社へ事故報告の連絡をした際に必ず確認しましょう。
正確で具体的な資料を揃えることが、スムーズな保険金支払いにつながります。
特に事故直後の現場記録(写真撮影)は非常に重要なので、損害を修理・片付けする前に必ず記録を残す習慣を持つことが大切です。
質問:破損・汚損補償はすべての火災保険に自動で付帯されていますか?
賃貸住宅にて一人暮らししている者です。入居のタイミングで火災保険に入らされたのですが、補償内容はまったくわかっていません。
ある日、なにげなく火災保険のパンフレットを見たのですが、破損・汚損の補償が、なんて言うか、使い勝手の良い補償だなと感じました。
私の保険にもこの補償はついているのでしょうか?初期設定で自動でついているものなのでしょうか?
回答:基本的に初期設定で補償されているものではありません。
破損・汚損補償がすべての火災保険に自動的に付帯されているわけではありません。
保険会社によって、この補償は「基本契約」として標準で組み込まれているケースもあれば、オプション(特約)扱いとして別途付加する必要がある場合もあります。
そのため、火災保険に加入しているからといって、必ずしも破損・汚損の損害に対応できるとは限らない点に注意が必要です。以下、より詳しく整理して解説します。
火災保険の基本補償と破損・汚損補償の位置づけ
火災保険の基本補償は、一般的に次のような災害リスクに対応しています。
※保険会社によってリスク区分は異なります。
・火災、落雷、破裂・爆発
・風災・雪災・雹災
・水災
・盗難・建物外部からの物体の衝突
上記のリスク区分で言えば、「自然災害」や「外部要因による突発的な損害」を中心にカバーするものであり、日常生活での不注意による破損や、うっかりによる汚損は基本補償に含まれていないということになります。そのため、破損・汚損等の補償は「特約(オプション)」として契約に付加する形になります。
破損・汚損補償が自動付帯されている場合
一部の火災保険商品では、破損・汚損補償が最初からセットになっているものも存在します。
特に近年の「オールリスク型」や「総合補償型」と呼ばれる火災保険では、以下のような特徴があります。
・火災、風災、水災、盗難などに加え、破損・汚損も基本補償に組み込まれている。
・契約時に「基本セット」または「ワイドプラン」として販売されている。
・自由に補償を削ったり足したりできるカスタマイズ型でも、初期設定では破損・汚損補償が付帯されているケースがある。
ただし、こうした自動付帯型の商品でも、免責金額(自己負担額)が高めに設定されていたり、高額家財は別途条件があることもあるため、補償内容の細部まで確認が必要です。
破損・汚損等の補償を付帯しないとカバーされない場合
従来型の火災保険や、シンプル型の商品では、破損・汚損は標準では付いておらず、補償を希望する者にのみ「破損・汚損特約」「不測かつ突発的事故補償特約」などを追加する 仕組みになっています。この場合、特約を付け忘れると、いざというときに保険金請求できないので要注意です。
特約として追加すると、当然、保険料も若干上がりますが、「日常生活の不測の損害リスク」をカバーできるメリットは非常に大きいです。
(特に小さなお子さんやペットがいる家庭では、破損・汚損等の補償は重視されています。)
なぜ破損・汚損等の補償は自動付帯でない場合が多いのか?
破損・汚損は、発生頻度が高く、保険会社側にとっては、保険金支払いリスクが大きい補償内容です。たとえば、
・誤ってテレビを倒してしまった
・家具を動かして壁を傷つけた
・飲み物をこぼして床材を汚してしまった
などといった事例は、どれも日常生活で考えると比較的起こりやすいケースです。そのため、すべての契約者に自動で付帯すると、保険会社としてはリスクが高くなってしまうという問題が生じます。このような事情から、多くの保険会社では「必要な人が追加で選ぶ仕組み」として提供しているのです。
自分の火災保険に破損・汚損補償が付いているか確認する方法
主に下記の方法で確認することができます。
・保険証券(保険契約書)に「破損・汚損特約」や「不測かつ突発的事故補償」と記載されているかをチェック
・契約時に渡された「重要事項説明書」の補償内容一覧で確認
・契約した保険会社や代理店に直接問い合わせる
なお、保険会社や代理店に確認して付帯されていなかったとわかった場合、保険期間中でも追加で付帯できるケースもあります。補償を希望する場合はぜひ相談してみましょう。
ここまで解説してきたように、破損・汚損等の補償は、すべての火災保険に自動で付帯されているわけではありません。オプション特約として選択する必要があったり、一方で一部のオールリスク型商品では、基本補償に組み込まれているということもあります。迷ったら必ず保険会社や代理店に確認するようにしましょう。そして、必要に応じて特約の追加やプラン変更を検討することで、リスク対策を万全なものにしましょう。
まとめ
今回の記事では、火災保険の補償のひとつ「破損、汚損等」について解説しました。
本記事を読んでいただいて、とても幅広い補償内容であることをわかっていただけたと思います。
幅広く手厚い補償であるがゆえに、補償の付保には免責金額の設定が必須となっています。
少し前までの火災保険では「破損、汚損等」も免責金額の設定なしの取り扱いをしていた保険会社はあったのです。
また、補償を手厚くすれば、当然保険料も高くなります。
ご自身の置かれた環境や保険に対する考え方を加味して、付保の有無をじっくり検討してください。